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青識亜論さんの懲戒処分について

青識亜論さんに減給2か月の懲戒処分

 石川優実さんに対するポストについて、民事訴訟で名誉毀損と侮辱が認められたことについて、青識亜論さんの勤務先である徳島県が減給2か月の懲戒処分をなしました。

ヒールのある靴の着用に異議を唱える「#KuToo」を拡散させる運動を行った女性に対し、SNSでひぼう中傷する内容を投稿したとして徳島県の職員が減給の懲戒処分を受けました。

処分を受けたのは県立海部病院の主任を務める37歳の男性職員です。

県によりますと、この職員は道路整備課に勤務していた4年前の令和2年2月、旧ツイッターで、職場や就職活動で女性がヒールのある靴の着用を強制されることに異議を唱え、「#KuToo」をネット上で拡散させた俳優の石川優実さんに対し、名誉毀損や侮辱にあたる内容を投稿したということです。

職員は旧ツイッター上で、「青識亜論」というアカウント名で活動し、石川さんから損害賠償を求める訴えを起こされ、東京地方裁判所から慰謝料など33万円の支払いを命じる判決を言い渡され、去年12月、東京高等裁判所で1審の判決を受け入れることで、和解が成立したということです。

県の聞き取りに対し、職員は「深く反省している」と話したということで、県は地方公務員の信用を失墜させる行為にあたるとして、この職員を減給2か月の懲戒処分にしました。

徳島県は「県民の信頼を損ね、深くおわびします」とコメントしています。

NHK「『#KuToo』女性をひぼう中傷の県職員減給の懲戒処分」

 徳島県ウェブサイトにも処分内容がアップされており、高橋雄一郎弁護士が私見を述べられています。

青識亜論氏、減給処分されたのか。石川氏を揶揄する投稿をし判決は名誉毀損と侮辱のダブル認定だったが、徳島県職員であることを明示したアカウント運用ではなかった記憶なので公務員の信用を失墜させたとまではいえないのではないかな。処分の適法性にはやや疑問が残る。

@kamatatylaw

 青識亜論さんに懲戒処分がなされたことについては、私はやむを得ないとする立場です。なぜならば、青識亜論さんはご自分が関わっていた民事訴訟が徳島県にどのように受け取られていることを考えもせずに、東京地方裁判所の判決を不服として控訴している段階においてもはしゃいだポストをなすなどしていたからです。
 この民事訴訟が青識亜論さんと石川優実さんとの職務とは関係のないものであり、青識亜論さんが徳島県の職員であると名乗らずにポストしたり民事訴訟に対応しているわけですから、懲戒処分の対象となるべきではないのではないかという高橋雄一郎弁護士の懸念はもっともなのですが、この民事訴訟では徳島県が巻き込まれる要因がありました。それは青識亜論さんへの訴状が徳島県庁に送達されたことです。しかも、青識亜論さんは当時道路整備課という徳島県の本庁舎にある部署に配属されていたことが更にこの民事訴訟をややこしくしました。
 徳島県に対して送付された郵便物は文書を担当する部署が受領します。徳島県の場合は道路整備課と同じ本庁舎に置かれている法制文書課が郵便物を受領して宛先の場所に振り分けるものと思われます。ただ、この法制文書課が文書の受領のみを所管する部署ではなく、徳島県の訴訟や条例審査などの政策法務を担当する部署でもあったことがこの民事訴訟が徳島県内部で大きな問題となった要因であると私は考えます。
 地方公共団体において、訴訟を提起されたことは議会報告案件になりますから、政策法務を担当する法制文書課は青識亜論さんに黙って送達された訴状を渡すようなことはせず、訴状の内容について把握するために青識亜論さんに報告を求めて民事訴訟の内容を把握したことでしょう。そして、その内容は道路整備課の所属する県土整備部と法制文書課の所属する総合政策部のかなり上の立場の者に報告されたではないでしょうか。そういう状況の中、青識亜論さんは東京地方裁判所の判決を不服として控訴した際に、しばらくまた楽しむことができるなどというポストをなしていたのです。地獄の鎌の蓋の上で今は熱くないからと盆踊りを踊っているのが青識亜論さんの姿であったと言えるでしょう。そして、職務と無関係の民事訴訟であるから処分の対象となり得ないという可能性はこの時点で限りなく無くなっていたと言えます。私はこの時点で、民事訴訟の訴訟代理人でもある山口貴士弁護士に依頼をして人事当局との面談の場に同席させて見せしめに近いような処分がなされないように対応すべきであったと思います。

地方公務員に対する懲戒処分の重さ

 地方公務員法に定められている懲戒処分は、一番軽い戒告に至るまで地方公務員の収入に影響するものです。停職処分は職務に就くことができずに給与が支給されないだけでなく、副業禁止規定により停職処分を受けた地方公務員は収入がない状態で停職期間を過ごさなければなりません。停職処分を受けた地方公務員のニュースが報じられることがありますが、だいたいの場合は停職処分を受けた地方公務員はその日のうちに退職しています。その理由は、停職期間中に全く収入が無くなることにより生活ができなくなるからです。
 減給処分は給与の何%かが減らされることになりますから収入に影響があることは分かりますが、それだけではありません。賞与のうちの勤勉手当が最低1割程度減らされますし、良好な成績で過ごしたことになりませんから昇給が最低1年間見送られることになります。そして、戒告処分についても減給処分と同様に勤勉手当と昇給に影響します。

