見出し画像

日本のデジタル競争力ランキングは32位! 日本でDX化が遅れている理由とは?

教育現場のDXは、教職員の仕事の効率化だけを追い求めるのではなく、教育の質の向上にもつながっています。

日本では文部科学省が令和4年度に「第1回学校DX推進本部」を開催し、次の2点を検討していることを公表しました。

・ デジタル技術の活用をはじめとした教職員研修の充実化や教師のICT活用指導力の向上
・ 校務の情報化をはじめとする学校における働き方改革

第1回学校DX推進本部

日本のDX化の現状

「DX」という言葉の起源は意外と古く、2004年(平成16年)、スウェーデンで誕生しました。その後、日本では2018年(平成30年)に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を取りまとめたことで、DXという言葉が浸透し始めました。

しかし、令和5年に発表された「世界デジタル競争力ランキング」によると、日本のデジタル化は調査対象である64ヵ国・地域のなかで32位(前年29位)、G7のなかでは6位、アジア・太平洋地域の順位で8位と、けっして高くありません。

なお、この調査結果が2018年に初めて公開されたときの日本の順位は22位でしたので、6年の間に徐々に順位を落としているということです。

世界に見る日本のDX動向/ みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社(最終閲覧日:2024.9.20)

海外の教育現場におけるDX化の現状

諸外国に比べると順調にDX化が進んでいるとは言えないかもしれませんが、現在、日本の教育現場でも少しずつDX化が進んでいます。では、海外の教育現場はどうなのでしょうか。

フィンランド

フィンランドでICT化の進捗が早く、2018年(平成30年)の時点で小学校に電子黒板が100%設置されていました。現在では、紙の教科書ももちろん使われていますが、デジタル版教科書を教室前方の大きなスクリーンに映して授業が進められています。

さらに小学2年生からWordの使い方を覚えはじめ、3年生ではパワーポイントの操作を覚えます。そのため高学年になるとパワーポイントを使って児童自ら資料を作成し、それを使ったプレゼンテーションをすることもあります。

小学生のデジタル・リテラシーが高い背景には、小学校入学直後から学校と児童、そして家庭をつなぐ支援システムがしっかりと構築されていることも影響していると考えられます。この支援システムで、たとえば時間割の確認や、保護者から欠席連絡等が行えるようになっています。

アメリカ

アメリカの学校では、効果的な教育計画が立てられるようにオンライン教育のプラットフォームの導入が進んでいて、生徒の学力向上に大きく貢献しています。このプラットフォームの導入により教師は生徒一人ひとりの学習状況をリアルタイムで把握できるようになりました。


また、デジタル評価ツールを利用することで成績の管理が簡単になったため、教師は校務に時間を取られ過ぎることがなくなり、個別指導に多くの時間を使えるようになりました。

さらに、たとえばデータ分析に基づいて生徒一人ひとりに最適化した時間割と教材、学習方法を提供してくれる「Teach to One: Mathプログラム」など、生徒の学習をサポートするシステムが導入されています。

日本でDX化が遅れている理由

日本のDX化が諸外国と比べて遅れているのはなぜでしょうか。

まず、日本のDXにおける定義と、諸外国における定義を比較してみましょう。

令和2年に経済産業省がまとめた「デジタルガバナンスコード2.0」によると、日本における「DX」の定義は次のとおりです。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データ とデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデ ルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

つまり、日本ではDXを「企業が顧客ニーズにもとづいて変革に取り組み、競争力を発揮すること」と定義しています。

一方、諸外国におけるDXの定義は「デジタルビジネスへの転換」を意味することが多いようです。デジタル技術の活用によりサービスやパフォーマンスの向上を図っています。

このように日本においても諸外国においてもDXの本質は大きく違わないように感じられます。

それでは、どこに違いがあるのでしょうか。
DX化が遅れている日本とDX化が進んでいる諸外国を比較すると、経営者の役割が違うことに気が付きます。

経済産業省がまとめた「デジタルガバナンスコード2.0」では、経営者の主な役割は「顧客、投資家、取引先などのステークホルダーとの対話」と明記されていますが、DX化を誰によってどこを目指すのかがはっきりと触れられていません。

一方、DX化が進んでいるアメリカでは、企業がDXを進めるうえでもっとも重要なことのひとつとして、最高責任者を含む経営陣によるDXへの理解と支援が挙げられています。

そのうえで、DXを成功させるポイントとして次の5つを挙げています。

  • 明確に設定された目的に冷静にフォーカスする

  • デジタル戦略では大胆に範囲を設定する

  • 定期的に見直し調整できるDX戦略を推進する

  • 変化に対して柔軟な思考/実施体制でDXを推進する

  • DXのリーダーシップおよび説明責任をだれが果たすかを明確にする

つまり日本では目的が明確に制定されていなかったり、変化に対する柔軟な思考や実施体制ができていなかったりすることがDX化の障害になっているのかもしれません。教育現場では紙の書類や押印が必要な書類などがアナログな文化が残っていたり、教育委員会や校長がDX化に積極的でなかったりすることがDX化の流れを阻害しているのかもしれません。

また、古くなって保守運用が非効率となっているITシステムの存在が、日本のDX化が進まない理由のひとつとして挙げられます。

さいごに

アメリカのDX化を成功させる5つのポイントを見ると、日本のDX化が遅れている理由が分かるような気がしてきます。

日本では、教育現場ではもちろん、一般の企業でもDX化を進めるための部署が存在し、その部署が主導して経営陣の許可を得つつDX化を進めているイメージがあります。

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、IT人材が引退したり、サポートが終了したりすることによる経済損失が2025年以降、最大12兆円(現在の3倍)にのぼる可能性があることを指摘しています。

今後、国内のDX化がどのように進んでいくのか、koedoでも定点観測を続けようと考えています。

(koedo事業部)

【参考】


「教育×IT」を定点観測するwebメディア【koedo】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?