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法制審議会家族法制部会資料26を読む2

期日のあとは図書館で勉強・・・と思ったら、沼る

家族法に関して最高裁で動きがあったらしい

資料を読んでいこう


(補足説明)
1 「親権」の概念の整理
⑴ この部会のこれまでの議論では、父母の離婚後の親権に関する規律を検討するに当たっては、議論の対象となる「親権」の概念を整理する必要があ るとの指摘があり、中間試案の取りまとめまでの議論の過程では、現行民法 の解釈の整理がされた。
⑵ 一般に、親権は、身上監護権(子の監護及び教育をする権利義務)と財産管理権(子の財産を管理し、子の財産上の法律行為について子を代理するなどの権利義務)からなると解されている。 そして、このうちの身上監護権については、民法第820条に「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」 旨の総則的な規定が設けられ、この規定による監護及び教育をするに当たっては、「子の人格を尊重するとともに、子の年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。」ことが定められ(同法第821条)、その上で、居所指定権(同法第822条)や職業許可権(同法第823条)などの 個別的な規定が設けられている。また、この身上監護権には、解釈上、第三 者に対する妨害排除請求権(第三者が子を自らの監護下に置くことで親権者による親権行使を違法に妨害している場合であって、その状態が子の自 由意思に基づくものではないようなときに、親権者が、第三者に対し、子の 引渡しを求めることができる権利)が含まれると解されている。 親権のうち財産管理権については、民法第824条が、「親権を行う者は、 子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。」旨を規定し、また、未成年者の法律行為については、同法第5条第 1項が「その法定代理人の同意を得なければならない」として親権者の同意権を規定している。 なお、財産上の行為については同法第824条において親権者の包括的 な法定代理権が規定されている一方で、同条の法定代理権は身分行為には及ばないと解されており、子についてのある身分行為を親権者が法定代理することができるかどうかは、当該身分行為に係る規定の解釈適用によるものと解される(例えば、養子縁組の代諾に関する同法第797条第1項 等)。
⑶ この資料においては、「親権」の概念については、差し当たり、上記のとおりの現行民法の一般的な理解を前提としている。

親権概念変えずに検討?

