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法制審議会家族法制部会第35回会議議事録読む6~沖野委員・久保野幹事・棚村委員

あえてnoteでの発信を控える週末を過ごしていたけど濃厚であった

土曜日のシンポジウムもよかったし

仕事も立て込んだけど胸いっぱい

共同親権になるのだけど、厳しい眼差しももっている

監護の分掌協議を実務でも開拓していこう

同志の先生方との連携が鍵

心は一致

議事録読み再開します

○沖野委員 

ありがとうございます。沖野でございます。私も、第3の2の法定養育費について申し上げたいと思います。
 一つは、全部又は一部という点なのでございますけれども、前回だったと思いますけれども、畑委員から、このただし書と、それから家庭裁判所による減免との関係について整理する必要があるという御指摘があったかと思います。それで、元々は家庭裁判所の判断によって、全部、一部の免除ということができるということだけれども、それを経ずしても、およそこのような事情があるときは全部を拒むということができるという形だったと思います。それに対して、一部を入れることになりますと、両者の関係というのが改めて検討の必要が出てくるのではないかと思っております。
 もっとも、結局は減免もできる、一部を免除する、実質的にはそれを一部拒むという形でできるということを認めるのであれば、むしろ柔軟に、現在【P】となっておりますところを全部又は一部としてもよろしいのかなとは思います。そうしたときに、先取特権の問題ですとか執行の問題というのが指摘をされておりまして、ただ、それに対しては実体法がそうするのであれば、対応は可能ということであれば、一部ということを入れるということも考えられるのかと思います。ただ、そうなりましたときには、やはり全部を拒める場合の要件と一部でも拒めるという場合の要件が変わってくる可能性があり、具体的には支払能力を欠くというのがどれくらいの状況であるのかとか、生活が著しく窮迫するということがどのくらいの状況であるのかというのが、これも全部拒絶できるような状態を指しているのだというのと、一部であるというときにはそこの幅がもう少し出てくると思います。要件を変えろという趣旨ではなく、要件の解釈というものが少し変わってき得るのではないかと思うことが一つです。
 もう一つは、家庭裁判所においても減免という方法が一方で用意され、最初から監護に関する費用の分担についての審判を申し立てて、その中で法定養育費についても減免ということを考えるということは十分ありますし、そのときはただし書によらず、端的に(2)だけでいくのかと思うのですが、同じく全部、一部の減免で、拒絶と減免がどう違うかという問題もありますけれども、支払わなくてよいという点は同じだとすると、その際の考慮要素などの関係ということについても考える必要があって、現在は支払能力を考慮してとだけになっておりますけれども、ただし書のような一種苛酷な状況というか、そういう状況に置かれるという事情も入れなくていいのかとか、さらには家裁になった場合には、請求者の方の事情というのも入ってき得るのかどうかといったことも気になっておりますので、全部又は一部というふうにするときには、もう少し考える必要がある事項が出てくるのではないかと思っております。
 それは、全部又は一部問題についてなのですけれども、(1)のエにつきまして、請求者が子の監護を主として行わなくなったときが終期になるというのは、それはそうではあるのですが、窪田委員が御指摘になったように、そもそも子の監護を主として行う者に妥当しなくなったときには請求ができなくなるということですので、主体要件の方でも出てくる話ではないのかと思われます。そうしたときに、主として行う者なのかどうなのかということは、そもそも主体要件のところで不分明さがあるとは思うのですけれども、一旦こちらでまた同居親になるということなどが考えられますが、離婚後のこどもの監護をスタートしているという段階と、その在り方がいろいろ面会交流ですとか、事情がいろいろと出てきたときに、終期としての子の監護を主として行わなくなったときということを入れると、スタート段階では余り問題なかったものが、終期となるとこの部分がクローズアップされていって、一体主としてになっているのか、今も主としているのではないのではないかとか、共にやっているのではないかとか、何かそういう争いを生じさせるような気もしまして、これを終期として明示することが果たして適切なのだろうか、主体要件の問題として置いておけばいいのかもしれないということは思いました。どちらでないといけないというところまで判断が付かないのですけれども、少し検討する必要があるのかと思っております。
 それから、養子縁組との関係は、やはり養子縁組というものがどういうものかと、養子になり、親権を得るということがしっかりとこどもの養育に、経済面も含めて責任を持つという、そういう法的な地位が、別の人がそれを担うのだということであれば、法定養育費もそこが終期だという考え方は、養子縁組自体を、あるいは養子縁組をするということ自体がどのくらいのことを要請されるというか、そういうものとして考えるのかという、そちらの方に関わってくると思うのですが、ただ、他方で法定養育費自体は、親権者であるからということではなく、父母であればということから来ているという、そちらの考え方との間で養子縁組があれば当然終了するという考え方が、果たして一貫というか、より整合的なのかということについては検討する必要があるのではないか。この期に及んで検討する必要があるというのは無責任ではないかと言われるかもしれませんが、もう少し考える必要があるのではないかと思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。沖野委員からは、第3の2の法定養育費について、2点について御意見を頂戴いたしました。
 一つは、【P】になっている全部又は一部のという点で、御意見としては、一部というのを入れてもいいのではないか、あるいは入れる可能性もあるということを前提としての御意見だったかと思いますけれども、その場合に全部と一部とでは要件の解釈ないし運用が違ってくるのではないかという御指摘、それと、(2)の方の要件との平仄を合わせておく必要があるのではないかという御指摘を頂いたかと思います。
 それともう一つは、これも先ほどから御意見が出ている法定養育費の(1)のエの子の監護を主として行わなくなったときという点で、スタート時と終了時ということで違うという考え方もあるけれども、終了時について、この規定を置くということによって取り組まなければいけないという問題も出てくるので、明示しないという考え方も一つの考え方だということだったかと思います。
 あわせて、養子縁組については、養子縁組の意義をどう考えるかということとの関係で考える必要があり、当然終了という考え方でない考え方もあるという御指摘を頂いたと理解を致しました。
 それでは、久保野幹事、棚村委員、武田委員、水野委員、原田委員、そして赤石委員、戒能委員という順番でいきたいと思います。

