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法制審家族法制部会第10回議事録6~棚村委員・井上委員・北村幹事・杉山幹事

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さて議事録読みの続きー

○大村部会長 それでは、再開させていただきたいと思います。
  17ページ以下の「第6 財産分与請求権の除斥期間」、そして、18ページの「第7 財産分与に関するその他の論点」が残っておりますので、この部分につきまして御意見を頂ければと思います。どなたからでも結構ですので、お願いをいたします。

○棚村委員

 早稲田大学の棚村です。
  第6の財産分与請求権の除斥期間ですけれども、これについてもいろいろ相談機関での相談とかを伺っていると、別居とか離婚とかで、うまく円満に別れたり、大人の問題を処理できたところはいいのですけれども、そうでないところでは、離婚して2年間でやっと落ち着いたところで考えられるようなときに、財産分与というところまで手が回らなかったというような方もいらっしゃって、なかなかこの離婚から2年間の除斥期間という期間制限があるということについても、周知がされていないというような問題もあると思います。ただ、今言われたような形で当事者の方たちが割合と、自分自身の生活を立て直したり、紛争の解決をするなど落ち着きを取り戻すためにどれくらいの期間が必要なのかということをもう一回考えて、2年という起算点というか除斥期間の設け方について、除斥期間も、これでもう打切りなのだというような性質のものなのか、時効ですと権利が行使できるときから何年ということにもなるわけなので、この期間の問題も考えていただければというのが第1点です。
 それから、第2点が、第7で、財産の開示制度というのは、これは多分、実務の先生方もそうだと思うのですが、どれだけの財産を持っているかというようなことがよく分からないというケースが結構あると思います。その意味では、これは養育費とか財産分与とか、婚姻費用の分担もそうなのですけれども、お隣の韓国でも財産の明示とか照会制度とかという形でいろいろな工夫をして、財産を全て出させるという制度が是非必要だと思います。韓国のを見ていてびっくりしたのは、自分の所有している財産のほかですけれども、2年間にわたって親族等に譲渡したような財産とか、そんなようなものも含めて、追跡しながら財産をきちんと出させて、それを養育費とか、婚姻費用とか、財産分与ということで適正に分けたり、支払を命じたりする仕組みみたいなものを作っています。それに対して、例えば過料とか、拘留という強力な制裁制度も設けています。これは、裁判所侮辱みたいな英米の制度を参考にしたようですけれども、いずれにしても、そういうような形で財産の強制的な開示制度とか、それから場合によっては、ここにもあると思いますけれども、財産を出さない場合には当事者の主張を認めるという制度、弁論全趣旨から、そういうことへの規定化というのも海外でもやっているところはありますので、これは高田先生辺りにお教えいただければと思うのですが、実体法上、手続法上の財産開示制度、どういうような形で、どこに置くかというのは是非検討していただきたいと思います。
 それから、共有物分割も、財産分与とどちらが優先するかというので、非常に悩ましいケースが結構出てきています。当然、共有ということで、名義上も持分権を持っているわけですから、それをきちんと実現できるということは必要なことだと思います。ただし、今、実務では共有物分割請求訴訟が出されるときに、財産分与の話合いをしたり、やるべきなのに、それを回避する目的で、あるいは相手方に対する嫌がらせというのですか、そういうようなことで出てくるときに、権利濫用で押さえるというようなことで調整をすることがあります。けれども、財産分与と共有物分割という両方の調整をするような規定を設けるなど、そういうようなことのルール化というのが必要だろうと考えています。
 最後に少し余計なことを一つ言わせていただきたいのは、この家族法制部会とは関係ないのですけれども、先ほど言った夫婦財産契約というのを、例えば財産分与に関わって離婚のときにこういうふうに分けたいというようなことで提案をしたり、それから、共有にするという形で、婚姻後取得した財産は共有財産にするのだと夫婦になろうとする者が、そういうような定めをして、結婚前に登記もしなければいけないのですけれども、夫婦財産契約登記をやっても、税法上の扱いは、一旦稼いでいた夫なりが取得をした形で、それを共有にしたというので贈与税が課せられたりということになってしまっているわけです。それから、財産分与も資産譲渡をしますと、不動産の場合ですと譲渡した方に譲渡所得の課税が生じてしまうということになります。バブル期の非常に不動産が高騰していたときには、財産分与を気前よく子どもや妻のためにというのでやった方が、ものすごい譲渡所得課税を受けてしまって、錯誤の規定で勘違いしましたというので取り消さざるを得なかったという事案もあって、そういう意味で言うと、私自身、この財産分与とか、正にそういうところでの課税上の扱いについても、この部会がやることではないのですけれども、財産分与を気前よくやってあげたいという人を応援するような形で、これは養育費とか婚姻費用とか、いろいろなこともそうだと思うのですけれども、やはり税務上の何らかの御褒美とか優遇をするような仕組みを考えないと取り決めを促進したり、奨励することにはならない可能性があります。どうも取決めをなかなかしないという背景には、DVとかいろいろなことで怖いから関わりたくないというのもあるのですけれども、そもそもそういうことをした場合に税金を含めてメリットがどれくらいあるのか、デメリットがどれくらいあるかも含めて、分からないケースが結構あると思うのです。ですから、財産分与の制度を今度見直すにしても、ここでどれくらい検討できるかというのは、むしろ難しいかもしれませんが、先ほど正に窪田先生が言ってくださった、夫婦財産契約というのはほかの国では事前に、お互い同士が、きちんと紛争を起こさないで法律関係、権利義務関係をはっきりさせるために使われていますから、それが使いやすいような制度にして、いろいろなひな形とかそういうものを見せて普及させると同時に、むしろ婚姻前の登記というようなことではなくて、届出とか、婚姻後、むしろ必要に応じて話し合って決められるとか工夫も必要ではないかと思います。
 言いたかったことは、制度をもう少し使いやすくして、御褒美をあげるような仕組みにしていかないと、なかなか使いづらいのだろうなと思った次第です。財産分与とか、正にそういう制度についても、税法上の取扱いについても、ここでは検討できないかと思うのですけれども、課題として申し上げさせていただきます。長くなりました。

