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私立聖剛学園 騎士団(部)

 団長の両手剣術はやっぱりバケモノだ。次々と変化する構え。攻防一体を極めた連撃。真剣なら48回殺られてる。せめて1ポイント。雄牛の構えか。突き? 来る、盾で流して肘を――当たった!
「グッド! やるな灰原!」
「はい団長!」
 よし、次はぼくの――え?
「ぐうっ」
 投げ技……土の味。ヘルム越しに空が見える。もうこんな時間か。

「甘いねぇ。ゴーイチで勝者、東郷」
 桐山先輩の審判。何とか立って、剣礼。
「腕を上げたな」
「はい!」
 と言っても居残り特練10本、結果は1対49。

「さ。校門、閉まるよ。腹へったねぇ」

 東郷団長と桐山先輩、それにぼく。夕飯どきの商店街を甲冑姿で歩く。木剣とヘルムは包んで背負う。団則だ。

「灰原。国際試合の件、ご両親に相談してみたか」
「いえ」
 養父母です、と訂正するのは一年の時に諦めた。団長は優しい。そして強い。彼のドイツ流剣術は高校の団活レベルじゃない。けど人付き合いの線引きは上手くない。団長は「そうか」と言って前を向く。その目が何かを捉え、鋭くなった。視線の先。包丁を握った爺さんがキョドってる。

「誰か警察、警察!」
コンビニから飛び出してきた店員が叫んだ。

「団長、ぼくらが」
「警察の役目だ」
 団長がスマホを取り出す。なんで?
 爺さんが何やら喚く。通行人も騒ぎ出す。

 ベェェェェェ

 逃げ惑う人波を縫い、スクーターが向かってきた。運転手は剣士。剣士? 剣士だ。模造の片手剣。奇妙な甲冑。継ぎ目も彫金も無い。剣士が爺さんの横を駆け抜けた。ベキッと嫌な音。包丁がキン、と落ちる。

「い、いでぇぇ!」

 手首骨折、戦意喪失。

 ベェン! ベベェェェ

 ブレーキターンからアクセル。やる気だ。

「やめろ!」

 団長の喝に一瞬心臓が止まった。剣士も止まった。……降りた。こっちに来る。団長が包みを解く。
「え? 警察は」
「騎士道だねぇ」
 桐山先輩が神妙に頷く。なんで?

 団長は下段、愚者の構え。剣士はぼくと同じ剣盾スタイル。

 どっちを応援すべきだろう。


【続く】

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