ようこそ『ビーストバインド』の世界へ

 『ビーストバインド・トリニティ(以下、BBT)』、ついに電子化さる!

 かつて伝説と呼ばれ、あの『ダブルクロスRPG』にも強い影響を与えたモダンホラーRPGが、ついに電子書籍になって帰ってきた。

 Bookwalkerを始めとする各電子書籍ストアで、すべてのサプリメントとリプレイが電子化され、あなたの手元で素早く確認できるようになったのだ。

 今回は、『BBT』について知らない幸運なあなたに、このゲームの素晴らしさについて解説することにしよう!

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■その名は“半魔”

 『BBT』であなたが演じるのは、“半魔”と呼ばれる存在だ。

 このTRPGはホラーであっても、あなたが演じるのは無力で無知な一般人ではない。あなたは人間の血を啜り永劫を生きる吸血鬼、地獄より来たりて魂を喰らう魔王の子、神の国より来たりて人を裁く天使、その牙と爪で万物を引き裂く人狼、紅蓮の炎にて戦車をも焼き尽くす古代の龍……そういったものたちだ。

 あるいは人でありながら格闘技を極めて鬼と呼ばれ、魔術の高みに至って四大元素を操り、古代遺跡に眠るオーパーツと一体化した冒険者や、異形の力持つヒーローに変身できるようになった存在が、あなたが演じるものたちなのだ。

 ん?

 そんな無敵の力をもった存在はホラーの怪物であって、ホラーではないのではないか、と?

 それは違う。

 あなたが戦うべき恐怖は、もっと別のものだ。

●“エゴ”と“絆”

 あなたは“魔(ビースト)”、すなわち人ならざる存在だ。

 己の内なる“エゴ”の力を引き出し、魔獣の本能のままに生きることで、不死に近い永劫の生命と、万能に近い力を有している。

 だが。


 “魔”には人の世界に居場所はない。

 どれほど強大でも、“魔”は“人”の敵だ。人の世界を捨てるか、人の敵となるか、“魔”にはどちらかの道しかない。

 だがあなたはそうしなかった! なんと愚かなことか!

 そう、あなたは“魔”でありながら“人”でありたいと願った。

 無力で弱い人々の住む、あの“昼の側”で暮らしたいと思った。

 それがあなたの“絆(バインド)”だ。

 “絆”はあなたを人につなぎ止めてくれる。だが同時にそれはあなたを弱くする。あなたをどうしようもなく縛り付ける。

 愛も、友情も、義理も、あなたが守るべきものは、あなたが“魔”として自由に振る舞うことを許さないだろう。決して。

 そして“魔”としての“エゴ”はいつでもあなたを飲み込もうと狙っている。あなたの愛する人の血潮を啜りたいというエゴ、気に入らない目の前の上司を肉塊に変えたいというエゴ、魔術で愚民を操り支配したいというエゴ! エゴはあなたを“人”から遠ざけていく。

 “絆なくしては人にあらず、エゴなくしては我にあらず”。

 それが本作のテーマだ。

●“人間性”


 『BBT』の冒険の中で、あなたは人で居続けるためにもがく。それは自分の居場所を守るため、大切な絆を手にいれるため、人の世界を守るための終わりなき戦いだ。

 だが、その戦いの敵は同じ“魔”だ。

 “魔”の世界の戦いには、あなたの内なるエゴを目覚めさせるしかない。より鋭い牙、より速い翼、より強大な魔力……エゴはあなたにすべてを与えてくれる。そして、戻る道はない。

 そう、冒険を繰り返し強大になればなるほど、あなたは守りたかったはずの、なりたかったはずの“人”から遠ざかって行く。己の心を喪い、単なる怪物に成り果てるリスクは増大する一方で、絶対に減りはしない。

 おわかりだろうか?

 この作品における恐怖は、あなた自身そのものなのだ。

 どれだけ強大な敵を打ち倒しても、決して消えることのない恐怖。それはあなたの中に潜む“魔”なのだ。

 内なる“エゴ”に引きずられて悲劇を繰り返し、“絆”が故に惨劇に巻き込まれ、低下する“人間性”にしがみついて昼と夜のあわいを永劫に歩き続ける呪われし者。それがあなただ。

 吸血鬼でありながら太陽に憧れる哀しさを、人を傷つける爪牙しかもたぬ鬼が人を抱こうとする哀れさを、永劫を生きる魔術師が時間から取り残される切なさを、あなたが演じたいと思うのなら。

 つまり、『BBT』はあなたのためのTRPGということだ。


 ようこそ、闇の世界へ。
 戻ることはできない。
 ようこそ、昼の世界へ。
 帰ることはできない。

 あなたはここで生きる。
 あなたはここで死ねない。
 あなたは、怪物で、そして人間だ。


※基本ルールブックが高く見えるかもしれないが、これは物理書籍にプレミアがついているためだ。電子版の定価は3960円である。――もちろん我々はいつでも増刷の機会を狙っているし、電子版が売れたらサプリメントを出したいと思っている。





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