TRPGガイダンス:シナリオの作り方(2)

 シナリオ。

 それはセッションの運営において必要不可欠なものである。

 もちろん、PCの行動は自由であるべきだ(注1)。

 だが、何をしてもいいよ、と荒野に突然投げ出されても、人間出来ることはほとんどない。冒険者なら「じゃあ依頼が来るまで待っているよ」と言うだろう。

 つまり、シナリオとは“サンドボックス”に相当するものである。砂場が提供されて、その中でプレイヤーは自由に遊ぶことができるのだ。砂をどう使うか、砂場の範囲で何を作るかはプレイヤーによるわけだが、どこまでが砂場なのか、何が砂なのかは、GMが定めたほうが、人間の想像力はより加速する。

 これがシナリオの必要性だ。

 本稿では、具体的にどのような発想によってシナリオを作成すべきか解説する。

 なお、あなたのシナリオがここで解説されているロジックと矛盾する場合は、あなたが正しい。これはあくまでひとつの“正解”に過ぎず、あなたの“正解”と矛盾したら、あなたのものが正しいのだ。あなたのやりたいように遊ぶのだ。TRPGはあなたのゲームである。

■シナリオの構造

 多くのシナリオは(注2)オープニング、ミドル、クライマックス、エンディングで構成されている。

 ややこしいと思われるだろうか?

 そんなことはない。

 要するに、オープニングは「導入」である。とにかく物語は始まらねばならない。そして、ミドルフェイズで様々なことが起き、クライマックスでドラゴンなりメガコーポなりとの殴り合いが発生し、敵を倒して、エンディングに至る。

 それだけである。

 オープニングとエンディングのないTRPGのシナリオはほぼ存在しない(注3)。始まって、終わるのである。

 あとは、エンディングに至るために何らかの脅威が存在し、その脅威を物理的に排除する(=クライマックス)までの過程がミドルだ、ということさえ把握しておけばよい。

 それでは、個々のシーンがどのようであるべきかについて解説しよう。

●オープニングフェイズ

 オープニングには大きく分けて4種類がある。

 ひとつは、それぞれのPCごとに個別導入を行なう方法である。

 個々に用意されたオープニングはオーダーメイド感が高く、それぞれのプレイヤーがたっぷりと自分の演出をすることができる――自分のキャラクターのロールプレイに専念できるチャンスが、発話量に拘わらず獲得できるのは重要だ。他のキャラクターを理解する助けにもなる。

 次に、すべてのPCが同じ導入を受ける方法だ。

 冒険者や未登録デイブレイカーとしてミッションを受けてそれを解決するようなシナリオにはこれが適しているだろう。この場合でも、ハンドアウトは用意したほうがスムーズである。自分たちの状態を把握する助けになるからだ。

 また、一部のPCにだけ個別の導入を設定し、他のPCの導入はまとめてしまう方法もある。

 こうすることで、スポットライトが当たるPCと、そうでないPCのコントラストを立てることができる。この方法論は、あまりコンベンションなどには適さない。カジュアルで、距離感が分かっている場合に適する。

 逆に、キャンペーンなどで一々おざなりな個別導入を全員に設けるよりは、焦点を個人に絞ったほうが、それぞれのPCが演出しやすいことも多い。

 最後に、一切ハンドアウトを用意せず、それぞれのPCにシーンを設定して、何をやっているか聞き、プレイヤーのアイデアを拾ってそのアイデアを元にアドリブでシナリオ本編への導入を即興で作る、という手法である。

 これは上手くはまるとプレイヤーに対して世界のリアリティを積み上げ、自分の物語であることを実感させやすいが、失敗すると立て直しが難しい。GMは、この手法を採択する場合、ノッてこなかった場合はすぐさま他の方法に慌てず移行できるようマインドセットを行なうこと。

●オープニングの目的


 オープニングには、大きくわけて4つの目的がある。


①PCの演出
 それぞれのPCの演出である。自分のキャラクターをロールプレイし表現することは、程度の差こそあれ、多くのプレイヤーの好むところである。その時間をきちんと与えることは大事だ。

