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【調剤報酬】令和6年度改定に向けた振り返り

調剤業務を見直し対人業務と対物業務を整理


令和6年度調剤報酬改定に向けた議論がいよいよ始まります。「患者のための薬局ビジョン」の達成に向けて最後の改定となりますが、「対物から対人」業務への移行をテーマに議論が進んでいくことはいう間でもありません。今回は過去に行われた令和4年度改定を振り返り、改定に向けた方向性を再確認したいと思います。

「調剤料」を「対物」と「対人」業務に分けて評価

大きな変化として「調剤料」の見直しが行われました。薬機法の新設に向けた厚生科学審議会では「調剤を行うだけで業が成り立つ」と厳しい指摘を受けましたが、その背景に調剤技術料の5割を占める「調剤料」の存在があります。

令和4年度改定では「調剤業務」を細分化し「対物業務」と「対人業務」に分け、薬剤の調製に係る業務を「薬剤調製料」、薬学的分析や監査・薬剤服用歴の記載といった業務を「調剤管理料」として報酬を新設しました。また「調剤料」の加算であった「一包化加算」は薬学的分析に基づく服薬支援、そして必要な指導を行う業務として「外来服薬支援料2」として対人業務の評価として新設しています。

このような見直しにより、「対物的」と指摘された調剤報酬は、対人業務のカテゴリーである「薬学管理料」の比率が多くなり、対物業務からの脱却をしたと言われています。

2023年7月26日 中央社会保険医療協議会 「調剤その①」

しかしながら、現実的な問題として薬局薬剤師業務が大きな転換をしたかというと「調剤管理料」に示す業務が従来の調剤料と大きく変わらないことから、「報酬カテゴリーの移動であり業務自体が改善されたとは言えない」という指摘を既に受けています。

地域支援体制加算を見直し薬局機能の見える化へ

「2025年までに全ての薬局をかかりつけ薬局へ」このように「患者のための薬局ビジョン」には記載されています。ここで示す「かかりつけ薬局」の定義は未だ明らかになっていませんが、調剤報酬上で考えるならば「地域支援体制加算」が該当するのではないでしょうか。
令和4年度改定ではこれまで調剤基本料1以外の薬局に対して実績要件を8項目(9項目中)求める厳しい要件が設定されていましたが、新たに「地域支援体制加算3」を新設することで、すべての薬局に対して手が届く報酬構造へと転換しています。
調剤基本料1の薬局には更なる実績を達成した薬局が算定できる「地域支援体制加算2」を新設し、従来の報酬と併せて全部で4区分の報酬となりました。

報酬の見直しにより基本料2以下の薬局にとって手の届きやすい報酬になったほか、これまで潜在化していた対人業務に取り組む薬局が顕在化し「薬局機能の見える化」につながったと言えます。

調剤基本料2以下は集中率が高いことによる減算を受けている薬局群です(基本料3ハを除く)。今回の改定により、集中率の有無にかかわらず対人業務を行う薬局とそうでない薬局を分別することが出来るようになったのではないでしょうか。

新設された「調剤管理料」を考える

複数の医療機関を受診し6種類以上の内服薬が処方されている患者に対する薬学的管理の評価として「調剤管理加算」が新設されました。新設に至った背景として改定を議論した中医協では「服用薬数が多くなるほど薬学的分析・指導に費やす時間が多くなる」ということが挙げられ、多剤服用している患者に対する薬剤服用歴管理指導料(当時)の評価が提案をされていました。

2021年10月22日 中央社会保険医療協議会 「調剤その②」

議論では薬剤師会を除く全ての委員から評価の新設に対し「反対」といった声が相次いだわけですが、改定を見てみると「調剤管理加算」として同様の報酬が新設されています。

「調剤管理加算」は複数の医療機関から6種類以上の内服薬が処方されている患者に対し服薬情報の一元的な把握、必要な薬学的管理を行った場合に調剤管理料の加算として算定とされています。

この報酬は、多剤服用する患者に対する労務の手間を評価する報酬のように考えられがちですが、算定対象を改めてみてみると「複数の医療機関から6種類以上の内服薬が処方されている患者」となっています。

感の良い方はお気づきかもしれませんが、減薬提案に対する報酬「服用薬剤調整支援料2」の対象となる患者に該当する報酬です。この報酬の連続性をどう発展されていくのかが考えていく必要があります。

新しい「評価」の形

令和4年改定時は「新型コロナウイルス感染症」の蔓延期でした。また昨今は自然災害が多く発生しています。そのような有事に対して対応できる薬局に対する評価として「連携強化加算」が新設されました。
施設基準については3月31日まで不明確であった、結果としてコロナ対応が中心だったと色々と物議をかもした報酬ですが、注目すべきポイントは他にあります。

それが、「地域支援体制加算を算定する薬局」という施設基準です。コロナ対応はすべての薬局が対応していたと言っても過言ではない中、評価の対象は「限定的」でした。要件となる地域支援体制加算は対人業務を行う薬局に対する評価とも置き換えられます。すべての薬局に対する評価ではなく、「対人業務を行う薬局に対する評価」と限定的にしたところに今後の報酬設計の方向性が見えてきたように感じます。

メリハリをつけた報酬と言えますが、その基準に「対人業務」が要件になっているということです。同様の「○○をしている薬局」といった対人業務の実績を施設基準とする報酬は「調剤管理加算」「調剤後薬剤管理指導加算」「服用薬剤調整支援料2」(報酬が分かれる)とあります。
これまでにない、新しい「評価」のつけ方と言えるのではないでしょうか。

令和6年度調剤報酬改定に向けて

現時点で個々の報酬がどう変わっていくのか、またどのような報酬が新設されるのかを判断することは難しいです。調剤報酬改定に向けた議論はこれから進んでいきますが、保険医療は社会保障費という「財源」があって成立します。

皆さんの会社でも「予算」を決めて「各部門への割振」をし「何をどうするのか」といった計画を立てると思います。

これは国も同じです。来年度に向けた予算は12月頃に議論がされます。医療については財務大臣と厚生労働大臣による大臣折衝が行われ「改定率」が決定します。改定率とは現在の医療費に対して「〇%増減」という予算を決めることです。

この改定率によっ医療費の予算が決まり、厚労省でどういった報酬を増減していくのかという細かな調整に入っていきます。

昨今の改定を見ていくと、調剤基本料は「基本料1」を算定する薬局を減少させる方針が進められています。前回改定では300店舗以上を有する企業を対象にした「基本料3ハ」の新設が該当します。対物的な報酬として指摘された「調剤料」は構造的な見直しが行われましたが、「薬剤調製料+調剤管理料」として見てみると、結果として点数の減額が行われています。

一方で、対人業務に対する評価である「地域支援体制加算」は増額+算定薬局数の増加、服薬指導に対する「服薬管理指導料」は増額となっています。

「対物的な報酬」は引き下げられ、「対人的な業務」には評価がつく改定が行われたと言えるのではないでしょうか。

では令和6年度はどうなるのか。。。国のビジョン、過去の報酬改定の動きなどを見ていくと、やるべきことは既に見えていると言えるのではないでしょうか。

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