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逆噴射小説大賞2024ピックアップ(後編)

逆噴射ピックアップ行為(前編)を、10月19日・・・募集期間中に書いたワシ。
(後編ピックアップも同じくらいの数、書くぞ~)
と思っていたら投稿作品数がエブリデイ・増えまくっていき、ヤベェ面白さだなコレって作品も増えまくって、ピックアップしきれない・・・20や30じゃ収まらない・・・40・・・いや50発くらいになりそう・・・無理・・・書ききれない・・・SORRY・・・あとなんやかんやあって書くのも遅くなって・・・GO-MEN・・・となったため、めちゃんこ絞ってます。

もともと絞り込んで50くらいあるわけで、さらに絞り込むにあたり、個人的な好き・面白い度合だけで線引きすることは困難と判断。
「なんでこの作品のスキの数が少ない(20以下)? 読まれてないの? あたしゃ好きだよ!」
という軸で選びました。

前編(こちら)が19発だったので、後編の採番は20から。


20.鬼獅子地獄絵巻

冒頭の一文、たった80文字くらいで物語の舞台と主要人物と敵と場面がバチっと伝わり、ワシは瞬時に脳内映像を生成することができた。そして冒頭から続いていく場面の臨場感がとにかくゴイスー。鬼獅子 vs 清明(with三匹の式神)の競り合いの解像度がとにかく高く、文もカチッとしていながらも読みやすく、その場にいるような迫力と緊張感にワシは手に汗握りまくった。不動の姿勢で呪文を唱え続ける清明。式神たちをちぎっては投げちぎっては投げ徐々に近づいてくる鬼獅子、どうなるの? 大丈夫ですよね? 清明VICTORYするんですよね? ・・・というところで800字が終わり、ワシは悶絶した。


21.押花の町

逆噴射ではあまりお見かけしない文体だけども、心地よく読めるし、何もかもが止まってしーーーんとした場の空気や、”私”の感情などがヒシヒシと伝わってくる。異常な場面と感傷のバランスがすごく好き。このあとどうなるんだろうか、このまま続きを、ゆっくり読んでみたいなぁと思った作品。ラストの一文も好き。


22.ごぼ天

タイトルと冒頭一文を読んだワシは(これはもしや、ソーイチロー先生にチョケてると言われるタイプの作品か・・・?)と身構えたが、読み進めるうちに・・・ごぼ天 一点突破、ごぼ天フィーリング全開、なんでここまでごぼ天なん・・・と、ごぼ天スパイラルに飲み込まれていき、ごぼ天が食べたくなり、最後のストレートな一文で妙にスッキリした気分になった。逆噴射的にとか難しいことを忘れて、見事ごぼ天に洗脳された作品。ごぼ天うどんが食べたい。


23.地から這い出るのは

800字のなかで、”月のやつら”に対する黒い感情・・・”俺”のなかに渦巻くものを徹底的に表現していて、その手法もワザマエ。見てろよデカイことをやってやる、と腹を括っている”俺”も、100%悪人かというとそうでもなく、どうしようもないんだろうな感もあり・・・。「いまは月がこうで、地がこうで、俺はこだ」みたいな設定や状況説明になりがちなところを、情緒的なアレコレを中心に丁寧に書いていて、ワシの胸にもいろいろな感情が残った。


24.まだらの樹氷

雪・・・森・・・兄弟・・・眠れる巨人・・・ファンタジー・・・。要素だけで大好物。800字でちゃんとファンタジーするのは難しいと思うんだけども、素敵にファンタジーしている。世界はこうで、ここはこうで、巨人ってのはこうで・・・といった説明くさくなりがちな文章がなく、いまその世界のなかで起きていることや、主人公が見ているものを、ごく自然(かつワザマエ)に表現しているので、ワシも一気に物語に没入できた。静かで冷たい映像と、主人公の感情が脳にジュワッと染みるように伝わってきて、後半の展開でさらに続きが読みたくなる・・・ゴイスーです。


25.奈落の鼓動

本作は、読んだ直後にコーフンしてX(Twitter)でアレした。スゴイ。まず文章が冒頭から最後までめちゃんこ安定していて読みやすく、欲しい情報も800字の制限のなかで絶妙に過不足なく与えてくれる。スゴイ。ワシの脳も一瞬で物語のなかに入っていき、ローマ帝国の拳奴みたいな感じかな・・・見世物的に戦わされるのは・・・戦闘経験のない女性?・・・主人公(記者という設定もイイ)の興味無さそう具合&ヒマです具合(を文章で上手く表現)がハンパねぇけど、これ800字でマイルドファイトを表現するのかな・・・・とワシは気になった・・・が。その直後、カチ合いで一転した展開にワシは「うおおおぉ?」となり、主人公と同じ気持ちでめっちゃ前のめりになった。胸がアツアツになる作品。緩急のつけ方が大好きで、地の文もセリフもかっちょいい。スゴイ。


26.セグレタの印

人間の秘密が邪魔者で、それを可視化するために仕組みが作られた、という点が面白かった。人の秘密までスコア化されてポイント付与される世界・・・そんな世界はどうなっていくのだろうか・・・と、ワシもワシなりにいろいろと突き詰めて物語の先を想像してみる楽しさがあり、本作はどうなっていくのか、続きを読んでみたいと思った。


