西山太吉さん死去
西山太吉事件の元毎日新聞西山太吉さんが死去しました。
この西山太吉さんについては、私はまったく擁護することはできません。
西山太吉事件の最高裁判所判決文を読む
この西山太吉事件の最高裁判所判決文を読むと、西山太吉さんの悪質さが際立ちます。
被告人はA新聞社東京本社編集局政治部に勤務し、外務省担当記者であつた者であるが、当時外務事務官として原判示職務を担当していたBと原判示「ホテルC」で肉体関係をもつた直後、「取材に困つている、助けると思つて安川審議官のところに来る書類を見せてくれ。君や外務省には絶対に迷惑をかけない。特に沖縄関係の秘密文書を頼む。」という趣旨の依頼をして懇願し、一応同女の受諾を得たうえ、さらに、原判示D政策研究所事務所において、同女に対し「五月二八日愛知外務大臣とマイヤー大使とが請求権問題で会談するので、その関係書類を持ち出してもらいたい。」旨申し向けたというのであるから、被告人の右行為は、国家公務員法一一一条、一〇九条一二号、一〇〇条一項の「そそのかし」にあたるものというべきである。
ところで、報道機関の国政に関する報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、いわゆる国民の知る権利に奉仕するものであるから、報道の自由は、憲法二一条が保障する表現の自由のうちでも特に重要なものであり、また、このような報道が正しい内容をもつためには、報道のための取材の自由もまた、憲法二一条の精神に照らし、十分尊重に値するものといわなければならない(最高裁昭和四四年(し)第六八号同年一一月二六日大法廷決定・刑集二三巻一一号一四九〇頁)。そして、報道機関の国政に関する取材行為は、国家秘密の探知という点で公務員の守秘義務と対立拮抗するものであり、時としては誘導・唆誘的性質を伴うものであるから、報道機関が取材の目的で公務員に対し秘密を漏示するようにそそのかしたからといつて、そのことだけで、直ちに当該行
為の違法性が推定されるものと解するのは相当ではなく、報道機関が公務員に対し根気強く執拗に説得ないし要請を続けることは、それが真に報道の目的からでたものであり、その手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは、実質的に違法性を欠き正当な業務行為というべきである。しかしながら、報道機関といえども、取材に関し他人の権利・自由を不当に侵害することのできる特権を有するものでないことはいうまでもなく、取材の手段・方法が贈賄、脅迫、強要等の一般の刑罰法令に触れる行為を伴う場合は勿論、その手段・方法が一般の刑罰法令に触れないものであつても、取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙する等法秩序全体の精神に照らし社会観念上是認することのできない態様のものである場合にも、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法性を帯びるものといわなければならない。これを本件についてみると原判決及び記録によれば、被告人は、昭和四六年五月一八日頃、従前それほど親交のあつたわけでもなく、また愛情を寄せていたものでもない前記Bをはじめて誘つて一夕の酒食を共にしたうえ、かなり強引に同女と肉体関係をもち、さらに、同月二二日原判示「ホテルC」に誘つて再び肉体関係をもつた直後に、前記のように秘密文書の持出しを依頼して懇願し、同女の一応の受諾得、さらに、電話でその決断を促し、その後も同女との関係を継続して、同女が被告人との右関係のため、その依頼を拒み難い心理状態になつたのに乗じ、以後十数回にわたり秘密文書の持出しをさせていたもので、本件そそのかし行為もその一環としてなされたものであるところ、同年六月一七日いわゆる沖縄返還協定が締結され、もはや取材の必要がなくなり、同月二八日被告人が渡米して八月上旬帰国した後は、同女に対する態度を急変して他人行儀となり、同女との関係も立消えとなり、加えて、被告人は、本件第一〇三四号電信文案については、その情報源が外務省内部の特定の者にあることが容易に判明するようなその写を国会議員に交付していることなどが認められる。そのような被告人の一連の行為を通じてみるに、被告人は、当初から秘密文書を入手するための手段として利用する意図で右Bと肉体関係を持ち、同女が右関係のため被告人の依頼を拒み難い心理状態に陥つたことに乗じて秘密文書を持ち出させたが、同女を利用する必要がなくなるや、同女との右関係を消滅させその後は同女を顧みなくなつたものであつて、取材対象者であるBの個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙したものといわざるをえず、このような被告人の取材行為は、その手段・方法において法秩序全体の精神に照らし社会観念上、到底是認することのできない不相当なものであるから、正当な取材活動の範囲を逸脱しているものというべきである。
最近の事件でいえば、その意図と目的から比較すると、採用の権限を持つ立場の人間が求職する立場の女性に意に沿わない性交をなした元TBSワシントン支局長の山口敬之さんを相当悪質にした感じですが、なぜかマスコミ人は西山太吉さんを擁護します。
事件に最後まで向き合わなかった西山太吉さん
その西山太吉さんが死去の約9か月前にNHKのインタビューに答えた記事があります。
西山太吉さんは最後まで事件の責任と向き合わず真人間になることなくこの世を去ったわけですが、西山太吉さんが事件に向き合わないことを許してきたのはマスコミ人のぬるま湯のような擁護が原因の一つだと思います。
同様の事件として、売春汚職事件があります。売春汚職事件では、読売新聞の立松和博記者が検察内部の情報源をもとにスクープ記事を矢継ぎ早に発信し続けましたが、この情報は検察内部の情報源をあぶり出すための偽情報で、検察は当時の公安検察派が特捜検察派の一掃を狙って立松和博記者を名誉毀損容疑で逮捕し情報源を自白させようとしていました。しかしながら、逮捕された立松和博記者は情報源を最後まで明かすことなく、その後読売新聞は取消記事を掲載せざるを得なくなり、記者生命を事実上断たれることとなり、その後自殺することになります。ただ、立松和博記者は取材源を最後まで守り、西山太吉さんは取材源を人間扱いせずに使い捨てただけでなく、社会党の国会議員に取材源が分かる形で情報提供したのです。あの世で立松和博さんは「ずいぶんと記者失格な奴がこっち側に来たぞ」と思っているのかもしれません。