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わたしの本棚

私が棚に並べるのは、古風な日本人からたまたま譲りうけた古書ばかりで、元の持ち主が亡くなった方も少なくない。要は私の本棚で一時期お預かりしているだけに過ぎない。そのような絶版ばかり…
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2023年11月の記事一覧

『最後の晩餐』久米宏 │ 集英社

自分が明日逝くとわかっていたならば、最後の晩餐は何にされるだろうか。 本書はニュースキャスターであった久米宏が文字通り、最後の晩餐をテーマに対談した一冊になる。若き葉月里緒奈がいるものの、対談相手に亡くなっている方が少なくないのも感慨深い。 時には対談者のご自宅で、時にはタキシード姿でレストランにて最後の晩餐トークをされている。

『男性における道徳』稲垣足穂 │ 中央公論社

稲垣足穂の道徳觀で目をひくのは、曖昧眼鏡すなわち縁なし眼鏡を認めぬ点ではないだろうか。仮にキリストが曖昧眼鏡を身につけていたならば、ここまでカトリックも拡がらなかったであろうと足穂は視ている。 一方、浅田次郎の『天切り松闇語り』にでてくる目細の安吉親分は曖昧眼鏡をしながらも、男性における道徳の塊のような藝が小説の随所にみられる。 ちなみに私は金子眼鏡でもとめた限りなく曖昧に近い縁あり眼鏡を愛用している。 まあ、男性における道徳という視点で考えれば、眼鏡の奥底に光る眼力が