 その上で、初心者であったりロールプレイが苦手なプレイヤーに対して、GMは「~~と言った、どうする?」「~~と、なった。さて、どうする?」と問いかける形にするとよい。

②モチベーションの提示
 このシナリオにおいて、それぞれのPCが解決するべき物語を提示する。
 姫を奪回すべく立ちあがった騎士ならば「姫を奪回せねばならぬ」という話を、スラムから脱出するために強盗を行なうサイバーパンクなら「金が必要なのだ」という話をするのだ。


③NPCの顔見せ
 主要なNPCはオープニングで顔見せを行なうべきである。後になってから顔を出すNPCがいてもいいが、その場合でも存在の伏線に当たるものは、オープニングで提示しておきたい。たとえば、オープニングで謎の人物が登場し、ミドルでその正体がわかる、という具合である。


④オープニングイメージ
 オープニングのシーンは、物語そのもののテーマを暗示するものであることが望ましい。家族がテーマなら家から始まるべきであり、戦場の傷なら戦場から始まるべきである。そして、ここで提示されたイメージは、エンディングで変化するべきなのだ。

●ミドルフェイズ

 ミドルフェイズ(注5)とは、セッションのほとんどすべてである。

 極端なことを言えば、クライマックスにたどり着きさえすればミドルフェイズでは何をやってもいい。

 謎解きをやってもいいし、パズルをやってもよい。NPCとのロールプレイだけで解決される交渉があってもよいし、苛烈な戦闘でもよい。もし許されるなら、突然コンピューターゲームを始めてもいいし、ガンダムのプラモデルを実際に作り始めたって構わない(注4)のである。

 基本的に意識するべきことは、『クライマックスフェイズ』にたどりつく一点である。

 要するに、BOSSを設定し、そのBOSSと戦うところまでたどりつければよいのだ、と考えるとよい。地下迷宮の奥にいる、でも、居場所を探り出す、でも、謎が解けたその時BOSSが襲撃してくる、でもよい。

 それさえ決まっていれば、実際のセッションでアドリブが必要になったとしても、いくらでも修正をかけることができるのだ。

▼チュートリアルとしての戦闘

 可能であれば(注6)、なるべく早い段階で戦闘を挟んでおくとよい。

 これにはいくつかの理由がある。

 ひとつは、戦闘はプレイヤーのアドレナリンを分泌させ、あなたのシナリオの筋書きのあやふやな部分を覆い隠してくれるからである。人間、目の前のゴブリンの脳天を破壊している時にはあまり細かいことを考えない。

 マジである。

 一端テンションを上げてしまったほうがハンドリングは楽なのだ。

 いまひとつは、これはもうちょっと真面目な話だが、戦闘ルールを一度チュートリアルしておくことで、クライマックスでの戦闘でオタついてPCが死ぬリスクを回避出来るからである。

 一度このゲームにおけるダメージバランス、判定の流れ、PCそれぞれに出来ること出来ないことを把握することで、クライマックスの戦闘でのフェアネスを高めることができるし、ルール把握にオタついてドラマに乗り切れないという現象を軽減できる。

 最後に、他のPCが何を出来るか理解し、どのような連携をこのパーティで行なうことができるか把握することで、その後のゲームを円滑に進めることができる。

 他のPCを理解するのはドラマ的にも有益で、戦闘を通してPCの視点から「こういうやつなのだ」と理解することは、個別導入で相互にコネのないPC同士が仲良くなる接点としても有効だ。

 以上の点から、チュートリアルの戦闘(注7)を挟んでおくのは有効であると結論づけられる。

▼ミッドポイントを意識する

 物語としての完成度を求める場合、ミドルフェイズの中間点では、PCたちの目的が一旦達成されたかに見え、次に大きな転機が訪れ(多くは敵の陰謀が成功するなどして)、PCたちが失墜する流れになるとよい。

