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父のお一人さま豆まき

亡くなった母は節分になるときっちり豆をまく人でした。

普段は大きな声など出さない人なのに豆まきのときだけは「鬼は〜外!福は〜内!」と大声で各部屋を回っていました。

父はあんまり豆まきに興味はないんだけど母にうながされて、母の後ろで見ている感じでした。

今年はやるのかな?

そう思って聞いたら父ひとりでやると言います。

「去年までは俺は豆まきは特にしたくもなかったが、お母さんがやってたから今年は俺ひとりでやってみようと思う」とのこと。

季節のイベントごとを母はわりとやる人でしたが、父は全く興味のない人です。

それでも母がいなくなった今はいろいろ思い出すのでしょう。

「母さんはこうやっていた」と母がやっていたように自分でやってみています。

「なんだやればできるじゃない」と思うのですが、同時に「それお母さんが生きている時に一緒にやってあげれば喜んだよ」とも思うのです。


父は大切な人がいなくなって初めてその大切さに気づくという、アホな男の典型です。

そういう人って結構いますよね。

そういう人が世の中から減ることを祈ります。

生きているうちに夫婦がお互いを思いやることで人生が2倍楽しくなりますから。


豆をまくのもひとり。まいた豆を掃除するのもひとり。

空の上で母はクスッと笑っているような気がします。


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