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四名死亡、一名生存。

Mar 23, 2019, 9:18 am

「遅刻だマッチョマン! プロテインで下痢したか?」
 ダミ声の眼帯男がジロリと睨む。
「ごめーん。私が最後?」
「これで全員だ。いいか! 今この時から俺のことはサーと呼べ。貴様ら五人は俺のチラシ広告に興味を持ち、俺の面接にパスした精鋭。チームだ。我々はアラスカに向かい、敵を叩く! 一刻を争う状況だ。先日も天から星が落ち、川の水がサーモンの血で赤く染まった。おい、アキアック。見せてやれ…… 彼も被害者だ」
 義足に視線が集まる。
「彼は犬橇のプロで現地に詳しい」
「今はスノーモービル。犬は面倒」
「黙ってろ。おいガリ勉、何をしている」
 全身タトゥーの男がチョークで床に線を引いている。
「もし悪魔なら…… こうして自分の周りに円を描けばいい」
「雪の上なら? アンタは死に、アタイはコレで殺す」
 丸刈り女が鼻で笑い、小銃を構えた。
「茶化すなG.I.ジェーン! チームをリスペクトしろ。ガリ勉は悪魔崇拝やSF、終末論に精通している。全員肝に銘じろ! 宇宙生物の正体は謎に包まれている。備えよ常に、だ」
「あの、サー」
 ソンブレロを被った髭男が挙手した。
「なんだパンチョ」
「ホセ・ルイスです。本当に米軍は知らんぷりで?」
「ホセかルイスか選べ。いいかパンチョ、今はその服装みたいに最悪な状況だ。我が国の兵は優秀だが、上がアホで話にならん。原住民の訴えを無視し、俺が何回電話してもヤク中の妄言扱いだ」
「ヤク中でしょ。アタイ見たよ? さっきその髭から買ってた」
「鎮痛剤だ! パンチョは闇医者で融通が利く。ナイフの達人でもある」
「ね、早く行こうよ!」
「急かすなマッチョマン! ……全員よく聞け。俺は約束を守る。だから俺に魂を売れ! 敵を根絶やしにしろ! それが俺との契約だ! 行くぞ!」
 映像が揺れ、逞しい腕が大型バンのドアハンドルに伸びた。

〜〜

「ニュースでは全部で五人と」
「ええ。テープには続きが」
 依頼主が上目遣いで俺の顔を窺う。

【続く】

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