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【天下繚乱】蒼穹無限・その世界

さていよいよ明日には電子版がキミたちのところに届けられることになる『蒼穹無限』。本連載では、29日の書籍版発売に向けて今回も紹介を行っていくぞ。過去の記事についてはマガジンを参照してほしい。

■京の都

さて、江戸時代における日本の首都はもちろん江戸ではない。

江戸は行政外交を行う徳川将軍家のお膝元であり、巨大都市であることは言うまでもない。だが、あくまでその政治権力は京の天皇によって委ねられたものであることは事実だ。

将軍家は様々な法制度と武力によって天皇家を事実上支配しているが、貴族たちはそれを快くは思っていない。また、天皇を奉じる武士たち、徳川家を疎んじる大名たちの中にも、天皇を担ぎ上げることで将軍に対抗しようとする人々がいる。その結果がどうなったかは、我々の歴史ではあきらかだ。

そうした貴族や大名たちの中には妖異と結び、倒幕の陰謀を京で巡らせる者も多い。こうした陰謀家たちの手助けをしているのは、もちろん邪悪な閻羅王だ。

日野富子

かつて室町幕府を動かした経済の天才、悪女とののしられて歴史の暗部とされた女、日野富子は、由井正雪同様みずからは戦う力を持たぬ閻羅王だ。蘇った彼女は、経済の力によって商人や盗賊たちを動かし、借金によってがんじがらめにすることで大大名すらも操る力を手にいれつつある。

京の都において、刀と銃はかならずしも最強の武器ではない。確かにキミは日野富子の首を一刀のもとに跳ねられるかもしれないが、彼女はキミの愛する人々を何百人でも餓死させるだけの力をもっている。

岩倉具視

貧乏公家の不良息子である岩倉具視(いわくら・ともみ)は、屋敷に博徒を集めて賭博にふけり、そのあがりをかすめ取っているどうしようもない男だ。だが彼には大望がある。みずからの母を追い込み、京と日本に悲惨を撒いている幕府、そしてその背後にいる妖異を討つことだ。

彼は英傑であり、その意味ではキミたちの強い味方となるだろう。だが、もしかしたら岩倉はやがて天下の大罪人として、幕府の前に立ちふさがる男であるかもしれないのだ。

三室戸雪子

もちろん、政治陰謀だけが京ではない。京には様々な人々が集まってくる。この三室戸雪子は善良な公家の美少女で、あらゆる事件に首を突っ込んでまわる、いわゆる巻き込み型シナリオの導入に適したNPCだ。京には京の日常の暮らしがある。傑作コミック『公家侍秘録』などが参考になるだろう。

山崎蒸

京は新選組にとっても思いで深い地だ。妖異の謀略を探るため、名高い情報屋である山崎蒸も潜入工作を行っている。キミが新選組の隊士なら、彼の情報網は頼りになるはずだ。

■大坂

さて、政治の中枢が京ならば経済の中心は大坂だ。大坂には諸国の年貢米が集められ、現金化される巨大な米相場が存在する。世界で最初に先物取引を実現したのはロンドンでもニューヨークでもなく大坂だ。大坂に集まる大量の米と銀貨はあらゆる富と交換され、利殖によって果てしなく増大を続けて行く。

大坂にはあらゆる富がある。美しい着物、最高の美食、最新の芝居と音楽、唐や南蛮(中国やヨーロッパ)の輸入品、大坂で買えないものはなにひとつない。武士ではなく町人の金が支配する自由の都、それが大坂だ。

だが、その大坂の光は巨大な闇を生み出した。飢饉で食べられなくなった貧民たちは大坂に流れ込み、巨大なスラムを作り出した。貧しい人々は金持ちに安価にこき使われる労働者として死んでいった。巨大な格差。貧者の血によって咲き誇る華。

大塩平八郎

その矛盾に立ち向かった正義の男がいた。大塩平八郎。大坂町奉行所にその人ありと言われた名司法官である。彼は幕府上層部が豪商たちと結び、不当に利益を上げて貧民たちを苦しめていることを弾劾し、ついには反乱を起こして庶民に米と金を配ろうとし、そして幕府の武力の前に敗れた。

だが大塩は黄泉還った。その肉体を鬼と変え、その魂を神へと変えて。鬼神、大塩平八郎が望むものはただひとつ。すべての貧しい人々が、人間として扱われる王道楽土が訪れること。そのためなら彼は、大坂を、日本を火の海にすることをいささかもためらわぬ。幽鬼となった彼は、罪なき人々の血で喉を潤しながら、今日も理想のための戦いを続けているのだ。

平清盛

無論、大坂に潜む闇はそれだけではない。かつて源氏によって討ち滅ぼされた航海の帝王、海を統べる武家たる平清盛はその部下たる平家の亡者たち、四国の狸軍団を従えて現在の武家社会を転覆させようとしている。織田信長すら「分家の小せがれ」と嘲笑するこの男を止めることができるのは、もちろんキミたちだけだ。

■そして、さらに広がる世界

もちろん、京と大坂だけが日本ではない。渡世人はどういう生活をしているのか? 仏教・神道・切支丹とはどういう存在か? 剣術道場はどういう仕組みになっているのだろう? 化政時代の相撲ってどういうものなの? 超能力者とは? 獣人たちとは? そうした疑問について、それぞれ詳細な解説を行っている。

TRPGの楽しさは、もうひとつの世界に旅立つことができることだ。化政時代に生きている人々のさまざまな暮らしぶりに触れ、より生き生きとロールプレイを楽しむためのアイデアがこの本には詰め込まれている。

04京都挿絵

それぞれのセクションにはすがのたすく・まごまご両先生による美麗なイラストが満載されており、キミのイメージをこれでもかとばかりに加速されてくれるはずだ。まずビジュアルで、そして文章で。『天下繚乱』は化政時代という時代そのものをキミたちに伝えたいと思っている。

さて次回は付属シナリオについて解説を行う。請うご期待!

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