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補足意見研究<嫡出子差別違憲判決>

続いて、千葉勝美裁判官の補足意見を読んでいく。


裁判官千葉勝美の補足意見

 私は,法廷意見における本件の違憲判断の遡及効に係る判示と違憲審査権との関係について,若干の所見を補足しておきたい。

やはりテーマは、違憲判断の効力について

 法廷意見は,本件規定につき,遅くとも本件の相続が発生した当時において違憲であり,それ以降は無効であるとしたが,本決定の違憲判断の先例としての事実上の拘束性の点については,法的安定性を害することのないよう,既に解決した形となっているものには及ばないとして,その効果の及ぶ範囲を一定程度に制限する判示(以下「本件遡及効の判示」という。)をしている。

本件遡及効の判示、というネーミング。

 この判示については,我が国の最高裁判所による違憲審査権の行使が,いわゆる付随的審査制を採用し,違憲判断の効力については個別的効力説とするのが一般的な理解である以上,本件の違憲判断についての遡及効の有無,範囲等を,それが先例としての事実上の拘束性という形であったとしても,対象となる事件の処理とは離れて,他の同種事件の今後の処理の在り方に関わるものとしてあらかじめ示すことになる点で異例ともいえるものである。しかし,これは,法令を違憲無効とすることは通常はそれを前提に築き上げられてきた多くの法律関係等を覆滅させる危険を生じさせるため,そのような法的安定性を大きく阻害する事態を避けるための措置であって,この点の配慮を要する事件において,最高裁判所が法令を違憲無効と判断する際には,基本的には常に必要不可欠な説示というべきものである。その意味で,本件遡及効の判示は,いわゆる傍論(obiter dictum)ではなく,判旨(ratio decidendi)として扱うべきものである。

本件違憲判決がどれだけの英断であったか。かねてから、違憲性自体は指摘され続けていた。平成7年に合憲判決となったものの、批判もあった。合憲判断に逃げた本音は、この、違憲判断の及ぼす影響力が障壁だったのかもしれない。

 次に,違憲無効とされた法令について立法により廃止措置を行う際には,廃止を定める改正法の施行時期や経過措置について,法的安定性を覆すことの弊害等を考慮して,改正法の附則の規定によって必要な手当を行うことが想定されるところであるが,本件遡及効の判示は,この作用(立法による改正法の附則による手当)と酷似しており,司法作用として可能かどうか,あるいは適当かどうかが問題とされるおそれがないわけではない。

司法作用の限界地にたどりつく。

 憲法が最高裁判所に付与した違憲審査権は,法令をも対象にするため,それが違憲無効との判断がされると,個別的効力説を前提にしたとしても,先例としての事実上の拘束性が広く及ぶことになるため,そのままでは法的安定性を損なう事態が生ずることは当然に予想されるところである。そのことから考えると,このような事態を避けるため,違憲判断の遡及効の有無,時期,範囲等を一定程度制限するという権能,すなわち,立法が改正法の附則でその施行時期等を定めるのに類した作用も,違憲審査権の制度の一部として当初から予定されているはずであり,本件遡及効の判示は,最高裁判所の違憲審査権の行使に性質上内在する,あるいはこれに付随する権能ないし制度を支える原理,作用の一部であって,憲法は,これを違憲審査権行使の司法作用としてあらかじめ承認しているものと考えるべきである。 

かつて、差別を受け、劣遇を強いられる人がいた。

まるで自分の人生は、人の半分の価値しかないような気持にさせる。法律が明確に差別をしているのだ。その思いを想像すると、涙が止まらない。

その人にとって、差別されない、一人として尊重される個人として扱われることこそが意味があり、正直、”れいしおでしでんでぃ”なんて、どうでもいいのかもしれない。

しかし、差別というのは本当に恐ろしく残酷である。差別してきた歴史、差別の上に立つ社会を乗り越えるには、一筋縄ではいかない。

いろいろな批判を想定しての補足意見なのだろう。

差別に勝つ。そのための強い強い想いを込めて、分厚い壁に風穴を開ける一突きが貫かれた。小さな穴が、壁そのものを壊していく。いや、しかし、まだ崩れ切っていない。一掃しなければならない。


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