○大村部会長 ありがとうございます。3点プラス1点、御意見を頂きました。まず一つ目は除斥期間の問題で、期間は短すぎるのではないか、起算点などと併せて再検討した方がよいのではないか。それから、開示の問題については、ルールをどこに置くのか、実体法なのか手続法なのかということはあるけれども、積極的に検討すべきではないか。共有物分割については、調整ということを考えていくべきだろう。こういう御意見を頂きました。それと、もう一つ、ここでは少し無理だけれども、という留保の下で、先ほど出ました夫婦財産契約などについて、より使いやすいものとすることも考えていく必要がある。税制の問題は、財産分与も含めて一つ問題としてある。先ほど児童扶養手当などの話も出ましたけれども、税金と社会保障給付とは家族の関係に大きな影響を及ぼすので、そうしたことも考える必要があるという御指摘を頂きました。

○井上委員 

 ありがとうございます。連合の井上です。質問と意見と発言をさせていただきます。 
 質問の方は、17ページの第6の除斥期間の第2段落のところ、10行目以降になりますが、離婚前後の様々な事情で2年が経過後、財産分与の請求ができず、経済的に困窮する例について記載があるというところがありました。どんな例があるのだろうと思っての質問だったのですが、今ほど棚村委員から、大人の事情でいろいろあって、やっと落ち着いてきたら2年が過ぎていたという話もありましたので、そういうケースなのだろうなとは分かりましたが、もしほかに何かあるのであれば、どんなケースがあるのかを教えていただければというのが質問です。
 意見ですが、同じ17ページのところで、この除斥期間の2年が、その趣旨は必ずしも明らかではないということで記載があります。課題の方で、除斥期間を3年又は5年とする規定を設けてはどうかとありますけれども、趣旨が明らかでないということになると、せっかく請求をするときに、知らなかったとか、そういうことで2年で打ち切られてしまうと、それは請求する側にとっては、全く知らなかったことで請求するすべもなくなってしまうというのはどうなのだろうと思いますので、その意味では、何かしらの消滅時効と同じ事情で、根拠をしっかりと持った方がいいと思いますので、その意味では、3年の根拠だったり5年の根拠をしっかり作るようにしていただけたらいいのではないかと思います。

○大村部会長 ありがとうございます。除斥期間について、御質問と御意見を頂きました。御質問の方は、2年間に請求できないという例としてどのようなものがあるのかを、もしあれば教えていただきたいということでした。御意見の方は、期間を設けるという場合に、その根拠についても併せて検討して、その上で決める必要があるのではないかという御意見を頂きました。御質問の方について、事務当局で何かあれば。

○北村幹事

 おおむね棚村委員の方から御指摘いただいたところでありますけれども、特に高葛藤の離婚の場合に、離婚は何とかできたけれども、まず自分の生活を立て直す、あるいは整えることが精一杯で、財産分与までなかなか行かない、そのうちに2年たってしまったというようなお声を伺ったことがございまして、そのようなことを念頭に置いて記載をさせていただいております。

