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電子書籍といかにして和解していくべきか①

わたしは本を買うのが好きだ。

蔵書はすでに2500冊を超え、正確な冊数を把握できなくなって久しいが、そのほとんどすべてが「物理書籍」である。
電子書籍は昔セールで買ったデザイン本が数冊あるくらいだろうか。
わたしにとっては本=紙書籍という認識で、部屋の中は本で埋もれている。

今回はそんな私が、電子書籍と和解する方法を本気で考えていこうと思う。
なお、この文章は常に考えながら書いているので、新たな情報を得たら次の記事として出すか文章に訂正を入れていきます。
わたしはまだまだ物理書籍・電子書籍ともに不足している知識が多いです。
そのため、ときに間違っていたり不十分な情報で判断していることもあるかもしれません。
そんなときには、ぜひご指摘いただければありがたいです。

常に物理書籍/電子書籍について勉強しつつ、自分にとって最適解を見つけるのがこのnoteの目標です。

はじめに

今まで職業はあまり積極的に言ってこなかったのだが、わたしはDTP(desktop publishing)オペレーターとして働いている。
簡単に言うと本のデータを作る仕事…その中でも電子書籍が私の担当である。

つまりわたしは、電子書籍を仕事で日々何百冊と触っておきながら、実際の生活では一切電子書籍を買わず、そのすべての金銭的リソースを物理書籍に割いている。
電子書籍を作って得た賃金で物理書籍を買っている。

読む分には――あるいは所有する分には――わたしは物理書籍が好きで、電子書籍は好きではない。しかし、仕事としてかかわるならば電子書籍がいい。
当然ここには電子書籍と物理書籍のデータ的差異が理由になってくるので、どのアプリが得意とか不得意とかそういう話になる(わたしはインデザインが苦手で、xhtmlを眺めてるのはなんか好き)。

しかし、我が家のスペースも無限ではない。
幸いなことにわたしは親が家具屋なので、本棚を手に入れるのには苦労したことがない。が、その本棚を置く場所もすでに無くなってきている。
今は人の家の一角を借りてまで本を置いているが(推定1500冊くらい?)、一生それをできるわけでもないだろう。
想定するに自宅+実家に置くのであれば、おそらく5000ぐらいまではいける。父親がもともと2000冊くらいの蔵書(すべて漫画)を常に家に置き、ドカッと売ってはまた買いまくるという行動を繰り返す人なので、わたしも実家に多少…1000冊くらい置く分にはお目こぼししてもらえるだろう。意外と1000冊って大したスペースを取らない。

だが、わたしは毎月毎月懲りずに物理書籍を買う。だいたい月に平均で2〜5万ぐらいは本を買っていると思う。
今現在わたしは20代だが、これが30代40代となったときに同じペースで本を買い続けたらあっという間に自宅は崩壊するだろう。
そもそも大学生までは大して本を持っていなくて、所有している本もせいぜい200冊ぐらいだったのだ。それが社会人になってからのここ数年で2500冊を超えたわけなので、この先もどうなるか多少の予測はできるというものだ。

このままではまずい。
自分の中にはびこる電子書籍購入への強い忌避感を解決しなければ、新たな本が買えなくなって…あるいは本にまみれた部屋から出られなくなって死ぬ。
そういう危険意識は、以前よりあった。

話は変わるが、年始に友人が「書き初めを書いてよ」と言ってきた。
書き初めなんて小学生ぶりだし、そもそも筆ペンしか持ってないし…と思ったが面白そうだったのでそれに応じた。
その際、私が書いた書き初めがこれである。

ノートの切れ端に書いてるのがバレバレ

これは今、わたしの部屋の一番目立つところに貼ってある。
わたしの部屋を開け、これを見た親はいったいどう思っただろうか。娘が変な宗教にはまったと思っただろうか。
それとも、「そもそも不和だったんだ」と思っただろうか。どちらにしても怖いことには変わりないだろう。

これはわたしが結構真面目に考えた、2024年の抱負である。

今までわたしは電子書籍を買ってこなかった。避けてきた。
だけどこのままではいられない。石油王でもない家の広さが有限の人間は、どこかで電子書籍と和解する必要があるのだ。
まずは電子書籍に対する苦手意識の原因を探り、それを紐解いていくところから始めたいと思う。

電子書籍、物理書籍、どちらにもメリットがありデメリットがある。
すべてを電子書籍に変えるのは無理だ。物理書籍への愛は捨てられない。
だが、少しずつならどうだろう?
徐々に電子書籍の割合を増やし、物理書籍と電子書籍の割合を半々にする。それくらいならできるんじゃないだろうか?