養子縁組の議論も足りなさそうだ

○久保野幹事

 ありがとうございます。幹事の久保野です。第5の養子に関する規律の2の【P】のところについて意見を申し上げたいのですけれども、その前に、井上委員から御指摘がありました要望につきまして賛同するということを、まず申し上げます。
 そして、養子に関する規律の2の【P】のところ、「子の利益のため特に必要があると認められるとき」というところについてですが、まずこの【P】を設けることについて、また、この規律を設ける場合には、24ページから25ページにある(5)のような規律があることが適当であるという石綿幹事の御意見に賛成でありまして、その上で、「子の利益のため特に必要があると認められるとき」について、この表現のままでよろしいのではないかということと、あとその解釈について、気付いたことですけれども、これは第817条の7の特別養子における要件と同じ表現だと思います。そうしますと、狭すぎるのではないかという佐野幹事からの御懸念が当たるようにも思われるのですが、しかし、恐らく、特別養子の場合は、効果が大きく、同じ養子であっても実父母と子との親子関係が終了するかどうかという点で普通養子とは効果が大きく異なりますので、資料でも第817条の7が参照条文として挙げられていないのだと思いますし、おのずと具体的な適用というものも変わってくるのだと思っています。親子関係、実父母と子の関係が終了しない養子について考えていく要件になりますので、第817条の7の場合よりもより広く認められていくということになろうかと思いますし、判断枠組みの点におきましても、実父母も親子であり続け、新たに親子関係が創設され、その者が親権を持つということになりますので、先ほど佐野幹事がおっしゃったような相対的な判断ということがあり得るということになるのではないかというふうに私は理解いたします。
 また、第817条の7については、実父母の監護等の不適切ということが条文に書かれていますけれども、そのような点を強調することについては、養子という仕組みとの関係で、特別養子においてでさえ必ずしも適当ではないという学説上の考えも強いかと思いますので、その点を踏まえましても、相対的な判断という枠組みで考える要件と捉えていくということが十分に考えられるのではないかと思います。
 その上で、向井幹事から御指摘がありましたような例をどう考えるかというのは、養子の趣旨なども考えての解釈に委ねられて、今後の議論に任されるところが大きいとは思っておりますが、私自身の意見としましては、これも石綿幹事と同じ意見でございまして、無関心であるということをどのように捉えるかという点について、それより積極的に親権を行使できなくなる事由と認める方向で解釈していくということは十分にあり得るのではないかと思います。無関心、面会交流に応じないですとか、養育費の支払を継続して行っていないような一定期間の無関心というものを、親権の行使を否定する要件に当たるという解釈を行っていくということが十分にあり得るのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。久保野幹事からは、冒頭、井上委員の先ほどの御要望に賛成するという御発言があった後、第5の2の【P】の部分について、このような規律を設けるということに賛成である、あわせて、監護者等との意見対立がある場合についての規定の調整も必要であるという御意見を頂きました。
 その上で、【P】のところの要件として、「子の利益のために特に必要があると認められる」という現在のままでよいのではないか、この文言によって、佐野幹事が懸念を示されたようなものについても対応ができると考えることができるという御意見と、それから、向井幹事が先ほどおっしゃったような問題について、石綿幹事がおっしゃった解釈が採れるのではないかという御意見を頂戴したと思います。

