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「死者の幻影」 ー とあるリマスタリングの経験

2年前に作った自作オリジナル曲をリニューアルしたので、その記録をここにおきます。

iZotopeを使っている人で、アレンジやマスタリングに興味のある方はご参考にしてください。

リニューアル後の曲はこちらです。

リニューアル

2年前に2時間DTMで作った原曲から、全体構成はさほど変えていない。
多少音源が増えたので、より魅力ある音色に入れ替えた。そしてアレンジとミックスをやり直し。

アレンジ調整

トラック

原曲は、トラック感の音域の衝突が多い。(今も多いが)
冒頭から続くピアノシーケンスがメロディとぶつかったので、途中から1オクターブ下げた。

途中で出てくるフルート音は、以前のものが使えなくなっていたので別の音色と差し替えた。
パッド音との音域衝突があったので、パッド側のイコライザを調節して衝突する音域を下げる。これでフルート音の方がよく聞こえるようになる。

イコライザー調整

パッドとピアノは盛大に音が被っているが、ピアノの方をリリカルに聴かせたい。
iZotope Neutron 3では被っている音域をハイライトして教えてくれるので、パッドのイコライザで酷く被っている音域は下げる。

ピアノに被っている音域がオレンジ色でハイライトされる

トータルバランス調整

自分の耳は既に老廃なので、あまり当てにならない。
iZotope Total Balance Control を使うと、曲全体の音域バランスを可視化してくれるので、それを頼りに全体のバランスをとっていく。

Stereo Outputの最終段(Ozoneよりあと)にTotal Balance Controlを挿入する。
「Fine」、「Pop」を選ぶ。
そして自曲を再生する。

音域のバランスが、こんなふうに見える。

この回廊のようなところにうまく線が入るように、各トラックのボリュームを調整すると、人間の耳にはバランスよく聞こえるらしい。

回廊イメージの下から、各トラックのボリュームを直接調整できる。
くどいと感じていた高音域のパッド音は、全体に少しボリュームを下げた。

マスタリング(全体を整える)

まず、iZotope Ozone 9 を使って全体を整える。

AI のMaster Assistantに全部おまかせすると、かえって気持ち悪くなることが多いので、少し自分でがんばる。

Ozone 9のプリセットから、今回は「Modern Master」を選んだ。
全体の音の雰囲気が抜群によくなった。
Master Assistantをそこでかけると、プリセットを使った状態で色々と調整してくれるようだ。

マスタリング(最終の音圧調整)

Stereo Output の最終段に、Logic Pro X のMetering > Multimeterを挿入して、表示させる。

Multimeterを見ながら音圧を計測する

するとLUFSというメーターが右側に見える。これが最終的なボリュームメーターだ。

曲の一番聴かせどころ(たいがいはデカいところ)で LU-S が-12〜-15くらいになるように調整する。
そして曲全体を再生した時に最終的なLU-Iが(願わくば)-15より大きくなるくらいに、調整する。

ボリューム調整(音圧調整)には、iZotope Ozone の機能を使う。
LimiterかMaximizerに以下のような部分があるので、そのThresholdを下げるとLUFS値が上がる。

ただの経験談。

上で述べたのは、今回の曲で使った経験談。
しかも勉強中のプラクティス。正解じゃない。

ためしにTotal Balance Control でプロの曲を可視化してみた。
すると、回廊に線がピタリとはまった。さすが。

ただし、ポップスの曲はポップス用の回廊パターンに合う。
クラシックの曲はクラシック用の回廊パターンに合う。
つまり、音域のバランスはジャンルによって(つまり好みによって)違う。

そして、プロの曲でも、曲の最初から最後まで回廊パターンに入ったまま動かない、ということはない。

大事なこと

曲の始めから終わりまで全てが音域バランス完璧になるなんてありえないし、全ての楽器間の音域がまったく被らないこともありえない。
だからあくまでツールは「参考」にする。絶対守らなければならないルールじゃない。

結局、最後に一番大事になるのは、自分がその曲をどんな曲に育てたいか?作曲者としての好みと意志だ。

とはいえ、老廃した自分の耳だけで、暗闇の手探り状態でミックスするよりはツールを道標に使う方が、音の雰囲気はずいぶんよくなる。

少しでも参考になれば嬉しい。

長文お読みいただき、どうもありがとうございました。

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