ここからいなくなってしまった君へ
はじめて人のライブに嫉妬したのは君のバンドだった。
当時バンドがなくなってしまったばかりで落ち込んでいた自分にとっては追い打ちをかける様な出来事だった。
そんなことに気づきもしない君は、無邪気に打ち上げに誘ってくれたっけ。
大人気なくも、その誘いは断ってしまったけれど。
その後、そのバンドは解散してしまったものの、家庭を持って仕事も忙しくなった君は、かつての貧乏バンドマンではなくなっていた。
ちゃんとした夫であり父であり経営者だった。
これからも、たまには君の店に顔を出して、酒を飲むんだろうな、と思っていた。
悪いニュースは突然やってくる。
それも夜もふけてそろそろ寝ようか、という時だったりする。
悪い冗談や勘違いが生んだ誤報であればいいのだけれど。
何度もそう思っても、どうやらそれは本当の様で。
じたばたしても事実は事実だった。
今週末、君に会いに行くよ。
どうやら君の奥さんが、お別れの会にはロックTシャツを着てきて欲しいとか。
本人もそのほうが喜ぶから、と。
なるほど、それが君なりのフォーマルウェアってわけだな。
OKOK、とびきりハデなTシャツを選んで、行くとしよう。
ジャケットは着ていくけど、黒のスリムにDr.マーチンかな。
それなら君も、笑って喜んでくれるだろう。
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