これからのために、わたしは電子書籍と和解する必要がある。

メリット/デメリットを考えよう

今回、電子書籍との和解を目指すにあたって、まず確認しておかなければある。
それは、「なぜわたしは電子書籍を買わないのか」という問題だ。
「なぜ読まないのか」だとちょっと違う。漫画アプリとかいろいろ入れてるし、そもそも仕事で作ってる関係上パソコンでもスマホでも電子書籍は読んだことがある。
ジャンプラも毎週確認してるし、電子画面で見る漫画もしくは文章に抵抗があるわけではない。
しかし購入となると話は別だ。なぜか脳が拒みだす。
まずその理由を考えていく必要がある。

電子書籍のデメリット① 物理書籍と同額を払っているのに、所有権がない

これが一番大きい理由だ。電子書籍は正確に言えば、閲覧権を購入しているのであって所有権は所持できない(同人誌とかは所有権まで手にできることもあるだろう。今回は主に商業出版の話をしていこうと思う)。
電子書籍で購入できるのはあくまで閲覧権であって、最終的に自分の手元に保存しておくということができない。もちろんそんなことができてしまったら違法アップロードが横行するだろうから、保存したいのかと聞かれるとまた別の問題について考えなければいけなくなるのだが…。

物理書籍は確実に手元に残り、その重みと体積をもってしてわたしに存在をアピールしてくる。
電子書籍にはそれがない。あくまでビューワー上のデータであって、しかもわたしのものではない。

いや、それでもいい。いいんだが、ならどうして物理書籍と同じ値段を払わなければならないんだ?
あいにく、この問題に対する模範的かつ現実的な答えは岡田斗司夫が既に出している。こちらの動画を一度見ていただきたい(電子書籍の話をしているのは前半のみ)。

※この動画は2018年6月に配信された動画の公式切り抜きです。

簡単に言えば、物理と電子に値段差をつけると、だれも物理書籍を買わなくなる。そして物理書籍は一部の金持ちのものになっていく。
文化が貧富の差によって階級化されるようになっていき、金持ちは貧乏人の、貧乏人は金持ちの気持ちが分からなくなっていってしまう。
そういった分断された社会を避けるために――あるいは本の文化を守り続けるために――電子書籍は物理書籍と(ほぼ)同額で販売せざるを得ないという結論だ。

ちなみに、このサイトにも電子書籍が物理書籍と同じ価格である理由が書いてあるが、こちらは少々正確さに欠ける印象を持つ。
というのも、人件コスト&流通コストに関しては物理書籍も同じようにかかっているものであり(しかも物理書籍は返本のリスクも負っている)、開発・維持コストだって在庫管理の問題がある。
それに物理書籍は印刷代や輸送費などがプラスされているのだから、電子と同じ開発コストで作れるはずがない。

物理書籍と同じ値段を払っているにもかかわらず、物が手元に残らない電子書籍…。理由がある程度わかっても、まだ割り切れない部分が心に残る。

電子書籍のメリット① 手を洗わなくていい

さて、大きな理由を一つ述べたところで、閑話休題。
電子書籍を買わない理由はまだあるが、文句ばっかり言っていても仕方ないので一旦電子書籍に歩み寄ってみたいと思う。

というわけで、kindleのサブスクであるkindle unlimitedに登録してみた。
無料体験期間もあるし、これなら現状電子書籍に金銭を支払うことに抵抗があるわたしでも問題なくできるだろう。
で、1月16日に登録して、1月中の読書記録がこちらである。

どう見ても圧倒的に電子書籍が多い。
月の後半に入ってから登録したのに、圧倒的に追い上げてダブルスコアどころではない勢いで物理書籍を抜かしている。

ひとつ断っておくと、電子(漫画)のうち、20冊は「天体戦士サンレッド」である。kindle unlimitedに入っており、小学生~中学生ぐらいの時にハマっていたなあ…というノスタルジーで一気に読み終えてしまった。
しかし、サンレッドは普通に物理でだいたい持っている。
そこをおさえてすべて電子で読んだのだから、やはり電子書籍の方が読みやすかったということなのだろう。

kindle unlimitedに登録して一番良いと思ったことが、本を読む前に手を洗わなくて済むようになったことだ。
普段そんなことしてない人からすればなんのこっちゃという話かもしれないが、わたしは基本物理書籍を読む前には手を洗う。
自分の皮脂やどこかに触った時の手の汚れで本を汚すのが尋常じゃなくストレスなのだ。わたし、手汗すごいし。

