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私の税理士事務所敗戦記 EPISODE7

もし今から税理士事務所を開業するとしたらシリーズの続き。

今回は、税理士事務所のビジネスモデルについて考えてみます。

 昨今、サブスクリプションモデル(以下サブスク)が、もてはやされていますが、口座自動振替での税理士顧問契約は最強のサブスクです。

 売上を表す有名な公式として、

 売上=顧客数×単価×リピート率(数)

 というものがありますが、税理士顧問契約はリピート率(数)が、非常に大きいことが特徴です。それが強力なサブスクモデルをつくりだしています。

 顧問契約は定期的に収穫のある農耕型、一方、相続申告などのスポットでのビジネスは狩猟型といえます。

 農耕型の弥生人が、狩猟型の縄文人を駆逐したように、農耕型のほうが長期的に繁栄します。

 農耕で主食を安定的に確保し、
狩猟で肉を手に入れるのが理想です。

もう少しサブスクについて掘り下げてみます。

わたしは税理士顧問契約以外に、現在、こがねむしクラブという会員制ビジネス、過去にも税理士コンサル化プロジェクトという会員制ビジネスのサブスクを運営していました。

そこからサブスクにも、色々なバリュエーションがあることが分かりました。

今後の税理士事務所運営にも参考になると思います。

サブスクでお金をいただく以上当然コンテンツが必要となります。

そのコンテンツは、ストック型コンテンツと、フロー型コンテンツに分かれます。

ストック型は同じコンテンツを繰り返し繰り返し使えるもの。

フロー型は毎回新たなコンテンツが必要となるものです。

私の経験上、ストック型の方が優れていると思います。

 例えば、こがねむしクラブはソフトウェアを私とエンジニアが開発し、月額定額で使用してもらっています。ソフトウェアをアップロードするとあとはストック型になります。

 一方、毎月DVDや会報誌を会員に提供するものはフロー型です。基本的に同じコンテンツが繰り返し使われることはないので制作や毎回のネタ探しが大変です。

 その気づきを得たのは、神戸の不動産投資専門税理士の叶先生です。彼とは彼が独立開業する前からの友人です。
 
 叶先生は、サラリーマン投資家向けに、毎月税金情報のCDを送るサービスと、不動産投資シミュレーションソフトの提供という2つのサブスクを行っています。

 つまり、前者がフロー型コンテンツ、後者がストック型コンテンツで、ストック型のほうがいいということを聞いていました。

 ストック型は、そのコンテンツを創るまでが大変ですが、その後は自動化されてお金を稼いでくれます。

 フロー型の会員制サービスも最終的には税理士顧問契約というストック型コンテンツにつながる流れができているんだろうと思います。

 さらに高度なサブスクモデルだと、税理士の見田村先生がやっている税理士向けの有料税務相談メーリングリストのようなものがあります。

 こちらは毎日超マニアックな税理士からの質問に対応する必要があり、見田村先生のような高度な知識がないと誰でもできるものではありません。

 見田村先生がすごいのは、過去の税務相談事例を検索閲覧できるようにされているので、フロー型コンテンツが蓄積されてストック型コンテンツになるというハイブリッド型になっていることです。

 これに似たもので税理士のセカンドオピニオンサービスというのがあります、内容的にはそこまで高度な知識は必要ありませんが、課金するのがなかなか難しいと思います。

 ひとが物やサービスに、お金を払うときの動機は、快楽の追求(売上アップなと)か、苦痛からの脱出のどちらかです。

 快楽系の場合、投資的要素があるので漠然とした期待感にでもお金を払いますが、

 苦痛系の場合、明確な将来のリスクがイメージできないとお金を支払いません。リスクが不明瞭な場合、無料のものか安いもので済ませます。

 生命保険、火災保険、セコムのセキュリティなどは対象となるリスクが大きく明らかです。

 見田村先生のメーリングリストの場合、これで売上アップできるかもしれないという期待感と、税務調査で負けるという明確なリスクがあるため成功していると思います。

 税理士セカンドオピニオンの場合、そこまで明確な苦痛からの脱出をイメージできないため、なかなかビジネスとして成立たないのではないかと思います。


 少し話がはずれますが、最近流行りのものにオンラインサロンがあります。

 ホリエモンや西野亮廣さんのような有名人が主宰し、FBグループで交流し、会員が自主的に動いてコミュニティを盛り上げるというものです。

 オンラインサロンの特徴は、用意されたコンテンツがないことが特徴です。オマケ的なコンテンツはありますが基本的にはコンテンツを主宰者と会員で創り出していくというモデルなので、簡単そうに見えて実はメチャクチャ難しいと思います。

 私が10年くらい前に運営していた税理士コンサル化プロジェクトは、今から思うとオンラインサロンモデルでした。Facebookが登場する前に、有料の税理士向けSNSを運営していました。

 これは主催者が有名人か、よほどカリスマ性がないと続きません。私は自分にカリスマ性がないので著書のある有名な税理士さん達によびかけてメンバーになってもらいました。

 コンテンツを会員が自主的に自動的に生み出すように仕掛けることは本当にハードルが高いと思います。そのコミュニティに参加しカリスマ的リーダーと情報や空間を共有できることに喜びや価値を見いだせないと継続は困難になると思います。

 我々に近い業界では、和仁達也先生のキャッシュフローコーチ協会が数少ない成功例だと思います。

 毎年会員主導で後楽園ホールを借り切って大きなイベントを行うパワーはすごいです.


 税理士事務所に話をもどします。

 税理士事務所経営をサブスクと考えると、やはりストック型コンテンツのサブスクにした方が生産性を高めやすいと思います。

 毎月、毎年繰り返される業務、

 つまり、記帳代行、月次監査、税務申告というど真ん中の業務です。

 ここをいかに人手をかけずに自動化して精度と顧客満足を高めストック型コンテンツのサブスクにするかということが戦略目標になると思います。

 そのために、クラウド会計をつかったりアウトソーシングしたりRPA的なものを導入するというスタンスです。

 そしてその上に、コンサルティング的なフロー型コンテンツの収入を乗っけるといい感じになるんじゃないかと思います。

 これを提案されているのがアクアマネジメント松川会計事務所の松川先生が標榜されているコンサル型税理士です。

 税理士顧問料の上に、コンサルファームだったら月20万円くらいとれるようなコンサルティングを月2万円でトッピングしましょうというビジネスモデルです。

 コンサルティングというと高額報酬をもらわなければという固定観念がありますが、これはいうならば、農耕民族から狩猟民族への後退ということも言えます。

 さすがに松川先生は税理士事務所がサブスクモデルであるという本質を理解されてると思います。

 この話を飲み会の席で松川先生から聞いたときに、これはすごい!と思い、「是非、他の税理士にも教えて下さい!」とお願いしたところから、コンサルキャンプという素晴らしい講座が生まれました。

 ちなみに見田村先生も松川先生も、こがねむしクラブ会員さんで月額会費を頂いております。

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