 そこからPCたちが再び再起し、クライマックスで逆襲する、という流れにすると、カタルシスが得やすくなる。

 必ずそうしなければならない、というわけではないし、PCたちを理不尽に負けさせろ、という話でもないが、構造として頭に入れておくとドラマチックにはなるだろう。

▼選択肢

 簡単なものでよいので、ミドルフェイズにはいくつか(1~3個程度)の選択肢があるとよい。これは、険しいが短い道と安全だが長い道、酒場の親父にまず話を聞くか盗賊ギルドが先か、のような単純なものでよい。

 重要なことは、プレイヤーが選択した結果物語がインタラクティブに変化した、という感触を与えることである。結果としての大筋は変わらなくてもよい(もちろん、変わってもよい)。

 もっとも避けなければならないのは、「どうせ何をやってもストーリーは変わらない、GMが満足したらクライマックスになるんだろ」「後何シーンやりゃあいいのかね」というモードになられることである。そうではない。あくまで物語をドライブしているのはプレイヤーなのだ、と感じさせるようにするべきだ。

●クライマックスフェイズ

 クライマックスは基本的に戦闘であることが望ましい。

 これは、TRPGの大きな楽しみが、PCの戦闘データを作成することであり、その活躍を従前に行なうことだからである。

 したがって、プレイヤーは暗黙のうちに戦闘で解決することを想像しているはずだ。そうでないシナリオ、たとえば戦闘がなかったり、交渉で解決するようなクライマックスも楽しいものだが、そうした場合はプリプレイであらかじめプレイヤーに解説しておくことを強く推奨する。

 戦闘で解決することを想定していないシステムの場合は、何かヤマに大きなアクションを持ってくるとよい。小さな山ほどもあるクトゥルフの落とし子から逃げるもよし、怒り狂った弁護士の追及から逃れるもよし、何かひとつ、その事件を象徴する“脅威”をPCのアクションによって乗り切れると、シナリオは落としやすくなる。

●エンディング

 エンディングは物語の結末である。基本的には、まず物語そのもののオチ、どうなったか、という演出を行ない、尺があるなら、それぞれのPCごとにシーンを設定し、やりたいことを演出させるとよいだろう。

 基本的に、セッションが上手く行っていれば、エンディングでやりたいことは定まっているはずである。もしプレイヤー側にないのなら、GMが水を向けるとよいだろう。

 エンディングは、オープニングと対になっているとクールに見える。オープニングで提示されたイメージが、エンディングで変化していることを示すと、物語全体に満足感があるように終われるだろう。

 たとえば、孤独に食事をしていたヒーローが、エンディングでは仲間と食事をしていたり、PCがかつて戦友を失った荒れ果てた丘に花が咲いていたりするのである。

 変化はポジティブであることが望ましい。PCたちの行動によって、世界(あるいはPCたちの内面)はよい方向に変わったのだ、というのを示すのである。

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▼マルチエンディング

 TRPGのシナリオは必ずコンシューマ用語風にいえば“マルチエンディング”になる。

 あなたと私がプレイしている限り、どんな些細なものであっても必ず(注8)、TRPGのエンディングはシナリオに書かれているそのままにはならない。プレイヤーのロールプレイにGMがリアクションするという手順が加わるからである。

 だが、そのエンディングをあなたがジャッジするのは慎重であるべきだ。コンシューマゲームのように“トゥルーエンド”や“バッドエンド”という言葉を使うのは楽しいものだし、“トゥルーエンドを目指して複数回プレイする”という遊び方ももちろんある。

 しかし、「全力を尽くしたのにフラグが立たないとトゥルーエンドには行けないのか?」「このエンディングしかないはずなのに、なぜジャッジされなければならないのか?」という不満を招くリスクもある。

 特に“トゥルー”“グッド”“バッド”という評価は、ともすると「その日の物語は真実だったのか否か」「プレイヤーのプレイは良かったのか悪かったのか」という意図にもとれてしまう(注9)。