2 親権の「共同行使」の意義の整理
⑴ 離婚後の父母双方が親権を有する場合における親権行使の在り方につい て検討するに当たっては、婚姻中の親権行使に関する民法第818条の規 律について整理することが有益であると考えられる。
⑵ 昭和22年の改正前の民法では、父母が婚姻関係にあるかどうかにかかわらず、子の親権は父母の一方のみが行うこととされていたが、その後、こ の規定は、昭和22年の民法改正により改められ、民法第818条において、 未成年の子が父母の親権に服することと(同条第1項)、親権は、父母が婚姻中は、父母が「共同して」行うことが原則となること(同条第3項)が定められるに至った。その背景には、親権行使を父母の一方のみの判断に委ねるよりも、父母双方がその責任を負い、双方の関与の下で意思決定がされるものとした方が、子の利益の観点から望ましいことが多いとの価値判断があったとされている。 民法第818条第3項のいう「共同して」とは、身上監護や財産管理等の親権の行使が、父母の共同の意思で決定されることをいうと解されている。 そして、父母の共同の意思での決定には、父母の共同の名義によって親権の行使をした場合のみならず、例えば、父母の一方が、他方の同意を得て、単独名義で親権の行使をする場合も含まれるとされている。後者の場合の他方親権者の同意は、黙示的なものでもよいとされている。
⑶ 民法第818条第3項ただし書は、「父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う」として、親権の共同行使の原則の例外としての単独行使を定めている。 「父母の一方が親権を行うことができないとき」には、親権を行うことが法律上できない場合と事実上できない場合の両者が含まれる。親権を行うことが法律上できない場合としては、例えば、親権者の一方が親権停止・喪失の審判を受けたときや親権を辞任したときなどがある。親権を行うことが事実上できない場合としては、一般に、行方不明、重病、心神喪失、受刑などがあるとの説明がされている(注1)。
⑷ ところで、民法第818条第3項は、「共同して」行使すべき「親権」の具体的な範囲について、特段の規定を設けておらず、実際に、婚姻中の父母による親権行使は、通常、子の進学や医療等の重要な事項に関する決定をする場面に限らず、日常の些細な事項についても、父母が日常のコミュニケーションの中で相談しあうことも少なくないと思われる。そして、父母双方がその責任を負い、双方の関与の下で意思決定がされるものとした方が、子の利益の観点から望ましいことが多いとの民法の価値判断を重視すれば、身 上監護や財産管理に関する様々な事項について、父母が円満に協議し、その 熟慮の下で子の養育が行われていくことは、子の利益に資すると思われる。 しかし、このことは、日常の些細な事項を含むあらゆる事項について父母 が共同の意思で決定しなければならないことまでを民法が要求しているこ とを意味するものではないと解される。昭和22年の民法改正の直後から、 同条の一般的な解釈として、日常の監護教育のような行為については、父又 は母がそれぞれ(単独で)行うことができるとされている(注2)。 また、部会のこれまでの議論においては、「緊急の事項」についても、民法には明文の規定はないものの、父母の一方が、他方の同意を得なくても、 一定の裁量に基づいて行うことができるものと解すべきではないかとの指摘があった。
⑸ 以上のように、民法においては、上記⑶及び⑷のような例外的な場面においては各親権者が単独で親権を行うことができると解される一方で、それ以外の親権の行使については、父母双方が共同の意思に基づいて決定する ことが想定されている(注3)。 そして、昭和22年の改正の際の議論の過程では、父母双方が共同で(共同の意思に基づいて)親権を行使すべき事項(例えば、子が重要な財産を有する場合にそれを売却するかどうかなど)について、父母の意見が一致しない場面もあり得るのではないかとの問題提起がされた上で、このような場面に対応するための規律を設けるべきかどうかが議論されたようであるが、 明文の規定は設けられなかった。当時の議論の際には、財産管理等の場面を念頭に、父母の意見が一致しない場合には、多くの場合には子の利益から考えて財産の処分を許さないとする方がよいであろうとの説明もされている。 そのため、父母双方が共同で親権を行使すべき事項について父母の意見が一致しない事項については、基本的には、親権を行使することができないものと思われる。 しかし、父母の意見不一致により親権の行使がされないことで、かえって子の利益に反する場合も想定され得る。このような場合に対応する手段と して、例えば、親権者の一方は、他の親権者による親権行使が不適当であることにより子の利益を害するとして、家庭裁判所に対し、他の親権者の親権の停止の審判を求め(民法第834条の2)、その申立てと同時に、審判前の保全処分の申立て(家事事件手続法第174条)をして、他方の親権者の職務を停止し、又はその職務代行者の選任を求めることが考えられる。また、 監護に関する事項(例えば、子の居所の指定変更に関する事項)については、 実務上、民法第766条の類推適用により、家庭裁判所が、父母の婚姻中においても、子の監護をすべき者その他子の監護について必要な事項の定めをする場合もあるとされている。 このほか、意見不一致の場合の個別的な事項についての解決方法については、夫婦関係調整調停等の手続の申立てをすることができるとする見解もあり、現にそのような実務運用がされている例もあるとの指摘もある。
⑹ 民法第825条は、婚姻中の父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子を代理して法律行為をしたとき等には、当該行為が他の一方の意思に反するものであっても、そのためにその効力を妨げられないものと定め、ただし、相手方が悪意であった(当該行為が当該他 の一方の同意がないことを知っていた)ときはこの限りではない(適法な追 認がない限り無効となる)ものと定める。同条は、親権の共同行使の原則と 取引の相手方となる第三者の保護との調整を図る趣旨の規定であるとされ ている。 そして、民法第825条の規定により、親権者の一方が他の一方の意思に反して行った法律行為が有効とされるためには、当該行為が「共同の名義」で行ったものである必要がある。親権者の一方が単独の名義で行った行為については、無効であると解されている(ただし、他方の親権者の追認又は表見代理等により取引の相手方が保護される場合もあり得る。)。
