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法制審議会家族法制部会第8回議事録6~棚村委員・石綿幹事・杉山幹事

親の権利研究を続けている

来月の裁判に向けて

裁判所からの指示など振り返ってみたりして、ここまで、追求するんだっていう、ひょっとして・もしかして、みたいな希望を感じてしまったりする

それはそれとして、議事録を読んでいく

○大村部会長 それでは,15時を回りましたので再開をしたいと思います。
 部会資料7のうち,前回途中まで御意見を頂いていた第1,第2につきましては,先ほどまで引き続き御議論を頂いてきたところでございます。あと残っておりますのが,13ページ以下の「第3 父母の離婚に関連する諸問題」という部分になりますけれども,この部分について意見交換をお願いしたいと思います。御発言がございましたら,自由に挙手をお願いいたします。
 いかがでございましょうか。

○棚村委員 

 早稲田大学の棚村です。父母の別居に伴う子どもの養育についてですけれども,そこからでもよろしいですか。嫡出でない子の養育についても,前にも少し発言させていただいたのですが,788条のところで準用するみたいな規定になっているので,少し分かりにくいので,規定の位置とか,規定の仕方についても整理をされた方がいいかなという感じを持っております。
 それから,(2)のところで,別居のところですけれども,私が,2010年で少し古くなってはいますが,面会交流に関する制度などの調査研究をしたとき,家庭裁判所の調査官のヒアリングとか,親に対するアンケートの調査もさせていただいたときに,別居中の御夫婦の紛争というのが大体7割ぐらいあって,紛争が深刻化していたり,解決が困難な事例が多くみられました。どちらかというと離婚後の紛争というのは,離婚直後は結構紛争が激しかったりするのですけれども,3年とか5年ぐらいたつと少し落ち着いていくという傾向が何となく見て取れました。そうすると,別居中の父母の間の紛争というのは深刻でエスカレートし易く,かつ,ここの解決みたいなものをかなり重点を置いてやってあげないと当事者にとっては厳しいように思われます。これは緊急的な保全処分なんかもそうだと思いますけれども,別居という事実上婚姻関係が続いていながら,実は離婚までの暫定的浮動的な状態での規律がないということについては,かなり法的にも社会的にも問題が大きく出ているのではないかと思います。
  離婚の規定の類推適用とか準用というのもいいのですけれども,やはりきちんと別居ということに対応して,いつから別居を開始したとするのか,その手続の在り方とか,それから,別居中の夫婦の法律関係・権利義務関係,夫婦もそうですし,子どもをめぐる問題,たとえば,親権や監護をめぐる事項についての規定の明確化というのですか,手続的にも実体的にも明確にしていく必要があると思います。事務当局で示していただいた課題の中でも出てきていますけれども,やはり規定それ自体が,養育費についても面会交流についても,きちんと見直されるべきなのですけれども,特にやはり別居中の御夫婦,つまり共同親権が続いてはいるのだけれども,それについて夫婦としてなかなか話合いがうまく行っていないときに,どういうような規律を設けていくかということについて,やはり法的にもきちんと手当てをした方がいいのだろうという感じを持っています。
 例えば,親権者とか,先ほども出ました監護者とか,子どもの引渡しとかという事件もかなり増えていますので,そのときの決定の際の考慮事項とか基準についても,御提案もされていますけれども,特にフレンドリーペアレントについてはいろいろ御意見とか御批判もあるところだと思うのですけれども,一つのファクターとして考慮するということはあり得るのかなと思っています。ただし,余りこれを加重に評価しすぎた場合には,やはりいろいろ問題が出てくると思いますけれども,先ほどの子の年齢とか子どもの意向とか心情とか,それから監護養育の能力とか実績とか,いろいろなものを総合的に考慮してというときの考慮事項については,ある程度明確にしていくということは必要だと思います。特に,別居中の子どもの養育に関する規定については,きちんと規律を明確にし,どういう手続を置いて迅速に進めることができるのかということでは,法制度をきちんと整備された方がいいかなと思っています。

○大村部会長 ありがとうございます。資料の中には,嫡出でない子に関する問題と,父母の別居に伴う問題とがございますけれども,嫡出でない子についての規定の配置等に関する御発言もございましたが,主たる御発言としては,別居中の父母の紛争が割合としても多いし,重要度としても大きいので,規定の明確化を図る,考慮要素や基準などというのを示した方がよいのではないかという趣旨の御発言を頂いたと思います。どうもありがとうございました。
 そのほか,いかがでございましょうか。