青識亜論さんになされた減給2か月の処分は適正であったのか

 これまでに述べた内容から地方公務員である青識亜論さんになされた減給2か月の処分がかなり重いものであることが分かると思います。この処分が青識亜論さんのなした行為に照らして適正であるならば問題がないことになりますが、この検証を進めていくと徳島県の判断が疑問ばかりであることが分かります。
 職場においてパワーハラスメントをなして処分される地方公務員は少なくありません。中にはパワーハラスメントで出勤することができなくなってしまった職員もいるとも聞きますが、地方公共団体でパワーハラスメントをなした地方公務員に対する懲戒処分の事例では、減給3か月から戒告までのものがあり、減給1か月となった事例ではパワーハラスメントを受けた職員が出勤することができなくなったというかなり深刻なものですが、青識亜論さんのなした行為の評価は懲戒処分においてそれらと同等かそれ以上であるというのが徳島県の判断ですが、その正当性を主張するのはかなり苦しいのではないでしょうか。

 千葉県船橋市は25日、部下へのパワハラ行為を繰り返したとして、建設局の課長級男性職員(55)を減給10分の1(3カ月)、健康福祉局の課長級男性職員(53)を戒告の懲戒処分とした。処分は24日付け。
 市によると、建設局職員は昨年度から今年度にかけて、複数の職員に暴言を浴びせるなどした。同じ課の20~50代の男性職員3人に対し、最大40分にわたる長時間の叱責や「言い訳してみろ」「バカふざけんな」「めんどくせえなお前は」などの繰り返しの暴言、職員を担当業務から外して無視するような態度をとったという。
 健康福祉局職員も2年度に着任後、職員に暴言や威圧的な態度を繰り返した。昨年4月以降、同じ課の40代の男性職員に対し「センスない」「バカ」「中学生のような文章」などの暴言を繰り返し、威圧的な態度をとった。
 いずれも、昨年10月の職員への調査で発覚した。処分をうけた2人の職員はいずれも「指導の一環だった」などとパワハラ行為を否認している。

産経新聞「千葉・船橋市、パワハラで職員2人処分『中学生のような文章』など暴言」

 兵庫県は22日、後輩職員に不要な業務を求めたり、無視したりするなどのパワハラ行為を繰り返したとして、まちづくり部の男性職員(40)を減給10分の1(1カ月)にするなど、計3件の懲戒処分を発表した。
 県によると、男性職員は5月、自身の業務を引き継いだ後輩に対し、資料の置いてある場所を教えないなど不適切な指導をした上、後輩が作成した資料に問題がないにもかかわらず複数回やり直しを命じたという。意図を尋ねると大声で説明することを拒否したり、無視したりしたため、後輩は出勤できなくなった。男性は「指導のつもりだった」と話しているという。
 県はほかに、上司や同僚へ威圧的な言動を繰り返したとして福祉部地方機関の男性職員(55)を減給10分の1(1カ月)に、県庁舎男子トイレのガラス戸1枚を蹴破った危機管理部の男性職員(45)を戒告処分にした。危機管理部の職員は業務で上司と意見が合わず「カッとなってしまった」といい、割れたガラスで上半身など30針を縫うけがを負った。(金 慶順)

神戸新聞「県が後輩へのパワハラ行為などで職員3人を懲戒処分 不適切指導、大声や無視」

三浦市は、地方公務員法第29条の規定に基づき、下記のとおり、市職員の懲戒処分を行った。
処分の対象と内容等
対象者元保健福祉部 行政職 課長級
懲戒処分の内容
戒告
懲戒処分の理由
当該職員は、職務上の管理監督職である立場を用いて職員(部下)のプライベートな事情に過度に立ち入り、人格や尊厳あるいは職員の勤務環境を害することとなるような、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動により精神的苦痛を与える、パワー・ハラスメント行為を行ったため。
このような行為は、地方公務員法第33条信用失墜行為の禁止に該当するものであり、同法第29条第1項第1号(法令等に違反した場合)及び第3号(全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合)に該当するものとして、懲戒処分とした。
処分年月日
2023年8月31日
市長コメント
今後も研修等を通じ、ハラスメントについて指導するとともに、服務規律の徹底を図り、市民の皆様の信頼回復に取り組んでまいります。

湘南人「【三浦市】8/31(木)パワハラを行った市職員を懲戒処分」

職員の懲戒に関する指針が見当たらない徳島県ウェブサイト

 この徳島県のウェブサイトを検索しても、職員の懲戒に関する指針が見当たりません。職員の懲戒に関する指針においては、「人を殺した職員は免職とする。」など職員がなした行為に対してなすべき処分が示されるものとなっています。この指針において、青識亜論さんのなした信用失墜行為は、「信用を失墜させた職員は、その程度に応じて免職、停職、減給又は戒告とする。」などと個別の事案に応じて判断する程度の定めとなることが通例ですが、このような指針が定められているということは地方公共団体の職員に対する懲戒が恣意的になされているものではないという事実を補強するものとなります。
 したがって、仮に徳島県が職員の懲戒に関する指針が定められることなく職員に対する懲戒をなしていたとすれば、処分の正当性を争って法廷に持ち込まれることとなった場合に徳島県が恣意的に職員に対して懲戒をなしているのではないかという疑いを裁判官が抱きやすくなるわけです。
 なお、石川優実さんが青識亜論さんに対して提起した民事訴訟の内容とその後の青識亜論さんのポストなどから考えて、青識亜論さんに対して懲戒がなされるのは当然であるが、減給2か月は重すぎて不当であり戒告が相当であるというのが私の私見です。