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【ビールづくり】#技術 「酵母の働き」

「ビールを作るのは人ではなく、酵母である」というのは有名な話です。今回の記事は麦汁に添加された酵母がどのようにしてビールを作り出すのか説明します。

1. 誘導期 酵母添加後から15時間程度

酵母添加後に酵母はまず麦汁中の酸素、ミネラル、アミノ酸(窒素)を摂取し始めます。麦汁にミネラル、窒素分は十分に含まれているのですが酸素は含まれていないので麦汁冷却後、速やかに充分通気する必要があります。

また麦汁の温度も大切で、一般的に温度が高いほど酵母はよく増殖します。ただし、温度が高いとダイアセチルの前駆体であるアルファアセト乳酸が生成されるので、発酵後期には温度を上昇させることによってクリーンなビールを目指しましょう。

酵母の増殖は発酵にとって重要ですが、基本的には狙いの発酵温度より2-3℃低い麦汁に酵母を添加するのが良いです。これによって、酵母の増殖が過剰になりすぎず、酵母の健康が保たれ、健全な発酵を期待することができます。

この期間には目に見える酵母の動きはありませんが、新しい健康的な酵母が増えるために重要です。

酵母の添加量についてですが、多すぎると増殖が十分行われず、発酵終盤で酵母の状態が悪くなってしまいます。また、少なすぎる場合も増殖が過剰になり、変形した酵母が増えてしまし健全な発酵には望ましくない状況となります。

麦汁量と糖度、作りたい香りに見合った酵母量の添加を心がけるようにします。

2. 増殖期 4時間- 4日間

この期間に酵母は爆発的に増殖し糖分を代謝しながら二酸化炭素とアルコールを作っていきます。グルコース→マルトース→マルトトリオースの順に糖を代謝します。

3. 安定期 3-10日間

発酵終盤に差し掛ると酵母の増殖は落ち着き、安定期に入っていきます。この時点で酵母はほとんどの味わいや香りを作り出しています。

ただしビールとしてはまだダイアセチル(バター様)やアセトアルデヒド(リンゴ様)を含む若い状態です。硫黄系の香りの硫化水素も発酵のガスに乗ってビールから追い出されていきます。

そして、タンク内で元気に発酵し、役目を終えた酵母はタンクの下部へ落ち始めます。オフフレーバーが落ち着いたら2-4℃まで徐々に温度を下げていき、酵母の沈降を促進します。

この時点で大方酵母の役目は終わりで、酵母タンクに回収され次のビールに添加されるのを待ちます。

【お願い】
・ビール作りの日本語情報を増やすための取り組みをしています。改善点があれば教えてください。
・内容には気をつけておりますが、実際に工場で試される場合は法律の部分も含め十分注意してください。
・残念ながら日本国内では許可のない施設での酒類の製造は法律で禁止されております。記事は仕事でビールを作っている方向けとなっております。

参考文献


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