 エンディングが変化するのはいい。そして、プレイヤーの行動によってそのエンディングの結果が採点されることもあるだろう(たとえば、ミッション達成の経験点などで)。

 だが、あなたは「あなたがたどりついてほしいエンド」にプレイヤーがたどりつけるようにシナリオを書くべきだ。

 そうではなく、ダンジョン探索を時間制限ありで行い、一定の数の宝物を集められたかどうかで分岐するようなトーナメントシナリオ(注10)のようなものであるのなら、それはプリプレイで断りをいれておくとよいだろう。

 つまりこうだ。

 邪神の生贄にされているヒロインが選択肢によって救えたり救えなかったりするシナリオはもちろんあってもよい。多くのプレイヤーにとって救えたルートは「グッドエンド」であり、そうでないルートは「バッドエンド」であろう。

 しかし、救えるルートが「トゥルー」だとシナリオ作者が言ってしまえば、たとえば「救えなかったが全員が全力を尽くし感動したセッション」は「偽」なのか? という問いが生まれてしまう。

 これが問題の1である。

 第二に、ヒロインが救えるかどうかの条件は、あなたの中で正解を設けておくべきで、それはフェアな形で提示されるべきだ、ということだ。

 TRPGはコンシューマRPGではない。

 「最初のクラス集会の後に屋上に行ったらもう絶対攻略できないヒロイン」「最後の選択肢の後に5分待機しないと出現しない別の選択肢」「ノーヒントで屋敷の壁を3回ノックしないと出現しない隠し扉」「宝の地図をくれる老人を撲殺し妻子と離縁し会社をやめる」等々を、あなたが想定するベストなエンディングの条件にすべきではない。

 必ず達成できるようにしろ、という話ではない。

 だが、TRPGには原則的に周回プレイはない(注11)し、参照すべき攻略サイトもない。

 一度目の周回で普通気付かないようなヒントがなければ“トゥルー”“グッド”エンドにたどり着けないようなシナリオは、人を選ぶことは間違いない。

 これは書き口の問題だが、覚えておくとよいだろう。

▼エンディングのポジティブさ

 そのTRPGが皮肉やブラックジョークを目的としていない限り(注12)、「シナリオに参加しないのが最善手だった」というシナリオは作るべきではない。

 たとえば、「ヒロインはそのままなら生贄にされても無事に帰ってきたが、PCが助けに行ったせいで神の怒りを買ってヒロインは死んだ。グッドエンドの条件は依頼を受けないことでした」というシナリオは、諧謔としては成立するが、フェアネスとしては最悪である。

 あなたの友人たちはあなたのシナリオに参加するために来ているのだから、シナリオそのものにPCが参加することが物語をよりポジティブな方向に傾けるよう意識すべきだ。

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■シナリオを発想する

 では、シナリオそのものの着想はどこから得ればよいのだろうか。

 もちろん、あなたに今このシナリオがやりたい! こういう物語がある! というのであれば、この項は読み飛ばしてよい。また、プレイヤーたちが「次はこういうシナリオがやりたい」「今度はこうなると良いな」と言っているなら、それを取り入れて遊ぶとよい。言うまでも無いことだ。

 だが、シナリオのアイデアが常にあるわけではないだろう。そうした場合に着想を得るには、いくつかの手段がある。

▼PCの設定を見る
 キャンペーンの場合、有効な手法である。PCにはライフパスを初めとして、様々な設定が存在する。PCの家族やPCの過去などを題材にしてシナリオを作成するのである。

▼NPCを題材にする
 ルールブックに掲載されているパーソナリティーズは、それ自体がシナリオフックである。彼らが起こす事件を題材にすることで、問題を解決するのである。

▼既存のドラマを参考にする
 盗作せよ、という意味ではない。たとえば、配信サイトの映画のあらすじを二つ組み合わせる、まったく別のジャンル(恋愛映画など)のネタを持ってくるなどすることで、あなただけの物語を発想するのである。

▼既存のTRPGシナリオから持ってくる
 地下迷宮を古代遺跡に、悪の魔導帝国を悪のメガコーポに、クトゥルフの邪神を九層地獄の大魔王に置き換えても意外となんとかなる。


