妄想:電車の中で…

いつもこっそり聞くだけだったkoekoeに、真帆は昨日、初めて投稿した。
すぐに消そうかと思ったけど、自分の声へのコメントを読むと、一人でしていた楽しみとは違う快感を覚えてしまった。
投稿したのは2件だが、その倍以上、昇りつめ、今朝は頭が少しぼぉっとしたまま、いつもの通勤電車の乗り込んだ。
「夜中にもコメントくれた人がいるのかな」と思い、電車の中でkoekoeのコメントをチェックする真帆。
刺激の強い広告が表示されるので周りの人に見られないか気を付けながらスマホを操作する。
こんなところで…と思いながらも、ついつい再生ボタンを押し、イヤホンからの自分の痴声を何気ない顔で聞きながら、みんなのくれたコメントに丁寧に返信していると、その返信にも新たなコメントが返ってくる。
「通勤電車で聞いてる人もいるのかな...もしかして、自分の前に立っているこのおじさんが自分の声を聴いてたりして…」
なんてことを考えていると、なぜか身体の奥底から蜜があふれ出てきてしまう。
「どうしよう、誰かに気づかれちゃったら…」
そう思うと、さらに鼓動が早くなってくる。
スマホの中の真帆も、それに呼応するかのように声が高ぶってくる。
「電車の中で感じちゃってる…こんなところでダメなのに…」
背徳感が真帆の身体を熱くしていく。
鞄を抱えるふりをして、胸を刺激する真帆。
不十分な鈍い刺激に、苛立ちを覚えながら胸を刺激し続けていると、駅に近づくカーブで電車が大きく揺れた。
体制を崩した真帆は、前に立つ男性の背中に顔を押し付けてしまう。
その瞬間、耳からイヤホンが外れ、自分の声が一瞬外に漏れた。
『でもだめ・・・今日は触るだけだから・・・』

男性は振返り怪訝そうな表情を浮かべたが、一瞬のことに何だかわからなかったのか、そのまま何事もなかったかのように前を向いた。
ドアが開いた瞬間、真帆は急いで電車を降り、「大丈夫、気づかれてない…」と心の中で繰り返しながら、足早に改札に向かった…

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