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新世代が出揃ったAMDのCPUとGPU、乗り換えは?:GPU編

全世界の4096億人のAMDファンの皆様、こんにちは。今日も今日とてAMDの本社に向かって祈りを捧げている香月です。問題が一つあって、私の場所から本社がどの方角にあるかわからない為、とりあえず毎日45°ずつ別の方角に向かって祈りを捧げています。死ぬほどどうでもいい。

さて、先日AMDよりCPUとGPUの新製品発表がありました。CPU側は「Zen3」世代となる、7nmプロセスを採用した「RyZen5000シリーズ」が、GPU側は「RDNA2」世代となる、同じく7nmプロセスを採用した「Radeon RX 6000シリーズ」がそれぞれ発表され、11月6日に先んじてCPUが日本でも発売となりました。

そんなわけで、PCバカの自作ヲタクのAMDマニアはどうするんだ、っていうのが今回のお話。

とりあえず手っ取り早いGPU、Radeonに関して

普通だと「CPUの内容が先だろ」みたいに思われそうでアレですが、CPUは色々と他のコンポーネントの変更も必要になるので、まだ発売前ではありますがGPU……というよりVGAの内容に関して。現状各社からリファレンスボードでの販売が発表されており、今時点においてはベンダーオリジナルとなるモデルは少数。リファレンスの場合はクロック等は当然ですが、クーラーも含め、見た目も中身も各社共通です。

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(クーラーは3連内排気タイプ)

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(型番をnVidiaのGeForceにぶつけてきた上位モデル3種類)

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(VRAMは3種全てでGDDR6の16GBを搭載)

出力ポートにUSB-Cが登場、VirtualLinkの名残り?

出力ポートの振り分けはHDMIが1つ、DPが2つ、そしてUSB-Cが1つ、という構成になっています。AMDのページにある資料によれば、「USB Type-C for display and power delivery」と記載がある為、いわゆる「DP Alt対応USBポート」と判断して良さそうです。Thunderbolt3に関しては、仮にそれに対応していれば明示的に表記されるべき内容なので、それに関しては非対応の様子。

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(6800XTのティアダウン。内排気とはいえ、ブラケット側にスリット無し)

DP Altに関しては使用するアダプタによってDisplayPortとしても、HDMIポートとしても(なんならD-Subも)使用可能な規格の為、ポート形状が変わっただけで実質的に「DP*3、HDMI*1」がベースの構成と考えて良いでしょう。また、このUSB-Cポートを先に搭載していたのはGeForce2000番台の一部で、この当時VR系のハードウェア的な効率化・統合化規格として「VirtualLink」というものがあり、これが「VirtualLink Alternate Mode」という、DPAltやPower Delivery(PD)と別規格として策定、機能する、として用意されたものだったのですが、肝心の「VirtualLink」自体が完全に立ち消えになった(Webサイトすら404表示)為、GeForce3000シリーズからはUSB-Cポートは姿を消しています。一方でRadeonは先代のRX5000シリーズにはこのポートが無く、6000シリーズで追加になったという事で、「なんで今さら?」といった感が否めない所もあるのですが、AMDはドライバレベル(Radeon Sofware)「ReLive for VR」という、スタンドアロン系VRHMD(コンシューマ向けで言えばOculus Quest/Quest2あたり)にワイヤレスでSteamVRの処理を転送し、フルワイヤレスでフルスケールのVRプレイが可能になるシステムを既に構築していました。

このあたりの兼ね合いで、どちらかといえばVRに力を入れているAMDとして、今後のドライバアップデートでの機能追加を見越した上で、汎用性の高いUSB-Cポートを敢えて搭載したのだろうなとは思います。

ちなみに情報ですが、Radeon ReLive for VR、及び完全外部ツールとなる「ALVR」の両者でOculusQuest2を使用し、フルスケールのPCVRとしての使用は既にテスト済みですが、「データ伝送時にWiFiを経由する」という根本的な部分から、かなりの割合で映像が圧縮され、ブロックノイズやMPEGノイズが目立つ場面もあります。これでもかなり頑張っている事は認めるのですが、ワイヤレスで飛ばす以上はこの点は捨てる事が出来ない部分なので、USB-C直結で5Gbps、或いはそれ以上の帯域をフルに使えるようになった時には、それこそ「PCVR機器と同等」の画質で楽しめるでしょう。また、同時に気になった「トラッキング精度の低下」に関しては、どちらかといえばQuest側の処理の問題のようで、単体使用(PCを使わない状態)であってもトラッキングロスト、もしくは「手の動きに後追いで追いかけてくる」ような挙動を見せてきます。頭の向きに関しても同様で、現時点でReLive for VR、及びALVRで「レースゲームをVRでプレイする」などの使い方は絶望的と言っても過言ではないレベルでした。動く時には動くのですが、安定動作出来るスイートスポットが非常に狭い印象です。