▼ルールブックを読み直す
 ルールブックはシナリオフックの宝庫である。みんな覚えていると思っているかもしれないが、割とみんな忘れている。そのまま持ってきてもいいし、あなたなりのアイデアを加えていい。
 あとで発表されたサプリメントと食い違うことは気にしなくていい。その時はその矛盾を修正するシナリオをやるか、すぱっと無視してあなたの世界が正しい、としてしまってよいのだ。

▼リラックスする
 突然何を言い出すのか、と思われるかもしれないが、物語とはあなたがこれまで蓄積してきたドラマや人生が結合して産まれるものである。材料はすでにあなたの頭の中にある。浮かばない時は、散歩や風呂、食事などで空気を切り替えてしまうとよい。他人に相談するのもよいだろう。

 よいセッションを!!

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■余談

 ところで、「シナリオの書き方(1)」とえらく内容が重複しているではないか、と気が付いたあなたは鋭い。

 そう、この記事は『フルメタル・パニック! TRPG』が発売されてから2年ほどしてもう一度初心者向けに書いたものなのである。したがって、内容が重複することについてはあきらめた。

 そしてnoteでの再録時に、この記事があることを忘れて前の記事をアップロードしてしまったのである。結合すれば良かったのだが、ご寛恕いただければ幸いである。

 というわけで、おまけとして、「シナリオの書き方(1)」でわざわざ書きおろしたサンプルシナリオの記事を、趣旨も内容も同じようなものなのにもう一度載せる。

 人の愚かしさとは、このようなものである。

 が、その繰り返しが人をニュータイプたらしめるために、宇宙が与えた試練なのであると信じたい
(注13)。

■シナリオの実例

 ルールブックで我々がサンプルシナリオをまず遊ぶことを想定しているのは、ゲームの構造を理解してもらうためである。

 では、あなた方がプライベートで遊ぶ場合、あれだけ細かい記述が必要なのだろうか? もちろん、答えはノーである。公式のシナリオのライティングが綿密なのは、あくまで、「それだけを読んでも遊べるようにする」という目的に則っているからだ。

 カジュアルでプレイする場合は、GMであるあなたが理解できればよいのだから、あなたがわかるメモ書きで構わない。

 筆者が先日『フルメタル・パニック! TRPG』をプライベートで遊んだ時のシナリオは、次のような塩梅である。人名はややこしいので、ヒロイン、ボスなどと改めた。また、情報項目の細部およびボスデータについては割愛してある。

▼オープニング
・PC④のオープニング。カリブ海でマフィアの麻薬基地を叩きつぶしている。ハリウッド映画的なバカっぽい感じ。アクション。
・PC②のオープニング。数年前のソマリアで、ボスの傭兵との因縁生まれる。ボスの裏切りで『ブラックホーク・ダウン』みたいなことに。生き延びるPC②。『ブラック・ラグーン』みたいな演出を心がけること。
・PC①のオープニング1。学園生活。ヒロインが登場し、明日から海外旅行なので学校の何か(PCのライフパス拾う)を頼む、という話をする。愉快な描写入れて。
・PC③のオープニング。PC④が壊滅させたマフィアが東南アジア方面に移動したよ、という話をメリダ島でする。ここでは噂話くらいの感じ。出撃があるかもなー、とかマオが言う。かなめのおもりがあるので、原作メンバーは動けないよ、とかそういう話。
・PC①のオープニング2。ヒロインの乗った船が麻薬組織によってシージャックされた、という情報入る。ええっ、と驚いてるところに、〈ミスリル〉の呼び出し。
・全員のオープニング。シージャックされた船を急襲し、人質を助けるぞ、という話に。というのは、船内にお忍びでソ連との外交交渉に臨もうとする与党政治家が乗っており、長くなると彼の持病が危ない、ということに。公海上なので自衛隊を動かすこともできないため、内々に〈ミスリル〉に打診があって動くことに。【ミッション:シージャックを解決する】を渡す。