27.穢土の敵を浄土で討つ百の計略

グエンさんのファンタジーが好物だもんで、待ってましたという一発。地下迷宮の最深部にいるはずの存在が地上の屋敷で寝ていて、迷宮に挑む冒険者たちには攻略本が流通しているという。ワシがもしこれらふたつのアイディアを思いついていたら、おそらく大興奮しながらふたつのアイディアを膨らませ、それを肉付けすることばかりに囚われてしまう。しかしグエンさんは、さらにもうひとつ、地下迷宮の最深部が最深部と呼べなくなってしまうような驚きの展開をブチ込んできて、ワシは脱の帽、ワクのワクでコーフンした。


28.鉱船労働ボットと博士の愛した軌道計算

俺たちは地獄に行くんだぞ、と誰かが叫んだ。
・・・この冒頭一文は今年の逆噴射で一番好きと言ってもいいくらい好き。一文で戦争モノ、ノルマンディー上陸GOGOGO直前のような香りを敏感に察知したワシは期待に胸をパツンパツンに膨らませて読み進め・・・お、やっぱそうだ! と嬉ションし・・・作者に仕組まれた労働八号という機械ならではの冷めた目線と人間兵の興奮状態の場面ミックスに唸り・・・相手が巨大竜というさらなる大玉要素ミックスに唸り・・・それらすべてが一体となって盛り上がっていく物語にコーフンし、希望を感じさせるラストやタイトルの広がりに満足de満足した。どういう物語になるのか、続きが読みたい。


29.ペーパーズ・デッドライン

終末SF的な冒頭で大ピンチレベル100、大パニックレベル100の展開になっていくのかな、というワシの想像は、中盤で(いい意味で)裏切られ、そこから、この作品の面白さやどうなるんだろどうするんだろ期待感がMEGA MAXになっていった。名前を書いてください、のルール提示により、ワシも当事者になった気持ちで自分ならどうするか、上手い解決策はないか、こんな問題が起きるのでは、と想像をするのがチョー楽しかった。ワンアイディアの提示で終わらず、読者ごとの「自分なら」がこの物語ではどうなっていくのか、どんな展開が待っているのか・・・を期待させる作りがスゴイ。


30.メリーさん

スリラーもホラーも、理不尽な生きるか死ぬかに巻き込まれた人たちのシチュエーションものは、「これこれこうで〜」みたいな地の文が多くない方が好みだし、リアリティのない会話台詞で説明臭くなるとツッコミが頭にいっぱい浮かんでウーンてなるんだけど、本作はそのあたりめちゃくちゃ上手いと感じた。あえて背景を語らず、冒頭のシーンに至るまでにあっただろう登場人物たちのやり取りを伏せての「あなた・・・メリーさん」からはじまり、(なんなんこの状況・・・なるほどもしや・・・)と、ワシに推理したいキモチを抱かせつつ、(いやでもワケわからん・・・)と、真実を教えてくださいキモチをワシに抱かせつつ、拍子抜けする着信メロディーのアンバランスでワシを揺さぶりつつ、2連チャンでドキッとさせつつ、で、面白さにハマってしまった。なお、K-22さんは、今年1発目の作品のラストでワシを「エッ!?」とさせたので、2発目の本作は身構えて読んでいたのに、結果またワシを「エッ!??」とさせた。やられた。


31.侍、営業

侍が現代に、という設定自体がエンタメ作品としてフレッシュフレッシュフレッシュで夏の扉が開いてワシをどこかに連れていってくれるかどうか、ではない。ワシが惹かれたのはこの侍の人物像だ。彼は、かつて己がいた時代の身分や考え方、あの頃の「当たり前」にとらわれず、コンビニという現代っ子でも高度で大変なバイトに挑み、失敗を繰り返しながらも、意欲を待ち、ひたむきに仕事に励んでいる。チャレンジを応援したくなる。どんな立ち回りを見せてくれるのか、ホンワカした顔で続きを読みたい。
※ピックアップをモタモタ書いているうちにスキが21になってた


32.関所破り二人

逆噴射小説大賞で、ワシがいちばん憧れている参加者が今年も書いてくれた。大塚さんは毎年、最終日に2連発するので油断しており、ワシはちょっとしたサプライズに小躍りし、読み、「ウフゥ〜」とキモいため息を吐きながら満足感に浸った。ワシは大塚さんの、作品のテーマ選びセンスも好きなので、改め婆(関所で女性の素性をねちっこくチェックをする)と入女のコンビ的な物語だったことに驚きと嬉しさを覚えた(その理由はここでは語るまい)。生を感じさせる女性を書く上手さは今年もBIN-BINに発揮されており、800字と言わずウッカリ80000字でエントリーしてきてくれたらいいのにな、なんて思ったりした。
※ピックアップをモタモタ書いているうちにスキが21になってた

以上です。
今年は本当にゴイスーな作品が多すぎなので、最終的に数パーセントまで絞られることが想像できず、どれが選考を通過していくのかという発表や審査員コメントが楽しみです。
それまでの間、読んでいなかった作品があればぜひ読んでみてください。


※なお今年のワシは不完全燃焼感もあり、いろいろ整えてまた来年も参戦できるようがんばります・・・!


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ジョン久作
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