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伊藤大介さんの新たなたたかい 2

執行猶予という諸刃の剣

 刑事事件の公判についていえば、被告人にとって、刑に処せられるのなら量刑は軽い方がいいに越したことがありません。これは今回の伊藤大介さんにとっても同じことになります。ただ、執行猶予がつくことについては、大きく刑が軽くなるという側面だけで両手を上げて歓迎することができるものとはならないことに着目しておく必要があります。
 それは宅地建物取引業の免許を持つ法人の役員として欠格事由に該当する期間が長期化するという側面があるからです。

執行猶予期間中の者に対する宅地建物取引業法の取扱い

 宅地建物取引業法第5条第1項第5号及び第6号では、宅地建物取引業の欠格事由について、次のように定められています。

5 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しない者
6 この法律若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)の規定(同法第32条の3第7項及び第32条の11第1項の規定を除く。第18条第1項第7号及び第52条第7号ハにおいて同じ。)に違反したことにより、又は刑法(明治40年法律第45号)第204条(傷害)、第206条(傷害の現場助勢)、第208条(暴行)、第208条の2(凶器準備集合及び結集)、第222条(脅迫)若しくは第247条の罪(背任)若しくは暴力行為等等処罰に関する法律(大正15年法律第60号)の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しない者

 そして、宅地建物取引業を営む法人については、第1項第12号において、次のように規定されています。

12 法人でその役員又は政令で定める使用人のうちに第1号から第10号までのいずれかに該当する者のあるもの

 つまり、伊藤大介さんが懲役刑、禁錮刑、罰金刑に処せられることになった場合に、伊藤大介さんが法人の役員としての欠格事由に該当し、刑の執行が終わった後5年間は役員となることができないだけでなく、執行猶予がついた場合に執行猶予期間の満了後5年間役員となることができないことになるわけです。私は弁護士ではないので量刑の相場は分かりませんが、禁錮や懲役の刑期より短い執行猶予期間がつけられたものは見たことがありませんし、レアケースである罰金刑の執行猶予では、罰金の支払いにより刑に処せられたことになるにもかかわらず、執行猶予期間プラス5年間欠格事由に該当することになってしまいます。したがって、執行猶予がついた場合には、伊藤大介さんが欠格事由に該当する期間が長期化するおそれがあることになります。おそらく法人が欠格事由に該当することを防ぐため、伊藤大介さんが役員としての欠格事由に該当することが明らかになった時点で辞任することになると思います。ただ、伊藤大介さんがこれまでの法人の運営に何らかの懸念を抱いているとすれば話はかわってきます。伊藤大介さんが「殺人未遂」事件の「被害者」となった後に株式会社ハウスポート代表取締役に伊藤大介さんが就任した事情については分かりませんが、会社の代表者として会社を掌握しておかなければならない事情があり可能な限り早期に代表者として復帰しなければならないのであれば、公判において執行猶予を求めないという異例の主張がなされる可能性もゼロではないでしょう。