掌編小説 ハニカム・サンドウィッチ


キャップにひげのおにいさんと、手ぬぐいあたまのおねえさんのパン屋があるのは、緑の公園を抜けた先。

木のふちの扉の風合い。そのとなりの大きめの窓もよく磨かれてる。
プランターや植木鉢には、ちいさい花や蕾、葉っぱに、みつばちやアゲハ蝶がとまる。
中に一歩入ると、厨房でかかってる音楽が隙間から流れてくる。かかってるのはポップスだったり、ロックだったり、ジャズだったり。

テーブルの上には、幾つものパンたち。
ちいさなケースに入ってんのは、定番のサンドウィッチ。

脇には、黒板に白チョークで、きょうのサンドウィッチメニュー。
ささっと描かれたイラストにも味がある。
きょうのは、犬のイラスト。
床にぺたんと寝そべってリラックスしてるとこ。

「なんにする?」


おねえさんの声にちょっとびっくり。

「きょうのサンドウィッチはね、くるみパンもあるよ。
幾つかの花のはちみつとか、クリームチーズとかも、合うし…
もうちょっと待てば、次のパンもそろそろかなぁ。
そうだ!きみきみ、ちょっと時間ある?」

「??? はい、きょうは午前中、あいてます」

「じゃあ、お店ン前で待ってて」

一旦、お店の外に出る。扉のよこに立って待つ。
建物に沿って、奥からおねえさんが戻って来た。
犬といっしょに。

「犬すき?」

「あ、はい」

「じゃあ、そこの公園で、このコの散歩をおねがい出来る?
今朝は、バタバタしてておさんぽ短めだったから」

犬はきょとんとしてる。

「は、はい」

「はい」と手渡されたのはキッチンタイマーとリード、あとお散歩グッズ。
20分のストップウォッチ機能が動いてる。

「じゃあね、いってらっしゃ〜い!
食べらんないもんとかある?大丈夫?
あ、そう。なら、おまかせでもいい?
じゃあ、サンドウィッチ作っとくよ〜」


元気よく走っていく犬につられて走る。
緑のなか、ふりかえる犬はしっぽをおおきく振っている。




ユーモア、ほっこり気分を分かちあえれば嬉しいです。スキ、サポートをいただければ励みになります。