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【STEAM教育と特別展「宝石」③】同じ宝石なのに、どうして色が違うの?

2022年6月19日まで、東京・上野の国立科学博物館で開催されている特別展「宝石」。
こちらでは、「同じ宝石でも色が違うのはどうして?」という展示もされています。

STEAM教育と特別展「宝石」②】でも紹介しましたが、展示を見て歩くと、同じ鉱物の宝石であっても、その色の豊富さに驚かされます。

同じ宝石なのに、どうしてこれほど多彩な色があるのでしょうか?

たとえば サファイアの色のイメージは「青」でした。

薄い青から濃い青まで…ということであれば理解もしやすいのですが、実際は、写真のように多彩な色がありました。

同じ宝石でありながら、どうしてこれほど多くの色があるのでしょうか?

宝石の色の原因になっているものは?

宝石の色の原因となっているものは、大きく分けて次の2つあります。

  • 鉱物そのものに色の原因となる元素が入っている

  • 鉱物そのものに色の原因となる元素が入っていない

宝石を構成している成分に、
原因となる元素が入っている場合

宝石を構成している鉱物そのものに色の原因となる元素が入っている宝石としてトルコ石やラピスラズリ、ペリドットなどが挙げられます。

これらの宝石を加工した場合、削った際に出る粉は宝石と同じ色をしています。

宝石を構成している成分に、
原因となる元素は入っていない場合

ルビーやサファイア、エメラルドなど、多くの宝石は鉱物そのものには色の原因となる元素は存在していません。

つまり、純粋な結晶は「無色透明」です。

本来、無色透明なはずの宝石に色がついている原因は3つあります。

a)宝石に取り込まれた微量の不純物

不純物が宝石の色として見えるのは「光の選択吸収」という現象が起きているためです。

太陽光など白色光は目で見ることはできませんが、「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」の7色がバランスよく混ざり合っています。

宝石の中に含まれた微量の不純物が、この7色の光のうち特定の光だけを吸収し、吸収されなかった残りの光の色が、宝石の「色」として私たちの目に届いています。

同じ宝石でも色が薄かったり濃かったりするのは、宝石に含まれた不純物の量によって吸収される色が変わり、それに伴って明るさや鮮やかさなども変わるからです。

b)欠陥が原因となっている場合

通常、原子は規則正しく並んでいます。

ところが、なんらかの原因で原子が規則正しく並んでいなかったり、あるはずの箇所に存在していなかったり、原子の一部が入れ替わっていたりすることがあります。
つまり、結晶内に「欠陥」が生じているということです。

宝石の結晶に欠陥部分が生じたとき、その部分には光を吸収する帯ができます。

そのため、本来の無色透明ではなく、なんらかの色のついた宝石になります。

欠陥が色の原因となっている宝石には、ピンクダイヤモンドやブルーダイヤモンドなどが挙げられます。

c)内包物が原因となっている場合

宝石が形成される途中、もしくは形成後になんらかの個体や液体、気体が取り込まれることがあります。

こうした内包物が宝石の色となっているものに、ローズクォーツなどが挙げられます。

宝石の価値とカラー

少し話がそれますが、宝石を評価するとき、なにを基準にしているのでしょうか。

もちろん宝石によっても異なりますが、宝石を評価する基準には色や透明度、重さ、傷の有無などが挙げられます。

〇ルビー

最高品質の色は「ピジョン・ブラッド」と呼ばれる鮮やかな濃い赤色

  • クロムの量が多い ⇒ 黒に近い赤

  • クロムの量が少ない ⇒ ピンクに近い赤内包物多少の内包物はマイナスポイントにはならない。 「ルチル」と呼ばれる針状の内包物が、光の反射によってルビーの内部に星が浮かびあがる「スタールビー」が注目されている。

〇サファイア

鮮やかな濃厚なブルーの方が価値が高い。

▶コーンフラワーブルー

  • 矢車草のような少し明るく深みのあるブルー

▶ロイヤルブルー

  • ミディアムからダークの色調で、わずかに紫がかったブルー内包物

  • ルビーと比べると内包物が比較的少ない。

  • 内包物の多さや入り方が評価に影響。その他99%以上のサファイアは加熱処理が施されているため、非加熱で色の良いサファイアはさらに価値が高くなる。

同じ鉱物でも、色によって違う宝石?

ルビーとサファイアは「コランダム」という同じ鉱物ですが、含まれている不純物によって色が変わり、違う宝石として認識されます。
ルビーの場合は不純物としてクロム、サファイアの場合は鉄やチタンが含まれています。

ほかにも、アクアマリンとエメラルドは「ベリル」という同じ鉱物です。
アクアマリンの場合は不純物として鉄、エメラルドの場合は不純物としてクロムとバナジウム、鉄が含まれています。

まとめ

今回は、「宝石の色はどうして違うの?」という観点から掘り下げてみました。

宝石ができる過程における偶然起きた原因によって同じ宝石でも色が変わったり、宝石の価値が変わったりするのはとても興味深いことです。

元素の特性だけでなく、不純物や欠陥、内包物などによって色が変わり、価値が変わる。

純粋だからこそ美しいというわけでもない……というのは、さまざまな経験を通じて知識やスキルを身に付けていく人生に通じるものがあるようにも思います。

宝石のカラーバリエーションについては、現在、東京・上野の国立科学博物館で開催中の【特別展「宝石」地球のうみだすキセキ】で紹介されています。

ご都合のつく方は、展示会に足を運んでみてはいかがでしょうか。


展覧会名:特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」

  • 会場:国立科学博物館 地球館地下1階 特別展示室

  • 会期:2022年2月19日(土)~6月19日(日) ※日時指定予約制

  • URL:https://hoseki-ten.jp/


【参考】

教育×IT化を定点観測するwebメディア【koedo】


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