その点、電子書籍はスマホで読むのでその点がある程度ゆるかったのが楽でよかった。
スマホが汚れたら拭けば元に戻る。何なら防水だから洗えるし。

わたしは猫を飼っているのだが、猫と遊んでいて手を舐められたりした後は手を洗ってからでないと読書に移れない。猫のよだれが本につくかもと思ったら気が気でないからだ。そのため、猫のいる場所では基本的に読書できない。

しかし、電子書籍は片手で猫と遊びながらもう片方の手で読める。
そう、片手で読めるのだ!!
物理書籍も片手で読めないことはないのだが、やっぱり不安定だし、若干ノドの下部が痛む。その点スマホなら片手でスイスイだ。万一猫と戯れた方の手でスマホに触ってしまっても拭けばいい。

これはわたしにとって一番のメリットと言っていい。とにかく「汚す心配がない」ことは革命的であった。物理本では、いつも手汗でふやかしてしまわないかびくびくしながら読んでいる。そのような心配なく本を読めるのは間違いなくストレスフリーであった。

本日の結論

文字数も多くなってきたので今回はこの辺で締めたいと思う。
本記事では電子書籍のメリット/デメリットについて1つずつ語った。kindle unlimitedにも登録して、電子書籍との和解が一歩ずつ近づいてきているような気がする。が、それでも私は物理書籍から離れられそうにないし、物理書籍を1冊丸々購入するのには抵抗がある。kindle unlimitedは所詮サブスクだから、本そのものには課金していない。
それに、電子書籍の読了数が多かったのも、お試し気分で入ってテンションが上がっていっぱい読んだだけという可能性もある。

やはりわたしはまだまだ物理書籍を買ってしまう。
(1月の書籍購入額は43000円程度であった。もちろんすべて物理書籍)
それは物理書籍があまりにも魅力的だから……なのかどうかは、また次回考えていくことにしようと思う。
今回のところは、電子書籍に歩み寄れただけでかなりの成長を感じている。

今後は定期的にこのシリーズの記事を出していきたいと思っている。
少なくとも、わたしが今年の抱負を達成するまでは。

オマケ・1月に読んで面白かった本

以下、わたしが1月に読んで個人的に良かった本を紹介します。

エレファントヘッド(白井 智之)

ダ・ヴィンチ・恐山さんがオモコロの記事か何かで勧めていたので読んだ作品。
ジャンル的にはサスペンス?だと思うんだけどとにかく趣味が悪い!
めちゃくちゃ面白くて一気読みできちゃうけど趣味が悪い!!
なので誰彼構わず勧められる感じではない。グロとか残酷描写が平気なら是非読んでみてほしいです。

ホラー映画で殺されない方法(セス・グレアム=スミス)

2000年代くらいまでのホラーあるあるを網羅していて楽しい本。
「今この本を読んでいるならば、あなたはホラー映画の中に閉じこめられている可能性が高い。」なんていうかなりメタな前書きから始まる。ホラー映画好きにおすすめです。

天体戦士サンレッド 11巻(くぼたまこと)

kindle版

まあそもそもサンレッドはどの巻読んでも安定して面白いんだけど、その中でも11巻が好きなのはレッドの過去の話が出てくるからです。匂わせ程度だけど。レッドの年齢が明らかになるのもこの巻。
あとはかよ子さんとの馴れ初めエピソードもあって、サンレッドって愛の話だよな…と思い出させてくれる。すごいんだ愛が。

忌録: document X(阿澄思惟)

「物理書籍でしかできないこと」ってのは色々あるんだけど、その逆で「電子書籍にしかできないこと」っていうのもある。これはその筆頭みたいな作品。
作品内に普通にYouTubeのリンクが張られていたり、ブログのような組版をしていたり、大島てるへのリンクが張ってあったりと、電子書籍であっても商業出版だとできないような工夫がいろいろされている。
この本が出たのは2014年ってことになってるんだけど、そんな昔にどうやってここまで作り上げたんだろう。その頃はEPUBの規定とかもいろいろ違ったと思うんだけど…。
とにかく、この本についてはまた別記事で取り上げたいです。そして普通にホラー作品としても面白いのでぜひ。

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