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法制審議会家族法制部会第23回会議議事録読む3

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引き続きまして、本日の議題で、その他の意見交換というところになりますけれども、池田委員の方から資料2点を御提供いただいておりますので、まず、池田委員からこれについて御説明を頂きたいと思います。よろしいですか。

池田委員の資料

○池田委員

 池田でございます。お時間頂きありがとうございます。お配りいただいておりますのは、国連子どもの権利委員会が出しています二つの一般的意見です。一般的意見といいますのは、国連子どもの権利委員会が子どもの権利条約の重要項目について解説をした文書でございますが、今回は子どもの意見表明権に関する一般的意見12号と、子どもの最善の利益に関する一般的意見14号を御紹介いたします。
 まず、子どもの意見表明権の12号の方を御覧いただけますでしょうか。ここでは、条約12条の条文解釈や具体的適用の在り方というものが示されています。ハイライトを引いておいたのですが、まず4ページを御覧いただきますと、条約12条は子どもの意見表明権と、その示された意見を当該子どもの年齢及び成熟度に従って正当に重視される、ここは政府訳は、相応に考慮されるとなっていますけれども、そういった二次的権利も定めているとしています。また、意見表明権は権利であって義務ではなく、子どもが意見表明するかどうかの選択ができることも確認をしています。
 5ページでは、第12条の権利主体に何らの年齢的制限がないことを確認しています。つまり、乳幼児も含まれるということですね。それから、6ページでは、自由に自己の意見を表明するというところで、意見表明に当たって圧力を受けないということを確認しています。それから、その下にいきまして、意見表明に当たっては正確な情報が子どもに提供される必要があるということも確認をしています。
 7ページに移りまして、表明された意見を正当に重視するということは、子どもの意見に耳を傾けるだけでは不十分であって、子どもに自己の意見をまとめる力があるときは、その意見が真剣に考慮しなければならないということを確認しています。
 少し飛びまして、11ページですが、これは離婚、別居における子どもの意見表明ということについてですが、そういった場面における子どもの監護、面会についての裁判所の決定においては、子どもの最善の利益が至高の考慮事項となるべきことを示しています。
 14ページから15ページにかけましては、子どもの最善の利益と意見表明権の関係について解説をしています。15ページのパラグラフ74を見ますと、子どもの最善の利益について定めた条約3条と条約12条との関係ですが、これには緊張関係はなく、補完的役割を果たしていること、それから、12条の要素が尊重されなければ3条の正しい適用はあり得ないこと、最善の利益の決定において、子どもの必要不可欠な役割を促進することは、すなわち意見表明権の機能を強化することであるとしています。難しい表現ですが、子どもの最善の利益というのは子どもの意見表明の先に初めて形作られるということを述べているものと考えています。
 17ページですが、ここでは親等の子どもに対する適当な指導の責任について定めた条約5条との関係について書かれています。親等は、子どもが成長するにつれて、子どもへの指示や指導を子ども自身の気付きを促すための注意喚起及びその他の形態の助言に、やがては対等な立場の意見交換に変えていかなければならないこと、そして、このような変換は子どもの意見表明を奨励する中で進行していくということが記されています。
 18ページに移りまして、ここでは家庭における子どもの意見表明権の実施について記しています。パラグラフ90では、子どもが自由に意見表明でき、それを真剣に受け止めてもらえる家庭像を示し、それが個人の発達の促進、家族関係の強化、子どもの社会化の支援に役立つこと、家庭内の暴力の予防になることを示しています。
 次に、子どもの最善の利益の方の第14号の方を御覧ください。第3条は、子どもに関わるあらゆる場面で子どもの最善の利益が第一次的に考慮されなければならないという規定をしている条項ですけれども、9ページのパラグラフ37を御覧いただきますと、この第一次的に考慮されるという文言ですが、これは、子どもの最善の利益は他の全ての考慮事項と同列には考えられないことを示していると解説しています。
 12ページ以下ですけれども、ここでは子どもの最善の利益を評価する際に考慮されるべき要素を列挙していまして、最初に子どもの意見が挙げられているところです。それから、13ページでは、その考慮として、家庭環境の保全及び関係の維持というものも挙げられています。パラグラフ60のところを見ますと、親の一方又は双方から分離されている子どもは、子どもの最善の利益に反しない限り、定期的に親双方との個人的関係及び直接の接触を保つ権利を有するという条約9条の規定を引用しています。
 14ページに移りまして、パラグラフ67では、国連子どもの権利委員会としては、親責任が共有されることが一般的に子どもの最善の利益にのっとったものであるという見解に立つことを示しています。ただし、親責任に関する決定におきましては、何が特定の子どもにとって最善の利益であるかが唯一の基準とされるべきことを示しています。ここは少し分かりにくい表現ですけれども、例えば父母間の公平などといった基準は適用されないということかと理解しています。また、法律により親責任が一方又は双方の親に自動的に委ねられるのであれば、これは子どもの最善の利益に反しているという見解を示しています。パラグラフ70では、子どもの親以外の親族や友人、学校などを含めた幅広い環境が保全されるべきことを示しています。
 最後に、18ページに飛びますが、ここでは子どもと大人の時間に対する知覚の仕方の違いというのを指摘しておりまして、この違いを考えますと、子どもに関する決定が遅滞したり長期化することは子どもの発達に有害な影響を及ぼすとして、子どもに関わる手続は優先的処理の対象とされ、可能な限り短時間で完了することが望ましいとしています。
 以上、簡単ですが御紹介いたしました。ありがとうございました。

