「行動する保守」と反差別カウンターの最低事件を比較する

「行動する保守」と反差別カウンターの最低事件とは

 平成25年1月の野間易通さんの「レイシストをしばき隊募集」から始まった「行動する保守」と反差別カウンターの対立ですが、いずれの側も眉をひそめるような事件を数多く起こしています。今回はそれらの事件の中で最も酷いと思われるものを1件ずつピックアップして比較してみます。
 「行動する保守」が起こした最低事件は、日本を護る市民の会内部で発生した元副代表に対する査問からの名誉毀損事件でしょう。そして、反差別カウンターが起こした最低事件は、北新地で発生した大学院生リンチ事件とそれに派生して行われたセカンドリンチだと私は思います。

内ゲバであるという共通点


 双方の共通点は、それぞれの活動で敵視している者に対する事件ではないという点です。日本を護る市民の会が最も敵視していたのは創価学会でしたが、元副代表は事件の中心人物であった代表の黒田大輔さんにつき従って創価学会を攻撃していた人物でしたし、リンチを受けた大学院生は友達守る団から男組に所属して在日特権を許さない市民の会などのヘイトスピーチに反対する活動を行なっていた人物でした。

情報が歪められて事件に結びついたという共通点


 更に共通点を付け加えれば、双方の被害者の意に沿わない形で情報が歪められて伝えられたことが原因となって、査問やリンチに結びついたという点でしょう。
 副代表は事務局長に自らの秘めた恋心を伝えて互いの同意のもとにセックスしたにもかかわらず、代表から「お前、事務局長を強姦したんだってな」という電話がかかってきて新宿区南元町にある日本を護る市民の会代表、事務局長、副代表の男子2名、女子1名が共同生活を行なっていたマンションの室内という密室での査問に至りましたし、大学院生はエルネスト金こと金良平さんの金銭問題について怪しいと思っているということを他言しないようにぼんこと李普鉉さんなど少数の信頼できると考えた人物に告白したにもかかわらず、大学院生が金良平さんの金銭疑惑を吹聴しているということになって、男組組長の高橋直輝こと添田充啓さんから男組を破門となり、その後のリンチに結びつきました。

ボイスレコーダーが被害者を救ったという共通点


 三つ目の共通点は、被害者が査問やリンチの現場に行く際にボイスレコーダーを準備して行ったことが事件が更に歪められることを防いだということでしょう。
 日本を護る市民の会の査問事件では、代表の黒田大輔さんが無関係の人物も含めて数多くの人物に対して高額の金員を請求する民事訴訟を提起しました。その中には黒田大輔さんらを批判するスカイプに参加していないにもかかわらず、スカイプ参加者がその人物のブログを引用しているから共同謀議に参加していたと民事訴訟の被告になった人物もいると聞いています。そのような事実から副代表がボイスレコーダーを準備していなければ、副代表が強姦を認めたこととして更に大きな被害を被っていたに違いありません。
 そして、大学院生リンチ事件では金良平さんが傷害罪で40万円の罰金刑を受け、ぼんこと李普鉉さんが暴行罪で10万円の罰金刑を受けたにもかかわらず、加害者側に100万円を超える高額賠償がなされた民事訴訟の判決を曲解して、裁判所がリンチでないことを認めたなどと訴訟代理人の神原元弁護士が強弁しています。おそらく大学院生がボイスレコーダーを準備していなければ、加害者側は大学院生に名誉毀損を理由とする民事訴訟を提起していたに違いありません。

加害者側の情報操作が事件に結びついたという共通点


 四つ目の共通点は、加害者側が伝える事件の内容と実際の事件の差異が著しいものであったという点でしょう。
 日本を護る市民の会の査問事件では、「副代表のポンチク(お腹をチクッと刺したという表現だと思われます)」と伝えていた内容が、厳しい査問の中で混乱した副代表が自らの潔白を証明しようとして台所から包丁を持ってきて自らの腹を刺したというものでしたし、加害者側が金良平さんとの「喧嘩」と伝えていたものは、無抵抗の大学院生を一方的に1時間ほど殴るという凄惨なものでした。

加害者側の事件の隠蔽や改竄工作という共通点


 五つ目の共通点は、加害者側の事件の隠蔽や改竄工作が酷いものだったということです。
 日本を護る市民の会の査問事件では、黒田大輔さんが副代表への査問を録画していましたが、在日特権を許さない市民の会の全国の支部など「行動する保守」の団体に対して自分たちの正当性を伝えるために動画の上映会を全国各地で行なっていました。その上映会では副代表が自らの腹を包丁で刺す場面も漏れなく上映され、上映会に同席した事務局長が被害者を装って泣き出すという演出も加えられていたと聞いています。
 大学院生リンチ事件では、十三の商店街の外れに店を構えていた「あらい商店」の朴敏用さんがきっかけを作ってツイッター上で加害者の金良平さんを擁護する「エル金は友達」キャンペーンが繰り広げられました。それは被害者の大学院生へ心理的圧迫をかける目的があったと鹿砦社ムック「反差別と暴力の正体」で推察していましたが、ここまでの加害者側の開き直りと外部の人間にはわからないようにしたうえで大学院生に向けて巧妙に行われた「エル金は友達」キャンペーンの用意周到さから、私は彼らが心理的圧迫以上の効果を求めて行ったという疑念を拭うことはできません。

