見出し画像

ウナカメシネマに参加しました!

12月5日まで原画展をやらせて頂いていた東京中野にあるuna camera liveraでは、毎月、他ではなかなか観ることができないドキュメンタリー映画を中心に上映会を開催しています。

11月26日・27日の上映会では、絵本『きかせてあなたのきもち 子どもの権利ってしってる?』の原画展に合わせて子どもにまつわる映画を2つ選んで下さいました。どちらも、とても興味深く観賞しました。

「沙流川アイヌ・子どもの遊び」50分
北海道の平取町二風谷アイヌ資料館館長・萱野茂さんと地元の子どもたちが、暮らしの知恵や技を遊びの中で触れ、楽しみながら学んでいく姿を映したドキュメンタリー作品。映像は萱野さんが子どもたちと野山から、遊び道具となる木や蔓を取ってくるところからはじまります。火を使って貝殻にきれいに穴を開ける技術や、植物の特性を生かして遊んだり、縄を編むこと、狩りや魚取りという生活に欠かせない技術が、遊びの中で伝えられていきます。何よりも、萱野さんが夢中になって子どもたちと一緒になって遊び、子どもたちもそれに負けじと挑戦していきます。とても豊かな時間が流れました。

アイヌのカムイユーカラ(神話)より
「シマフクロウとサケ」30分
休憩を挟んでもう1本。古布絵作家の宇梶静江さんの絵本「シマフクロウとサケ」のDVD。絵本の内容がアイヌ語の語りと歌、そして美しい映像で編集されたもの。村の神であるシマフクロウと川に泳ぐ鮭の群のお話で、そこには人間は出てきません。アイヌの人々にとって生き物たちこそが神であり、命の源、主役です。後半には、絵本の作者である宇梶静江さんのインタビュー映像も観ることができました。宇梶静江さんは、北海道浦川町出身のアイヌで、20代で上京。和人と結婚し子育てをしながら、東京ウタリ会を立ち上げ、長きに渡りアイヌ民族の権利回復に尽力されてきました。また、俳優の宇梶剛士さんのお母さんでもあります。

アイヌはもともと文字をもたない口承文化の民族です。どちらの映像も、大きな自然のなかにいる生き物としての人間、それも小さな存在としての人間を映し出していました。萱野さんも宇梶さんも、アイヌ文化に誇りを持ち大切に継承されてきました。その歴史は、差別や分断のなかで生きることを強いられてきたアイヌの仲間たちを励まし、支えてきました。お二人が語る口調はとても優しく穏やかですが、「私はこう思う。あなたはどう思いますか?」と問われているように感じました。

私たちはいま、子どもたちと我を忘れて遊ぶことができているだろうか?自然があまりに暮らしと切り離されつつある今、アイヌ文化は自然の恵みや豊かさ、時の流れるスピードを緩めることを教えれています。

そんな余韻に浸りながら、何気なく開いた翌朝の東京新聞(2021年11月28日・朝刊)。そこには、宇梶静江さんの特集が二面に渡って掲載されていました。88歳の宇梶さん、長年暮らした東京を離れ、生まれた地である北海道に移住されるそうです。アイヌが「アイヌ力」を取り戻すために新たな拠点を作るのだと。最後の最後までアイヌとしての誇りを手放さず、頂いた命を燃やす姿が書かれていました。そして、傷ついた民族の歴史を大きな心をもって和人と共に再生していきましょうという力強いメッセージを投げ掛けてくれていました。

絵本の原画展で出会ったある人が、「いまは子どもが子どものままではいられない時代だ」とおっしゃっていました。子どもが子どもらしくいられない社会にしてしまったは私たち大人です。日本は、大人中心主義の社会なのです。経済発展を最優先にてきた結果、社会のスピードはどんどん増し、子どもの時間が大人の時間に飲み込まれてしまっているように思います。子どもの時間を取り戻し、大人たちもまたゆったりリラックスしていられる、自然の移ろいや季節を体いっぱいに味わい、喜び合える社会。大人の時間も子どもの時間も行ったりきたりできる、ともにある世界を諦めたくないなと思いました。遊びと自然。そこにも大切なヒントがありそうです。

絵本『きかせてあなたのきもち 子どもの権利ってしってる?』は、作った私たちが思う以上に、切実に必要とされているのしれない…。どこにいても、誰であろと、人間らしく生きる権利は、誰にも奪うことはできない。手放してはならない大切なもの。アイヌの人々の言葉や文化に多くのことを教えられました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?