婚活5日目

瑠璃は参加者の男性に苛立ちや悲しさなどはなく、自分を責めるような思考へと変わっていった。

その日の帰り、パーティー会場の最寄り駅の繁華街を歩いていると、後ろから男性に声をかけられた。

【あれ?瑠璃だよね?】

振り返ってみるが分からない。男性と絡みの少なかった瑠璃には予想もつかず、マルチ商法か勧誘ではないかと予想した。

【俺だよ!俺!慶太だよ!】
『慶太!?あっ!』
その名前で閃いたのは一人しかいなかった。彼は瑠璃の幼馴染で小学校低学年の時に引っ越して以来の出会いであった。

【懐かしいな~全然、変わってないからすぐわかったよ!たまたま今日、親戚のおじさんの家に用事あったからこっち来たんだけど】

慶太は20年以上振りだと言うのに高いコミュニケーション能力で瑠璃の足を止め瑠璃は慶太の存在に圧倒され、足を止め話に耳を澄ませた。

【立ち話もなんだから、そこのカフェで飯でもどう?】
『いや、いいよ』
【OK!じゃあ、決まりだね!空いてるか聞いてみるわ】

は瑠璃の返事はNOであったが、慶太は速やかなエスコートで
お店に予約をし始めた。

【もう入れるみたいだから行こう】
慶太は瑠璃の斜め左を歩きそのまま何事もないかのようにカフェと向かった。後姿を見ると、派手すぎ落ち着いたサイズのあったスーツに髪形もしっかりと整え、どこか大人の余裕を感じるような雰囲気であった。

お店に着くとお洒落なカフェで予約席に案内をされて、着席するが瑠璃は
こういうお店に慣れていなくて、メニューの名前を見てもどのような物か
想像がつかなかった。

『何頼む!?』
【俺はこれでいいかな!】
『じゃあ、同じのにする』

注文を終えると、慶太は上着から名刺入れを取り出しその中から一枚名刺を取り出し、瑠璃に手渡した。

【改めまして、こういう者です。よろしくね!】

そこにはフルネームと会社名・役職には代表取締役と書かれていた。

『えっ!?社長なの!?』
【そんな大したことはやってないんだけど、スマホゲームってあるでしょ?あんな感じで色々なアプリを開発するような会社なんだけどね。瑠璃は今は何してるの?】

『私は福祉関係』

瑠璃は少し濁したような感じで慶太に職業を伝えた。

【でも、今日は休みでしょ?その格好で仕事は行かないだろうし?】

婚活パーティーの帰りだととても言いづらい雰囲気であったが、
彼には一度きりの関りだと感じたため、瑠璃は慶太に婚活パーティーの帰りである事を伝えた。

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