ウォッチャーが重要な被害者支援に携わったという共通点


 六つ目の共通点は、「行動する保守」から「居酒屋保守」や「反日左翼」などと批判され、反差別カウンターから「冷笑系」と揶揄されているいわゆる「ウォッチャー」とされている者が被害者の支援に大きな役割を果たしたことです。
 日本を護る市民の会の査問事件では、副代表を支援するグループを結成したのはあるウォッチャーで、そのウォッチャーはその後黒田大輔さんらが有り余る時間を使って警察に何度も被害を訴えて副代表の逮捕という事態に至ったときにも日曜日に飛び込みで弁護士を見つけて即座に着替えなどの差入れをしたと聞いています。
 大学院生リンチ事件では、ヘイトスピーチ関連法案の成立のために在日特権を許さない市民の会などのデモ動画を編集した経験のあるウォッチャーのヲチャ会さんが大学院生の支援のために被害者と鹿砦社を繋げて民事訴訟の提起に向けた大きな一歩を進める働きなどをなしたことが鹿砦社ムック「カウンターと暴力の病理」の手記に記載されています。

互いの事件の差異は加害者にとって「正義の暴走」だったか否か


 かなり共通点の多い二つの事件ですが、大きな相違点があります。それは直接暴行や傷害に及んだかどうか、事件直後の被害者への対応という点です。
 日本を護る市民の会の査問事件では、副代表は包丁による負傷により救急車で運ばれましたが、この負傷は副代表の自傷でした。そして、黒田大輔さんは「ここ(新宿区南元町)で救急車を呼ぶということを創価学会が利用することを考えろ」などと負傷した副代表を批判しながらも救急車を呼んだと聞いています。
 大学院生リンチ事件では、李信恵さんが胸倉を掴んだことがきっかけとなって金良平さんと李普鉉さんによる暴行が続き、負傷した姿で店内に戻った被害者に伊藤大介さんは話が終わっていないなら戻らなければいけないと述べたと本人尋問で証言していました。そして、李信恵さんが一升を超えるアルコールを飲んだと本人尋問で証言した彼らの夜は、李信恵さんの「帰るで」の声で救急車を呼ぶ者も被害者の手当をしようとする者もなく終わりました。
 いずれも凄惨な事件でしたが、共通点と相違点を比較すると反差別カウンターが起こした大学院生リンチ事件の方が酷い事件であるといえます。その差異はどこから生まれたのでしょうか。直接手を出したかどうかという点では、日本を護る市民の会査問事件の中心人物である黒田大輔さんは根性なしという評判がある反面、大学院生リンチ事件の現場となった北新地のバーには成人するまでにやんちゃな人生を送ったと公言する伊藤大介さんと総合格闘技のジムに通っていてカウンターの現場で暴行に及んだとして逮捕された経験のある松本英一さんがいました。しかしながら、この二人はまさにリンチが行われている店外路地の突き当たりには行っていませんし、主となって暴行した金良平さんはかつての恋人や反差別カウンターのメンバーを心理的に追い詰めることはあったと報じられていましたが、カウンターの現場で直接暴力を振るったという事実は聞いたことがありません。したがって、加害者の暴力性が二つの事件の差異に結びついたと結論付けるのは乱暴な論理だと思います。
 そこで思い出したのは「行動する保守」で最大の会員数を誇る在日特権を許さない市民の会メンバーだった人物から聞いたこの言葉でした。

「私たちもこのやり方が決してよいとは思っていない。しかし、このようなやり方をすることによって批判されることにはなったが私たちがマスコミに取り上げられるようにもなった」

つまり、「行動する保守」は決して正しいやり方ではないと感じながら活動を続けているから直接暴力に及ぶことへの歯止めとなり、反差別という大義名分を持ち自らが正義の側にいることをかけらも疑わない反差別カウンターであるからこそ直接暴力に及ぶことにためらいがなかったのではないでしょうか。そしてこれは伊藤大介さんと李信恵さんの訴訟代理人であった神原元弁護士が奇しくもツイッターで公言していました。

「正義が暴走して何が悪い」

ただ、大学院生リンチ事件で正義が暴走することはヘイトスピーチを繰り返す「悪」が暴走するより悲惨な結果をもたらすことが証明されたのではないでしょうか。