おのずと変わることもある?
養子縁組関係の話だけど

○棚村委員

 早稲田大学の棚村です。基本的には、ゴシックで提案をされていることに賛成です。
 4点ほど、これまでの御意見や御議論を聞いて申し述べさせていただきたいと思います。
 第1点は、パブリック・コメントの取扱いなのですが、これは赤石委員からも正確に反映したいという強い要望が出されている点です。もちろん正確に反映できればそれに越したことはないと思うのです。これまでの法制審でパブリック・コメントを頂いたのは、数も少なかったりいろいろあったのですけれども、ただ、これを調査審議の参考にさせていただくという趣旨で整理させていただいてきました。パブリック・コメントにつきましては特にこれを投票に掛けるような形で、正確に数を出して反映させるということは、これまでやってこなかったということについて指摘させていただきたいと思います。
 それから、2番目なのですけれども、御意見の中で、要綱案に対する法制上の表現に関わるような御指摘とか、他の法令との整合性ももちろんあり得るのですけれども、民法それ自体の条文を変えるということになると、その体系性とか整合性の観点から、きちんとチェックするということが必要になりますし、ほかの法令との関係全体を考えるなら、例えば内閣法制局がチェックをされるということになります。このような法文の体裁の調整は、専門的技術的な立場からチェックが予定されてもいますので、この部会でできることには限界があります。要綱について条文化の観点からの御意見を出されるということはいいのですけれども、最終的には専門家による技術的なチェックがあるのだということで御理解を頂けるといいかなと思います。
 それから、3番目なのですけれども、要綱案が条文化されたときの解釈運用の際の懸念とか、疑問点みたいな御指摘はかなり多くあります。これも、解釈運用の際の具体的な例を示すとか、あるいはQ&Aみたいなものを用意していただくとかということで、できるだけ、法律の解釈運用が統一されたり、はっきりどういうふうに使われるのかということが分かるように工夫するということで対応できるのではないかと思います。
 それから、4番目は、正に井上委員からも、ほかの委員の皆様からもずうっとこれまでも指摘されてきましたように、法の整備とか見直しということだけではなくて、改正されたり新しい法がどういうふうに運用されるのかという問題ももちろんありますし、それからせっかくできた法制度がうまく使われるためには支援ということが必要です。したがいまして、井上委員からは、運用や紛争解決のため家裁の体制をきちんとしてほしいということにつきましてももちろん賛成です。ただ、こども家庭庁や、自治体が担っているひとり親支援みたいなことも非常に強化していただかないといけないと思っています。結局、法制の見直しだけを幾ら頑張ってやったとしても、実際には当事者やこどもたちに届かないというか、利用されないということにもなります。そこで、特に政府とか、あるいは責任を負っているところ、今後、国会とか行政に行くのだと思いますけれども、関係する省庁が法務省だけではなくて、きちんと支援の強化充実、それから紛争が起こった場合の家裁の体制の強化ということは是非心掛けていただきたいということは、改めて指摘させていただきます。以上、私からは4点を指摘させていただきました。
○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員からは、ゴシックについて基本的には賛成だという御意見を頂いた上で、4点御指摘を頂きました。内容上の問題というよりも、この要綱案の案に関わる周囲の問題について御指摘ないし御確認を頂いたものと理解を致しました。
 1点目はパブコメについて、これは参考資料という位置づけを従来してきたという御指摘。それから、2番目は、様々な御意見は出ていますけれども、文言に関わる問題については、これは法制局等も含めて、最後は技術的な調整をするということになるので、そちらに委ねることになるという御指摘。
 そして、3番目は、解釈運用についての御懸念もいろいろ出ております。これについて、先ほど要綱案そのものには補足説明は付かないというお答えが事務当局からありましたけれども、法律ができますと一問一答とかQ&Aとかという形で解説書が書かれますので、その中で一定の考え方を示すということが行われるであろう。それは一定の考え方ということで、それは先ほど申し上げましたように、公定解釈になるわけではありませんけれども、一つの指針というのが示されるであろうということだと思います。
 そして、4番目、これは先ほど井上委員の御発言があって、複数の方から賛成だという御趣旨の発言を頂いております。この後も、井上委員の御発言に賛成だという方いらっしゃると思うのですけれども、家裁の支援ということに限らず、関係官庁や自治体等の支援というのも是非考えていただきたい。これは、政府部内で対応していただけるように、法務省としても考えておいていただきたいという御要望として承りました。ありがとうございます。

パブコメは参考資料!

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