○石綿幹事

 石綿でございます。棚村先生に重ねて発言させていただきます。資料の第3の2(2)に関連する,父母の別居に伴う子の養育に関して発言させてください。
   第一に,離婚と異なり,別居というのはどのように定義をするのかということが難しい概念かと思います。しかしながら,単身赴任のような場合はここでいう別居には含まれないとは思われますが,父母が従前のように共同して意思決定をできないような,離婚を前提とした別居のような場合には,やはり何らかの規律を設ける必要があるのではないかと考えます。そのような状況の別居というのは,棚村先生が先ほどおっしゃったように,父母間の紛争性が高い可能性も多いと思いますし,それに伴って,特に別居親との交流などが途絶えるといったようなことで,子どもにとって大きな影響があることもあるかと思いますので,子どものために両親が最低限のことについては別居時に定めるということを求めていく必要があるのではないかと思います。
 次は,2点目ですが,これも棚村先生が少し言及なさっていましたが,別居時というのは離婚の場合とは異なり,共同親権が続いている状態なので,恐らく原則としては,両親が共同して子どもに関して様々なことを決定していくことが求められる場面なのではないかと思います。ただ,別居に至っている夫婦というのは,その決定が難しい状況にあると考えられる可能性が高いことから,子どものことについて誰がどのように決定をしていくのかということについて,別居に至った場合どういうふうに決めていくかということについても,規律を置くなどの方向性を考えた方がよいのではないかと思います。
 また,3点目ですが,監護者の指定の基準というのもブラックボックス化しているといったような批判もあるところかと思いますので,可能であれば,どのように子どもの利益を判断しているかということを明確化していくということがあるのではないかと思います。
 4点目は,このように別居ということに少し注目をして,もし民事法の方の分野で,別居の際に何らかの対応をするようにという規律を設けていく場合に,児童扶養手当の支給など社会保障との連動も図ることができないかということを,ここの部会の検討対象ではないかもしれませんが,検討できればよいのかなと思います。児童扶養手当が早く支給されるように離婚を急ぐ家庭もあるというようなことを聞いたこともございますので,そのような社会保障との関連も,機会があれば検討ができればと思います。

○大村部会長 ありがとうございます。基本的には棚村委員と同じ方向でという御発言がございましたが,4点御指摘を頂きました。別居時に父母が子どものために最低限のことを決める必要があるだろう。また,共同親権ということになるので,共同で決めるのが原則であるけれども,しかし,それができない場合の対応が必要である。3番目に,監護者を決める基準について,やはりその要素を明確化した方がよい。そして,4番目に,社会保障との連動ということも考慮に入ってくるのではないか。こうした御指摘をいただきました。別居時にというお話がありましたけれども,先ほど棚村委員の方からは,どのような形で別居するのかといった御指摘がありました。どこから別居で,どうすればいいのかといったことについても,何か考える必要があるのではないかという御趣旨がお二人の発言には含まれていたのかと思って,伺いました。
 そのほか,いかがでございましょうか。

○杉山幹事 

 幹事の杉山です。私も前のお二人の委員の見解とほぼ同じになるのですけれども,17ページの(2)の父母の別居に伴う子の養育に関する課題のうちの⑤の方について意見などを述べさせていただきます。特に,別居に際して監護者指定,面会交流等の子の監護に関する問題が出てきたときに,特別な裁判手続,これは保全処分に限らず,迅速に判断する手続を設けることを検討した方がいいのではないかと思っております。それとの関係で,19ページの(注4)のところですが,暫定的な監護者を定める以外に,離婚を前提として,子の監護に関する保全処分の在り方について制度を検討することも,意見としてあると書かれていますけれども,どのような制度が望ましいかを考えるに当たっては,子の監護に関する保全処分の実態といいますか,どのように発令されているのかが分かった上でないと,在るべき姿については検討できないと思いますので,もしそのような実情が分かるのであれば,教えていただければと思います。
 一緒に議論すべきかどうか分かりませんけれども,16ページの(1)の③で養育費の自動算定の話がございまして,これは,離婚した後にこのような自動算定をする制度を作るかどうかにも依ると思います。別居をしていて養育費が払われていないときの救済方法を考える必要性はあると思いますけれども,これも離婚後の養育費の場合と同じで,債務名義まで作るということになりますと,その後の争う手続をどうしたらいいのかとか,制度を作るとして最低限度の額しか保障できないのかという問題もありますし,別居の始期をどう判断したらいいのかという問題なども出てきますので,離婚後の話よりなお難しい課題があるのではないかという気がしています。

  

○大村部会長 ありがとうございます。17ページの⑤に関して,迅速な手続を作るという方向で検討をするというのがよろしいのではないか,また,それと関連しますけれども,19ページの(注4)に出てくる保全処分については,実態を知るということがまず最初なので,何かあれば情報が欲しいということ,最後が16ページの③に関わる話ですけれども,ここでいわれていることは離婚後の規律と共通の難しさを持つけれども,別居の場合にはその難しさはより高い,より大きくなるという御指摘を頂いたかと思います。どうもありがとうございました。


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