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法制審議会家族法制部会資料26読む5

もう、共同親権・共同監護になるね

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5 子の居所の指定・変更について

⑴ 父母の離婚後の子の監護において、子の居所は、父母のいずれと同居するものと定めるかに直結するものであり、その父母間の意見が特に対立する事項の1つであると考えられる。また、子の居所をめぐる父母の意見対立は、 父母の婚姻中にも生じている。そこで、父母の離婚の前後を問わず、子の居所の指定・変更をめぐる親権行使の在り方を整理する必要がある。
⑵ 民法第822条は、「子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない」として、子の居所の指定が親権の内容に含まれることを定めている。そして、子の居所の指定は、民法第818条第3項により、 父母が共同して行うことが原則となる。そのため、一般的には、子の居所の指定をするためは、父母の意見の一致を要するとの説明がされている。 そして、例えば、別居する父母間において子の居所の指定についての意見が対立する場合には、現在の裁判実務において、一般に、家庭裁判所が、父又は母の申立てにより、民法第766条の類推適用により監護者の指定をするなどの対応が図られている。また、父母の意見の一致がないにもかかわらず、父母の一方が子の居所を変更した場合には、現在の裁判実務において、 家庭裁判所が、父又は母の申立てにより、子の利益の観点から、監護者の指定及び子の引渡しの審判をするかどうかを判断するなどの対応が図られており、民事執行法には、子の引渡しを命ずる審判の強制執行の規律が整備されている。
⑶ 仮にこの資料のゴシック体の記載の1⑴から⑶までのような規律を整備した場合には、子の居所の指定については同⑵①の「日常的な行為」には該当しないと解され、父母の離婚の前後を問わず、同⑴の規律によって父母双方が共同で(共同の意思に基づいて)行うべきことが原則とされ、父母の意見が対立する場合には同⑶の規律によって家庭裁判所の手続における調整 が図られることとなる(注1)。この裁判手続を経ることなく父母の一方が他の一方の意思に反して子の居所を変更した場合には、家庭裁判所が、父又 は母の申立てにより、子の利益の観点から、子の引渡しの審判をするかどうかを判断することとなる。 その上で、父母の一方が行方不明等の理由により親権を行うことができない場合(同⑴ただし書)や緊急の場合(同⑵②)などには、例外的な単独行使を許容するということとなる。親権を行うことができないといえるかどうかや緊急性があるかどうかは、個別具体的な事情に基づいて判断されるものであるが、仮に、これらの例外事由が認められないにもかかわらず、 父母の一方が単独で子の居所を変更した場合には、家庭裁判所が、父又は母の申立てにより、子の利益の観点から、子の引渡しの審判をするかどうかを判断することとなる(注2)。
(注1)父母の一方が子を連れて別居することが必要となる事案の中には、他の一方による児童虐待等からの避難が必要となるものも想定され得る。このような事案における対応策としては、親権者の一方が、家庭裁判所に対し、他の親権者の親権の停止の審判を求め(民法第834条の2)、その申立てと同時に、審判前の保全処分の申立て(家事事件手続法第174条)をして、他方の親権者の職務を停止し、又はその職務代行者の選任を求めることも考えられる。
(注2)試案では、離婚後の父母双方を親権者と定め、その一方を監護者と定めた場合における子の居所の指定又は変更について、父母の一方が単独で決定するものとする【X案】 と親権者である父母双方が関与して決定するものとする【Y案】の双方を併記しており、 パブリック・コメントの手続においても各案に対して賛否双方の意見があったが、この問題については、「父母のどちらが子と同居して監護教育をするか(又は監護をどのように分担するか)」と「子と同居することと定められた親と当該子の居所を誰がどのように定めるのか」という2つの側面を区別して整理する必要があると思われる。 そして、前者の側面の紛争は、監護者の指定その他の子の監護について必要な事項の定めの問題として整理することができ、民法第766条によれば、監護者は、父母の協議により定めることとなり(同条第1項)、この協議が調わない場合又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が定めることとなる(同条第2項)。そのため、この問題の解決は、基本的に、父母双方が関与して決定されることとなる。 他方で、後者の問題は、父母双方の関与の下で監護者が定められた後に、当該監護者が日常の身上監護を行う場所を定める問題である。そして、民法の一般的な解釈によれば子の居所の指定は身上監護に属するものと解されているため、この資料のゴシック体の記載の2⑵のとおりの整理をすると、基本的には、監護者が単独の判断により子の居所の変更をすることができることとなる。 もっとも、このような整理に対しては、監護者が指定された場合であっても、子の転居が別居親と子との交流に重大な影響を与え得ることなどを理由に、監護者が単独の判断で子を転居させることはできないものとすべきであるとの意見もある。この意見を採用した場合には、子の転居を巡って父母間に争いがあるときは、この資料のゴシック体の記載の1⑶で提示している裁判手続により調整が図られることとなる。

