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リフィル処方箋を理解していますか??

2022年度診療報酬改定でいよいよ「リフィル処方箋」が解禁になりそうです。欧米ですでに取り組まれているリフィル処方箋という仕組みを聞いたことはある方は非常に多いと思いますが、「繰り返し使える処方箋」程度にしか理解していない方がほとんどではないでしょうか。
日本版「リフィル処方箋」がどのような仕組みになるのかは、これからの発表待ちですが、私がイギリス視察等を通して学んできた制度について、そして課題についてまとめてみたいと思います。

分割調剤とリフィル制度とは

日本には従来分割処方という制度があります。それに対して今回は国策として「リフィル制度」を導入しようという訳ですが、果たしてその違いは何なのでしょうか。

厚生労働省では、このような説明をしていますが、これだけで従来の制度と、これから取り組むリフィルの違いを理解できますでしょうか。

色々なサイトでも説明されていますが、従来「リフィル」とは「詰め替え」や「補充」を意味すると言われています。海外では瓶による調剤が行われており、そこに新しい医薬品を補充することからこのように言われたのかと思います。

欧州では「リピート処方箋」「リピータブル処方箋」とも呼ばれていますが、以下のように非常に似た仕組みとなっています。

では日本の分割調剤という仕組みを見てみると

このようになっているわけですね。微妙な差はありますが、大きな違いとして「分割調剤」は規定により、
①長期保存が困難
②後発医薬品の試用
③服薬管理が難しい場合(医師の指示)

とかなり限定的な要件なのに対し、リフィル処方箋は

①症状が安定している慢性疾患

と制約が少ないことが挙げられます。大したことのように思いませんが、意外とここ重要なポイントです。

繰り返し使える処方箋

リフィル処方箋というくらいですから、処方箋に関するポイントも存在します。単にリフィル処方箋と言っても問題点が実は多くあります。
現状の分割調剤の仕組みはご存じだと思いますが、表紙となる用紙の他、分割回数に合わせてた処方箋が必要です。

正直これって面倒ですよね。この様式が医療機関にとって「手間がかかる」「面倒である」要因の一つとしてあげられています。今回のリフィル処方箋では、この処方箋自体を「繰り返し使える処方箋」として運用を使用という話な訳です。

ただし、現在の日本の制度では調剤に当たり原本が必要な他、処方箋原本を保管することが求められています。「繰り返し使える処方箋」となれば、1回目、2回目、3回目と当然ながら同じ処方箋であり、調剤のたびに患者に戻す事になります。よって最後の薬局以外は処方箋を保管することが出来ないのですよね。

※海外では電子処方箋の運用がされているところもあるので、紙ベース管理というのが、アナログなゆえの課題です。

処方箋を預り、3回とも自分の薬局へ・・・という考えもありますが、患者が薬局を自由に選べることが本来求められる仕組みです。色々と「処方箋を預かる」という話を聞きますが、現行制度では良い方法とは言えません。

2つ目のポイントとして処方箋についてあげました。

処方権は誰にある?

リフィル処方箋を受けた患者は結局「90日分の薬をもらえるでしょ」という考えがあります。だから変わらない。確かにそうかもしれません。でもそのプロセスには色々と厄介な仕組みがあります。すでに上がっている課題として「無診察調剤」になるのではないか?という指摘があります。

詳しくは記事を読んでいただければと思いますが、ここが一番のポイントなのですね。

分割調剤とリフィル調剤のきわめて重要な問題は、

分割調剤・・・90日という処方に対して3分割で投薬する

リフィル処方・・・30日という処方を3回出す

こいつめんどくさいなって思っているかもしれませんが、この問題非常に重要なのです。

どちらも2回目の投薬の際にはカウンセリングを行い、問題がなければ投薬をするわけですが、元々90日の処方に対する2回目を出すことと、30日という処方が切れ、次の30日分の投薬を決定するということでは、発生する権利が異なるということです。

何がいいたいのかというと、リフィル調剤の2回目の処方は、処方箋こそ医師が発行していますが、それを生かすかどうかの判断は薬剤師に委ねられるということです。

そのうえで、調剤が行われるわけですが、2回目の調剤に対する処方を医師は診察なく行っているので、これが「無診察調剤」にあたるということですね。

海外ではどうなのかというと、そもそもの制度や価値観が違うので、このように「どちらに処方権があるのか?」という権利争いな議論がたぶんなく、医師の負担軽減、医療費の抑制などの考えから自然的に運用がされていると認識しています。(欧米諸国には薬剤師の処方権が認められています)

私が視察を繰り返したイギリスでは医療費抑制に対する国民の強い意識があります。また医療制度の違いから、医師はタスクシフトを進め、自らは見るべき重要患者に力を注力する政策がとられています。

要は看護師、薬剤師と多職種することで患者をトリアージし、より広い医療を提供しているということです。
情報に関してはPHR(Personal Health Record)はもちろんEHR(Electronic Medical Record)によって医療従事者間で共有される仕組みが存在します。

日本式リフィルの目指す方向性とは

日本の目指すリフィル処方箋の方向性はまだはっきりとは示されてないと思います。

「リフィル処方箋」によって医療費を抑制する。

こういうイメージが皆さんも強いのではないでしょうか。
その「リフィル」が指す言葉が「処方箋様式の変更による繰り返し使える処方箋」なのか、「慢性疾患を対象とした分割調剤の要件拡大」なのか、それがハッキリとはまだわかりません。

欧米諸国を見習った「リフィル処方」という言葉の導入が先だってますが、世界には「分割調剤」という仕組みがないからリフィルがあります。日本には「リフィル」はないが「分割調剤」という日本式のリフィル処方に似た仕組みが存在しています。

いずれにせよ、医薬協同が無ければ進まない

すこし話をこねくりまわしましたが、諸外国におけるリフィル処方箋という仕組みには少なからず、薬剤師による「処方決定判断」が重要になります。ということは、そこに対する「責任」もついてきます。仮にこれを簡易処方権とするならば、医師会からの批判は避けられないです。

リフィルという仕組みが、分割調剤のリメイク版になるのであれば、処方の判断は医師にあり分割調剤の現段階での普及状況を見ると仕組み先行型であることは言うまでもありません。(普及策は色々と考えられますが)

本来進めるべき本質は、タスクシフトすることにおける医療負担軽減と医療費の抑制にあるのではないでしょうか。

日本の「フリーアクセス」世界に誇る制度である反面、出来高報酬支払制度(診療報酬)は、諸外国から見ると非常にコストパフォーマンスの悪い仕組みと言えます。

まとめ

結局のところ、リフィル処方箋を通してどういう方向性に進むべきなのかは現時点では判断が出来ません。ただし、ただ「処方箋が繰り返し使える」だけではないことはご理解いただけたのではないでしょうか。
(あくまでも現状の諸外国における制度では。。。ですが)

医療費抑制という明確な指針を見る限り、受診回数の抑制が主な目的のように見えます。
しかしながら、諸外国に見る制度は、医薬協同による地域医療のポイントであり、医療費の適正給付の重要な施策です。

日本の医療制度は、患者が増えれば収入が上がり、健康になれば収入が下がるという大きなパラドックスと抱えています。

医療機関がリフィル処方箋を選択することによって得られるメリット、それは施設基準等々の人参作戦ではなく、アウトカム評価などの違う形でのメリットを示していかなければ、医薬協同どころか、長きにわたる医薬紛争の終焉が見えないのではないでしょうか。

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