○大村部会長 ありがとうございました。

○杉山幹事

 私からは、棚村先生から御指摘のあった第7の1の財産開示の制度と、あとは、少し細かな話になるかと思いますけれども、第7の3の事例2に関連して、ここで意見を述べさせていただければと思います。
 第7の1の相手方の財産の開示を認めるという点につきましては、方向性としては賛成でありまして、この問題は財産分与のみならず、これまで議論してきた養育費の算定の基礎となる相手方の収入を知りたいという場面でも、開示のための何らかの手続があった方がいいと思っており、そのための手続を構築していくことは必要であると思います。ただ、その手続や、手続的な規律を考える以前に、実体法上の開示請求権があった方が、手続上も開示を求めやすいと思いますので、そのような方向で議論する方がいいのではと思います。
 仮にこの開示に応じなかったときに、先ほど御指摘があったような過料その他の制裁を課すかという点は、難しい問題であろうかと思います。開示に応じなかったときに手続的な不利益を課すということで十分であれば、必ずしも実体法上の制裁を課すまでは必要ないと思います。少なくとも実体法上、このような開示請求権があるといいますか、開示をする義務があるということが明らかになることが重要であろうかと思っています。細かな点までまだ詰められていませんが、以上が第7の1に関する意見になります。
 第7の3の事例2に関する問題ですけれども、倒産の問題が関わりますので、そもそもこの部会で一定の方向性について決着を付けていいかよく分からないところですが、ここで紹介されている判例のように、財産分与請求権が、相手方が破産したときに、破産債権としてごく僅かな配当しか受けられないことになるのは、現在の解釈論としてはやむを得ないところはあろうかとは思っています。他方で、様々な事情で離婚に時間が掛かることがあることを考えますと、破産と離婚の時期の前後で、先に財産分与をしてしまえば、よほどのことがない限りはそれが取り消されることがないこととのバランスといいますか、結論が大きく変わってくるというのはいかがなものかという気もしております。もちろん今は、破産債権だというのが判例ではありますけれども、解釈論として、清算的な部分については取戻権として構成するとか、あるいは財団債権として優先的な弁済を受けられるように構成すること自体も理論的には全く不可能ではないと思っております。そのため、財産分与の法的性質について検討するのであれば、清算的部分とか扶養的な性質の部分については、優先権を一定程度付与する、優先的な取扱いを認める方向で検討することもありうるのではないかと思っています。もちろん今でも優先的な取扱いを認める方法として、例えば、財産分与のうち扶養的性質の部分を切り分けて、その部分は破産債権だけれども免責されないというような取扱いをすることはできると思いますが、それで十分かについても検討する必要があると思いますし、この問題を考えるに当たっては、養育費の破産、倒産手続上の取扱いについても平仄を考える必要はあると思います。
 この問題については、破産法が改正された際に、養育費も含めた扶養料請求権については、破産債権としつつも非免責債権とする取扱いにしましたけれども、他方で、手続開始後に弁済をすると偏波行為否認として取り消される可能性もあり、それでいいのかという問題も残っていると思います。優先権の付与、あるいは優先的取扱いといった場合には様々な方法があるのですが、付与する方向で検討する必要はあると思います。他方で倒産法的な視点から見ますと、このように公示がないもの、2分の1ルールがあるからといって当然に配偶者の財産の2分の1は相手方のものになるというのも公示としては不十分だとは思いますので、そのようなものに優先権を本当に認めていいのか、また、詐害的な分与等が行われる可能性もあるので、優先権の範囲については検討する必要性があるかと思いますが、一定程度のものについては優先的な取扱いをするということも、再度検討していただければと思います。

○大村部会長 ありがとうございました。2点について御意見を頂きました。開示の問題については、実体法上の請求権を定めた方が手続の方も組みやすいということと、それから、清算の問題をどうするのかについての御意見を頂きました。もう一つ、22ページの事例2について、現状の取扱いは、それはそれで仕方がないというとした上で、しかし、破産と離婚の先後で帰結が大きく違うということには問題はないだろうかということで、財産分与の対象となる財産について優先権を認めるということも考えられるのではないか、ただ、公示や詐害の可能性ということを考える必要があるといったお話があったかと思います。杉山幹事の御趣旨は、事例2は、婚姻関係が継続している場合であっても、将来において財産分与の対象となり得るような財産について一定の保護をすることができないのかという含みを持っていると思いますが、そうした場合全てを念頭に置いて、今のようなことをおっしゃったと理解してよろしいですか。

○杉山幹事
全てかどうかについては、また少し検討する余地はあると思いますけれども、保護する場合もあるというくらいで考えています。
○大村部会長 ありがとうございました。


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