○大村部会長 ありがとうございました。池田委員の方から資料を御提供いただきましたが、それについて補足の説明も頂きました。
 ただいまの池田委員からの御説明につきまして、皆さんの方から何か御質問あるいは御意見等がありましたら頂きたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

子どもの権利について

○水野委員 

 水野でございます。こういう国際的な条約につきまして、私はもちろん存在意義を否定する立場ではありません。1985年の女子差別撤廃条約で日本の女性の地位がどれだけ改善されたかを知る世代の一人ですので、国際的な人権条約の力も意義も、身をもって知っております。ただ、これらの条約に対する批判もそれぞれの国にありまして、決して無批判に受け入れられているわけではないことはお伝えする必要があるかと思います。
 殊に意思決定、意見表明権の部分につきましては、私が多少勉強しておりますフランスでは、アングロサクソン流の議論だと、自己決定万能だという批判が強く行われています。特に、先ほど、精神病離婚の改正のところで触れられました障害者権利条約につきましては、昨年9月に日本に対する勧告でも、もう後見制度は廃止して、支援付きの意思決定制度にすることという勧告をされているのですけれども、同様の勧告が日本のみならず各国に出されています。私はフランスしかフォローしておりませんけれども、フランスではその勧告に対して激しい批判が起こっていて、判事たちがそろって批判声明を出していますし、学説も猛反対しております。差別との闘いの名の下に保護の仕組みを奪うものであって、結局は弱者の保護に逆行してしまうという批判だとか、あるいは、この勧告はもうドグマでイデオロギーだというような批判が行われています。
 そして、児童の権利条約の意見表明権の部分につきましても、フランスでは非常に批判が強くて、殊に子どもの意見表明権が子どもの福祉に反する点の代表として、離婚事件に適用して子どもに両親のどちらかを選ばせることについては、激しい批判がございます。私も論文で引用したことがありますけれども、これはもう残虐なソロモンの裁きだとか、あるいは恐ろしい大衆迎合の欺まん的な両親の競りだなどという激しい言葉で批判されています。
 子どもの状況を詳しく調査することはもちろん必要ですし、子どもの福祉が最大、最善の法益だということは誰も否定しないのですけれども、ここで子どもの意見を聴くことは非常に慎重にやらなくてはならなくて、児童精神科医のようなプロフェッショナルが慎重に行わなければならない手続なのだろうと思います。ただ、日本でそういう手続ができる体制があるかといいますと、これはもう残念ながらそういう体制にないのは皆さん御存じのとおりです。もしこの意見表明権を条文に書いてしまいますと、非常に機械的に裁判所なり調査官が聴いてしまう、残虐な問いを発してしまい、お父さんとお母さんのどちらがいいかというようなことを聴いてしまって、子どもを深く傷付けることになりかねないという危惧がございます。ですから、子の意見表明権の問題を離婚後の両親の問題に適用することについては、私は非常に慎重であってほしいと思っております。
 以上でございます。ありがとうございました。
○大村部会長 ありがとうございます。水野委員からは、資料として出ている文書についての受け止め方と、これからの審議における留意点などについての御指摘を頂いたと受け止めました。
 その他の委員、幹事、何か御発言はありますでしょうか。

子どもに親を選ばせないのが大事よね

○原田委員

 弁護士の原田です。先ほど御紹介いただきました、意見を聴かれる子どもの権利のところですから12条ですかね、このパラグラフ93のところで、迅速に判断する必要があるということと、もう一つ、成長発達の観点から定期的に再審査されなければならないというところがありますけれども、こういうものを担保するための何か制度を持っているような例があれば、教えていただきたいと思うのですけれども。

○池田委員 今の御指摘は、14号の方の18ページのパラグラフ93だと思いますが、時間とともに変わっていくということで、再検討ということですけれども、私は他国の制度は存じておりません。申し訳ありません。日本においては、例えば子の監護に関する処分等について、再申立てが認められているというような位置付けになるのではないかと考えています。
 それから、先ほどの水野委員の御指摘について、私から申し上げてよろしいでしょうか。
 水野委員がおっしゃった、子どもの意見を聴くということについて、特に両親の離婚の場面においては非常に慎重に取り扱うべきだという御指摘は、正にそのとおりだと思いますし、それから、子どもにどちらかの親を選ばせるということが非常に酷だということは、これはもう異論のないところでして、日本の今の裁判実務においても基本的にはそういう問い掛けはしていないと認識をしています。
 それから、自己決定万能論に対する批判があるという、特にフランスにおいてですね、という御指摘がございましたが、子どもの権利条約においては、子どもは自己決定ができるということを前面に押し出しているわけではありませんで、子どもに関する決定は、大人が責任を持ってその最善の利益に資する結論を導かなければいけないという前提の下に、そうであるがゆえに、その決定に子どもが意見表明を通じて参加していけると、そういう構造になっておりますので、必ずしも子どもの権利条約において自己決定万能論というものに立っているということではないのではないかと認識しております。
○大村部会長 ありがとうございます。
 そのほかに何か御発言はありますでしょうか。

子どもの権利アプローチって果たしてねぇ


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弁護士古賀礼子
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