(注1)父母の婚姻関係が事実上破綻し、別居している状態が「父母の一方が親権を行うことができないとき」に該当するかどうかについては、婚姻関係の破綻や別居の事実のみによって判断するのではなく、子の利益の観点からその必要性や緊急性などを考慮し、 事案に即して判断すべきであるとの考え方があるとされている。
(注2)「父母の共同親権は、子を哺育・監護し、教育するという事実上のことに関して は、・・・両者の意見が一致しなくとも、一方が他方の意思を無視してやっても、特に法律上の問題とすべきものは少ないであろう。もっとも、父が、事実上、不当に親権を行使するときに、母が共同親権に基いて、その差止めを訴求することも、勿論可能であろうが、実際上そうした例は、多く生じないと思う。」(我妻榮『改正親族・相続法解説』 113頁(昭和24年)) 「父母は婚姻中共同親権者であるから、子の監護教育についても父母は共同でしなければならぬ。しかしそれは何から何まで父母が共同でするということではなく、事実的な監護教育は父又は母がそれぞれ自己の一存で行って差し支えない。ただ、親権者の一 方の独断専行殊にその不当な監護教育に対しては、他方は異議を述べてこれを差し止めることができ、一方の監護教育の怠慢に対しては他方にこれに協力を求めることが できる。」(中川善之助『註釋親族法』(下)43頁(昭和27年))
(注3)親権者以外の者による親権の行使については、次のような規定がある。
○ 民法 (未成年被後見人の身上の監護に関する権利義務)
第857条
未成年後見人は、第八百二十条から第八百二十三条までに規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する。ただし、親権を行う者が定め た教育の方法及び居所を変更し、営業を許可し、その許可を取り消し、又はこれを制限するには、未成年後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。 (未成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)
第857条の2
未成年後見人が数人あるときは、共同してその権限を行使する。
2 未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、その一部の者について、 財産に関する権限のみを行使すべきことを定めることができる。
3 未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、財産に関する権限につ いて、各未成年後見人が単独で又は数人の未成年後見人が事務を分掌して、その権 限を行使すべきことを定めることができる。
4 家庭裁判所は、職権で、前二項の規定による定めを取り消すことができる。
5 未成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば 足りる。
○ 児童福祉法 第33条の2
児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者又は未成年後見人のないものに対し、親権を行う者又は未成年後見人があるに至るまでの間、 親権を行う。ただし、民法第七百九十七条の規定による縁組の承諾をするには、内閣府令の定めるところにより、都道府県知事の許可を得なければならない。
② 児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護及び教育に関し、その児童の福祉のため必要な措置をとることができる。この場合において、児童相談所長は、児童の人格を尊重するととも に、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の児童の 心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。
③ 前項の児童の親権を行う者又は未成年後見人は、同項の規定による措置を不当に妨げてはならない。 ④ 第二項の規定による措置は、児童の生命又は身体の安全を確保するため緊急の必要があると認めるときは、その親権を行う者又は未成年後見人の意に反しても、これをとることができる。
第47条
児童福祉施設の長は、入所中の児童で親権を行う者又は未成年後見人のな いものに対し、親権を行う者又は未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行う。 ただし、民法第七百九十七条の規定による縁組の承諾をするには、内閣府令の定めるところにより、都道府県知事の許可を得なければならない。
② 児童相談所長は、小規模住居型児童養育事業を行う者又は里親に委託中の児童で親権を行う者又は未成年後見人のないものに対し、親権を行う者又は未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行う。ただし、民法第七百九十七条の規定による縁組の承諾をするには、内閣府令の定めるところにより、都道府県知事の許可を得なければならない。
③ 児童福祉施設の長、その住居において養育を行う第六条の三第八項に規定する内閣府令で定める者又は里親(以下この項において「施設長等」という。)は、入所中又は受託中の児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護及び教育に関し、その児童の福祉のため必要な措置をとることができる。この場合において、施設長等は、児童の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。
④ 前項の児童の親権を行う者又は未成年後見人は、同項の規定による措置を不当に妨げてはならない。
⑤ 第三項の規定による措置は、児童の生命又は身体の安全を確保するため緊急の必要があると認めるときは、その親権を行う者又は未成年後見人の意に反しても、これをとることができる。この場合において、児童福祉施設の長、小規模住居型児童養育事業を行う者又は里親は、速やかに、そのとつた措置について、当該児童に係る通所給付決定若しくは入所給付決定、第二十一条の六、第二十四条第五項若しくは第六項若しくは第二十七条第一項第三号の措置、助産の実施若しくは母子保護の実施又は当該児童に係る子ども・子育て支援法第二十条第四項に規定する教育・保育給付認定を行つた都道府県又は市町村の長に報告しなければならない。

共同親権国賠での議論がそのまま反映されている!


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