冷却面は3連ファンでの内排気、ベンダーモデルも僅かながら発表アリ

クーラーはRadeonVII以来となる3連ファンによる内排気となり、RDNAとして初となったRX5000シリーズのシロッコファン外排気と大きく見た目が異なります。現時点では6800XT、及び6800無印の2製品が各社より発表されており、XTでは2.5スロット、無印では2スロットと、若干冷却構造のサイズ違いがあります。

RadeonVIIに関しては完全にリファレンスモデルのみの流通、逆にRX5000シリーズはリファレンスの流通量・期間ともに極めて短く少数で、すぐに各社のオリジナルファンによるベンダーモデルに置き換わりました。ベンダーOC状態なのはもちろん、電源の強化、クーラーの強化、そしてLEDライティング等、様々な製品が出ていましたが、こと空冷RX5700XTに関して言えば、ASRockが販売したTaichiモデルが最強だろうかとは思います。

補助電源は8ピン2本(リファレンスは8+6)、ブースト時には2000MHzを超えてくるハイクロックモデルで、映像出力もDP4系統+HDMI2系統の計6系統出力が可能。内外ともに強烈なモデルであった事は間違いないでしょう。

一方、今回の6000番台に関しては、ASUSが既にとんでもないオリジナルモデルを発表済み。240mmラジエターを使用した水冷モデルです。

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(マジですか。ASUSニュースページはこちら

こうしてみると、もしかすると今回のリファレンスモデルも流通量が少なくなる可能性もあり、リファレンスで導入するか、なんならいっそこのASUSの水冷モデルを突っ込むかで迷っていたりはします。

3連内排気としては、つい先日販売開始になったGeForce3000シリーズで、「ボード長が短めで、ブラケットと逆側のファン部分はエアフローが抜ける設計」がありましたが、少なくともRadeonに関してはそういったスルー構造は無く、ボードから上方向にダイレクトにエアフローが発生する構造ではなさそうです。

この「エアフローが抜ける構造」に関しては、各社のベンダーオリジナルモデルでも採用されており、リファレンスの時点で基盤自体の長さが短かったRTX3000系ですが、最終的なボード長はこれまでと同等か、下手するとさらに大きくなっています。ちなみにこのエアフローの抜けた先は、通常の構成であればメモリスロット、VGA垂直配置であればチップセット周りにぶち当たる為、VGAを冷やすためにファンをガンガン回した結果、熱気がそれらのコンポーネントに当たる可能性があるのが心配な所。なーんて、黄緑のボードを入れる予定は(少なくとも今のところは)さーっぱり無いので気にしちゃいません。予算が組めないとか言うな。悲しくなるから。

RX5700XTからの乗り換えなら、RX6800でも余裕

さて、現状RX5700XTのリファレンスを使っている私ですが、「もし乗り換えるなら」を仮定した時、RX6800無印でも根本的な構成で上位になります。これは型番からもわかる部分ですが、5700系がいわゆる「GeForce2070系にぶつけた」製品で、今回の6800系は「GeForce3080系にぶつけた」製品である事から、単純にクロックが高いという話でもなく、内部的な構造自体が大幅にアップグレードされている事に起因します。例として挙げるならば、演算ユニット(CU)は40→60(5700XT→6800無印、以下同)、ストリーミングプロセッサも2560→3840、テクスチャユニットが160→240、最終の映像描き出しで使用されるROPも64→96と、根本的に数が増えており、かつレイトレーシング用のアクセラレータも追加されています。VRAMに関してもGDDR6である事に違いはないのですが、帯域幅が448GB/s→512GB/sに拡張され、搭載容量も8GB→16GBと倍増しています。

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(RX5700XTとRX6800無印のスペックシート比較)

