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菅野完さんの事実を歪める野党論

菅野完さんのコラム「なんでこんなにアホなのか」がハーバー・ビジネス・オンラインで復活

 高須克弥さんの記事を執筆したところ、編集部がSPA!に広告を掲載したことがない高須クリニックに配慮して高須克弥さんに関する原稿の修正を求めたことからトラブルになったことから連載が終了した菅野完さんの週刊SPA!巻頭コラム「なんでこんなにアホなのか」がハーバー・ビジネス・オンラインで復活しました。


 菅野完さんの著作については、フジサンケイグループの扶桑社から出版されているものが多く、週刊SPA!もご存知のとおり扶桑社から出版されている雑誌です。

フジサンケイグループの思想的な特徴

 菅野完さんとフジサンケイグループの扶桑社という組合せは少し不思議に感じる方もいらっしゃるかも知れません。「右翼」を自称しながらその主張のほとんどが左翼よりの菅野完さん、産経新聞社から出版されている雑誌「正論」など「右」に振れている雑誌や書籍を出版しているフジサンケイグループですからそう考える方がいても不思議ではありません。
 ただ、米国による年次改革要求書の存在とそれに沿って日本の改革が進んでいくことに懸念を示した関岡英之さんの記事を早期から取り上げたのは月刊正論ですし、平成19年7月刊行の別冊正論で「"世界標準"は日本人を幸福にしない」を特集するなど単に「右」に振れていると評価することが難しいのがフジサンケイグループだと私は思っています。そのような企業風土の中で菅野完さんの著作の出版や雑誌の連載を依頼するという運びになったのではないかと私は勝手に思っています。

果たして自由民主党は「野党のお手本」だったのか

 菅野完さんは、民主党を中心とした連立政権時代の自由民主党を野党のお手本だとコラムの中で述べています。

 今からちょうど10年前、東日本大震災の発生直後、野党自民党は国難に背を向けて時の民主党政権の疑惑追及に明け暮れていた。安倍晋三のようにメルマガでデマを流す不逞の輩がいたほどだ。そしてその明け暮れの結果、自民党は政権奪取した。
 それでいい。あの下品さ、あの権力に対する飽くなき渇望こそが、どの時代にも野党に求められるものだ。

 しかし果たしてそうでしょうか。東日本大震災直後、自由民主党は震災対策のために菅直人内閣に全面的に協力することを表明して、与野党が震災という国難に立ち向かう体制が整っていました。そのような中で、菅直人総理大臣が谷垣禎一自由民主党総裁に対して副総理兼震災復興担当大臣の就任を打診し、民主党を中心とした連立与党と自由民主党との連立を進めようとしたのです。


 この連立打診は、福田康夫総理大臣の時に自由民主党から民主党に持ちかけられた大連立構想のような唐突さを感じました。ただ、大連立構想ですら自由民主党と民主党の間で政策の合意がなされて小沢一郎民主党代表は連立に前向き、民主党内で承諾が得られずに破談という経緯をたどっており、菅直人総理大臣の連立打診と比較しても様々な配慮や準備がなされたものであることがわかります。つまり、菅直人総理大臣の連立打診は、連立して何をするかということを煮詰めないまま谷垣禎一自由民主党総裁に打診したという相手が受けるはずもない打診をして断られたというものでしかなかったのです。
 ただ、菅直人総理大臣のこの「奇策」は別の効果も発生させました。挙国一致のために菅直人総理大臣が連立を申し出たのに自由民主党は東日本大震災そっちのけで政争に明け暮れたという誤解を生んだことと、その誤解を利用して事実を書き換えようとする意図を持つ者が生まれたことです。そして、後者の代表格がこのようなコラムを発信している菅野完さんであることに疑いの余地はないでしょう。