居所指定権にフォーカス

6 親権者の変更等

⑴ 親権者の変更の規律の整備について
ア 民法第819条第6項は、父母の離婚の場合にその親権者が定められ た後、子の利益のために必要があると認められるときは、家庭裁判所が、 子の親族の請求によって、その親権者を他の一方に変更することができるものとしている。また、この規定によれば、親権者の変更には家庭裁判所の関与が必須であるものと解されており、父母間の協議のみによって親権者の変更をすることはできないと解されている。離婚後の父母双方を親権者とすることができる規律を設けるに当たっては、親権者の変更の規律についても所要の整備をすることが必要であると考えられることから、試案の第2の1の注では、親権者の変更についても、家庭裁判所の判断により、①父母の一方から他の一方への変更、②父母の一方からその双方への変更、③父母の双方からその一方への変更をすることができるようにするものとする考え方を提示していた。パブリック・コメントの手続においても、このような整備の必要性を指摘して試案の内容に賛成する意見があった(なお、パブリック・コメントの手続においては、改正前に離婚をして父母の一方を親権者と定めた場合に、親権者の変更について改正後の規律を適用するものとするかどうかについても、賛否双方の意見があった。この論点については、今後の会議において取り上げることを予定している。)。
イ また、この部会の第25回会議では、協議上の離婚をする父母間におい て離婚後の親権者についての合意をすることが可能な場面を念頭に、離婚後の父母双方を親権者とすることができるものとすることについての議論がされたが、その議論の際にも、協議離婚の際の父母間の合意を事後的に変更する仕組みの必要性を指摘する意見があった。そして、親権者の変更が必要となる事情は、事後的な事情変更に限られず、例えば、協議離婚の際の父母間の合意形成過程に問題があった場合や、その内容が子の利益に反する場合などもあるとの指摘があった。
ウ そこで、この資料のゴシック体の記載の3においては、民法第819条 の規律を参考に、あり得る考え方の案を試みに提示しているが、どのよう に考えるか。 また、親権者の変更の要件については、裁判離婚の際の親権者の定め方に関する規律と併せて議論することが有益であると考えられるため、次回以降の会議でも引き続き検討することが考えられるが、例えば、親権者を父母の双方から一方に変更する要件として、父母が共同して親権を行 うことが困難又は不適当であることにより子の利益を害すると認めるときは、家庭裁判所が父母の一方を親権者と定めなければならないものとする考え方について、どのように考えるか(注1)。
⑵ 協議上の離婚の際の合意形成過程に瑕疵がある場合の対応策
 この部会の第25回会議では、協議上の離婚をする父母間において離婚 後の親権者についての合意をすることが可能な場面を念頭に、離婚後の父 母双方を親権者とすることができるものとすることについての議論がされ たが、その議論の際には、外形的には父母の合意があるような場合であって も、その合意形成過程に瑕疵があるケースに対応する必要があるとの指摘 があった。 このような合意形成過程の瑕疵は、例えば、婚姻の届出や離婚の届出の場面でも生ずる問題であるが、民法においては、この問題への対応策として、 詐欺又は強迫によって婚姻や離婚をした者が、その取消しを家庭裁判所に 請求することができるものと定めている(同法第747条及び764条)。 このような民法の規律を参考とすると、協議上の離婚の際の親権者の定めについての父母の合意についても、家庭裁判所の審判等によってその合意内容を是正する仕組みを設けるものとすることが考えられるが、どのように考えるか(注2)。
(注1)パブリック・コメントの手続においては、親権者の変更の要件について、父母の離婚の際にその双方を親権者と定めた場合であっても、その後に子の福祉が害される事情が発生した場合には、父母の一方のみを親権者とするような規律とすべきであるとの意見や、父母間の真摯な合意に基づいて離婚後の父母双方を親権者と定め た場合には、この真摯な合意が失われた場合には、親権者を父母の一方に変更するものとすべきであるとの意見があった。この点に関し、この部会の第25回会議で は、現在の実務では離婚後の親権者の変更の「ハードルが高い」との認識を前提とし て、親権者の変更の要件を緩和する必要性を示唆する意見もあった。 なお、父母双方が親権者である場面において、その一方による親権行使が不適切であるときには、父母の婚姻中及び離婚後のいずれであっても、当該親権者の一方について親権停止や親権喪失によって対応することも考えられる。
(注2)協議上の離婚の際の親権者についての父母の合意に瑕疵がある場合には、離婚 をすること自体についての合意にも瑕疵があることも多いと考えられる。そのため、 このような場面に対応するための方策としては、例えば、①協議上の離婚の取消し を請求することができるものとすることが考えられる。 他方で、DVや虐待等がある事案においては、協議上の離婚をすること自体には争いがないものの、父母の合意のうち親権者の定めの部分のみに瑕疵がある場面も想定され得る。例えば、父母の一方(DV被害者側)は自らを単独の親権者としたいとの意思を有していたにもかかわらず、他方(DV加害者側)からの強迫を受けて、 父母双方を親権者とする合意又はDV加害者のみを単独の親権者とする合意をして しまうといった場合もあるのではないかとの指摘もあり得る。このような事案にお いて、親権者の定めに関する父母の合意の瑕疵を理由として、協議上の離婚の効力を否定することは、DV被害者側の本意ではないと考えられるため、②協議上の離婚の効力を維持した上で、離婚後の親権者を父母の協議又は家庭裁判所の裁判により改めて定めるものとする方策があり得る。

共同親権に変更する道筋も見えてきた

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