▼ミドルフェイズ
・シージャックについての調査。押さえたのが麻薬組織で、目的は組織リーダーの釈放。杜撰な手口だが、雇われているのはソマリアやメキシコで悪名高い傭兵部隊で練度は高い。船は現在、サハリン近くの小島に曳航されている。プレイヤーの誰かが気付いたら、極東ソ連軍について調査が可能になる。
・プレイヤーがソ連の動きについて調べたら、KGBと連絡が取れるようになる。イベント、アドリブで適当にやって、KGBと上手く交渉すると協力が得られる。PCのコネが活用できる流れに出来たらいいな。
・船のある島へ接近する。基本、AS用ハイドロジェットで接近して、フローターで上陸する。海流が激しいので、【反射】難易度12の判定をさせ、失敗したら〈殴〉6Dダメージ。KGBの協力があると、スルー可能。
・夜陰に乗じて上陸。ASと装甲車、監視塔が配置されている。PC全員が【知覚】難易度12の判定に成功した場合、PC側のアンブッシュとなる。
・マスターシーン。捕まってるヒロインの視点。絶望する人々。体調を崩した政治家を介抱するヒロイン。アドリブでいい感じに。
・人質の捕まってる場所を探す。【知覚】判定を中心に、その時のノリでなんとか。マップ情報を開陳していって、イイ感じにする。


▼クライマックスフェイズ
・ボスとの戦闘。人質を撃たせる前に撃つ、という戦い。人質はモブ扱いで、敵が撃とうとするのをカバーアップしたりして、見せ場にする。

▼エンディング
・出たとこ勝負。

 いかがであろうか。

 見ての通り、極めて適当である。細かい部分はアドリブとプレイヤーの反応を見て埋める想定であり、描写についてはまあGMするのが自分だからなんとでもなろう、と考えているのである。

 が、こんなもので全然TRPGは遊べるし、あまり問題にはならない。もっとアバウトな記述でも、大丈夫である。

 大事なのは、ひとまず最後までの流れがイメージできていることだ。イメージできていれば、流れがおかしくなったとしても、修正できる。

 実際にこのシナリオを遊んだ時は、KGBとの絡みがやたらと面白くなり、麻薬カルテルの背後に〈アマルガム〉がいるのではないか、という話になって、「じゃあそのほうが面白かろう」とGMがアドリブでそういうことにした。

 その結果ヒロインは実は〈ウィスパード〉だったことになり、政治家は〈ウィスパード〉絡みの折衝で渡ソする目的だったことが判明し、それを阻止するためにPC②の仇敵である傭兵が〈アマルガム〉の命令で派遣されたことになった。

 結果、島に突入する過程でKGB(日本政府と事を構えたくなく、むしろ貸しを作りたい)の協力を得て、空中から空挺降下し、ヒロインを連れて逃げようとするライバルと追撃戦をする、という流れが生まれた。

 これらの理屈はプレイしながら何となく勢いで生まれてきたものであり、一過性のものである(言うまでもないが公式設定とも何の関係もない)。

 だが、最初にデータやイベントを一応作って置いたので、変更が利いたのは事実である。たとえば、空挺降下の判定は、ハイドロジェットで水中潜入する判定をそのまま使い回した。その後空挺で降下してアンブッシュした後の流れは、ほぼほぼそのままである。

 まあ、とにかく最初から最後まで、メモでいいから書いてしまうことだ。そして食事でもしてお風呂にでも入ってから、冷静に見直してみる(注14)ことである。一度クールダウンを置くことで、物語の構造のエラーを発見することができる。これは本当だ。

注1:もちろん、PCの可能な行動がシナリオによってほぼ規定されており、コンピュータゲームのように判定とロールプレイのみを行なう、というスタイルのTRPGも存在する。
 ここではひとまず、一般的なTRPG、つまり、「プレイヤーの行動にGMがリアクションすることでフレキシブルにシナリオが変化するTRPG」を想定してガイダンスを行なうが、そうでないTRPGが悪い、という意図はない。