こうした点を踏まえて、かつ私の使用用途として考えた際、無理に6800XTに手を伸ばさずとも、無印への換装でかなりの割合でスペック向上が見込まれる為、導入するとなれば無印でも問題なかろうと考えています。強いて様子を見たい所としては、GPGPUによる処理がどの程度向上しているか、という部分ですが、当初RDNAアーキテクチャはGPGPUよりもゲーミング性能に振った設計である、という話があり、実際にVEGA系(GCN世代)とNavi系(RDNA世代)でGPGPU処理に関しては(先代となるVEGA64比較で)極端な処理速度向上が見込めなかった部分があり、これがRDNA2世代のBigNavi系になった事でどの程度変化しているかが気になるポイントです。
(※2020/11/08加筆:アーキテクチャの「RDNA」「GCN」と、製品世代の「VEGA」「Navi」「BigNavi」が混在していた為、一部加筆しました)

価格帯としても、無印は$579と販売価格が発表されており、現時点のレートでおよそ6万円程度。ここに代理店系の上乗せがどの程度入るかはなんとも言えませんが、65,000円あたりがだいたいの目安ではないかなと考えています。さすがに無印で7万に届きそうな価格帯になると、日本国内でGeForceとの価格帯競争で難しい部分になるので、どれだけ高くても65,000円程度、出来れば6万円程度で収まってくれる事を祈るばかりです。上記したASUSの水冷のようなベンダーモデルでは当然さらに高価格帯(そもそもベースがXT)になるものと思いますが、率直に言って「もしベンダーモデルを入れるなら」と考えた時、(Taichiのような)出力系統が増設されているようなモデルくらいしかメリットを感じず、むしろ余計な光り物をゴテゴテつけた結果お値段が上がった、みたいな話にもなりかねないので、今回もリファレンスを狙ってみようかな、とは考え中です。このあたりはCPU編にも繋がるのですが、光り物はもうお腹いっぱいです。スペックに寄与しない部分で追加パーツが発生して価格が上昇したり、本来重視されるべきコンポーネントでケチられるくらいなら、地味な見た目で結構です。
※2020/11/23追記:価格予想を見事に外しました。発売初日時点のリファレンスボードで、各社バラツキは多少ありますが、6800XTが82,000円程度から、6800無印が73,000円程度から(いずれも税抜)のプライスタグが付きました。前述の通り今回は型番が800番台の為、5700XT初値と同等、という予測自体がそもそもズレていました……)

リファレンスの流通量に注目しつつ、出来れば導入したいRX6000系

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そんなわけで、今回はCPUとGPUそれぞれが発表された事を受けて、まずはGPU側から、個人的な見解的な内容ではありますがザックリまとめてみました。例によってリファレンスのクーラーがカッコいい的な部分はあるのですが、VEGA64、RX5700XTと2つのリファレンスボードを乗り継いだ経験から、Radeonに関してはリファレンスでもドライバレベルで色々と触ることが出来る製品の為、リファレンスの流通量が多いのであれば無理にベンダーモデルに手を伸ばさずとも、コストパフォーマンスを重視した形でアップグレードできそうな感じではあります。特に今回は5700XTと異なり、補助電源も8ピン2つが採用されている為、仮にOCなどを行う際にも、内部的な電源回路の質は別として「そもそも入力電力が足りない」という事態には陥りづらいと考えています。

低負荷時のファンストップ機能や、内排気型によるケース内温度の管理に関してはさらに確認や調整が必要になるかとは思いますが、下手にベンダーモデルでギラギラ光るようなものを高い価格で導入するくらいなら、おとなしくリファレンスで行きたいなぁと。

この編もCPU編で出てくるのですが、「次回のシステム更新では光り物は基本的に撤廃方向、ケース交換をするならガラスパネル無しの静音・高冷却仕様」と考えており、ケースを変えたならばそもそも光ろうが光らなかろうが見えやしない、という話にもなります。もうお腹いっぱいです、光り物。

さて、とりあえずGPU編はこんな感じで。次回はCPU編。こっちは多分アホほど長くなります。CPUだけポン付けすれば良いって話では無くなってくるので。

ではでは。

6000シリーズが発売開始になった後、5000シリーズがディスカウントになるのであれば、サブ用途のPCに先代を載せるのもアリかもしれません。「RX5500か5600あたりにしようかなー」と思っていた方の用途であれば、5700か同XTクラスなら余裕を持って動かせる状態になるだろうと思います。かくいう私も、RX6800を入れた後で5700XTはVR用のサブ機に持っていく予定です。

ケースは安定のFractalかなぁと悩みつつ、CoolerMasterのも気になる今日このごろ。最低でも360mmラジエターが1本は入らないとダメなんですが。