注2:正確には「筆者が携わっている多くのTRPGのシナリオは」。ただ、じゃあ『D&D』はどうなんだ、『Aの魔法陣』は、という話になるとややこしくなる。また、そうしたTRPGでも、「はじまって、物語が展開して、クライマックスがあって、終わる」という構造論は参考になると考えるので、ひとまず話を続ける。

注3:クエンティン・タランティーノの『パルプ・フィクション』のように時系列が入り乱れる作品はどうなんだ、という意見もあるかもしれないが、作中時系列と、プレイヤーに提示される時系列は別である。
 つまり、最初に提示されるシーンはその時系列がたとえシナリオの結末だったとしてもやはり「導入」であり、最後に提示されるシーンはその時系列がシナリオの冒頭だったとしてもやはり「結末」なのである。
 もちろんこのようなスタイルを完全に破壊し、一度書いたシーンを完全にシャッフルしてランダムに提示し、その連続性にドラマを見いだすという不条理劇的なプレイスタイルも想定しえるが、ここではひとまず一般的なエンタメとしてのシナリオについて論じることとしたい。念のために述べておくが筆者は前衛演劇と不条理をこよなく愛している。そうでなければこんな長い注は書かない。

注4:いや、本当にあるんですよこれが。
https://togetter.com/li/210705

注5:ミドルフェイズの設計はTRPGごとに異なるのが昨今のトレンドである。ミドルフェイズに戦闘を行わないTRPGや、ミドルフェイズのシーン数が決まっていてアドリブでイベントを発生させないTRPGなど、多岐に渡る。もちろんそのどれもが面白く、かつ野心的であるのだが、ひとまずここでは、筆者が一般的と考えるスタイルで話を進めることをお詫びしたい。
 あなたが適切と思うところだけをつまみ食いしていただけるとよい。

注6:もちろんシステムにもよるし、プレイ時間の問題もあるので無理にとはいわない。

注7:なお、発生する戦闘を「チュートリアル山賊団!」のようなジョークとしてプレイするのは(慣れたプレイグループでない限り)オススメしない。セッションの没入感を下げ、“ゲーム”であることを強調しすぎてしまうからである。
 よく出来たコンピュータRPGがそうであるように、チュートリアルの戦闘もまたPCの見せ場としてドラマチックに、生命を賭ける価値があるべきだ。
 巨大ロボットアニメの第一話で最初にロボットに乗り込むシーンのように、あなたはチュートリアル戦闘を注意深く、ドラマチックにするべきだ。結果として圧勝することと、その戦闘が単なる茶番劇であることは違う。

注8:もちろん、エンディングフェイズに入った瞬間プレイヤーの一切の発言を禁止し、エンディングの文章を機械的に読み上げる、とすれば「マルチエンディングにはならない」。とはいえ、そのようなプレイスタイルについてはひとまず脇にどける(こればっかりで申し訳ない)。

注9:あなたにそういう意図がないことはわかっている。だが、そう受け取られてしまうことはある、というリスクの話だ。

注10:トーナメントシナリオは非常に面白い。筆者は幾度か大規模コンベンションで、PCのドロップ品をセッションごとに記録しておき、ハイスコアを発表したことがあるが、これは大変盛り上がった。トゥルーエンドというより金の亡者の話ではあるが。
 近作では、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のシナリオ集『大口亭綺譚』に掲載された『タモアチャンの秘密の神殿』などが、トーナメントシナリオの好例である。本シナリオの狡猾極まる罠の中で、制限時間内でどれだけの宝物を手にいれたか競い合うのは大変にエキサイティングである。

注11:なくはないが、一般的とは言いづらい。その上で筆者は同じメンバーで『蓬莱学園の秘密!!』キャンペーンを3週したことがあるし、『天使大戦エンゼルギア』の付属シナリオを何度遊んだかわからない。ひどい時など全員がシナリオを暗唱している状態で遊んだことすらある。何の話だったっけ。

注12:主語は無闇に拡大すべきではないし、自分の願望を突然ガイダンス記事で語り始めるべきではない。

注13:たとえば『PARANOIA』。

注14:正月の勢いでnoteを始める時は特に。

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