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【天下繚乱】Role&Roll Vol.202

 さて今月の(7/28前後にストアに入荷するはずだ。もしかしたらもう手にいれている人もいるかもしれないね)『Role&Roll』について紹介しよう! 

 まずはなんといっても『天下繚乱RPG』の特集だ。

 今回の記事は二部構成となっているぞ!

■京の都

 さて、まずは日本のもうひとつの中心、帝のおわす首都・京都についての解説だ。政治の中心は徳川の統べる江戸に移動して久しいが、京には天皇と公家、有力な寺院が集まっており、依然として日本最大の権威を保っている。

 京の権威を持ち出すことは化政時代でも有効だ――建前として天皇の部下として将軍が日本を支配している以上、天皇家の権威は今でも絶大な威光を持っている。その威光を手にいれることは、権力への切符なのだ。

 もちろんそうした表の権力抗争だけが京のすべてではない。日本の霊的な中枢である京を陥落させることは、妖異たちすべての望みでもある。

 江戸時代の京都と言われてもイメージできない人も多いだろう。安心して欲しい! 明治初期に測量された地図を元にした精彩かつ美麗な地図が掲載されているんだ(これは縮小版だ)。

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 江戸同様、あるいは江戸以上の冒険の場所としてすぐにでも活用できることがわかってもらえるはずだ。今の京都の地図と重ねて見るのも面白いだろうね!

、パーソナリティーズやシティガイドが満載されており、すぐにでも京都を舞台にしたシナリオを作ることができるだろう。旧シリーズ『京洛夢幻』を知っていても、新しい顔もいるはずだ。

 たとえばこの岩倉具視(いわくら・ともみ)がそうだ。貧しい貴族の庶子である彼は、この世のすべての不正義を憎み、妖異と徳川幕府と、その両方を打ち倒そうとしている。彼は英傑たちの味方になるだろうか? それとも――それはキミたち次第だ!

岩倉

■退魔僧

 もちろん掲載されているのはワールド設定やシナリオフックだけじゃない。前回に引き続いて新しいクラスが掲載されているぞ!

 今回掲載されているクラスは“退魔僧”。仏教呪術によって妖異に立ち向かう魔法使いだ。

 古くは『孔雀王』や『天空戦記シュラト』『うしおととら』、新しい作品では『Fate/Grand Order』などをイメージしてもらえばよいだろう。

 御仏の慈悲と法力によって悪と闘う退魔僧は、これまでの魔法攻撃クラスの中でもぬきんでた火力を持っている。退魔の名の通り、およそ直接戦闘において密教呪術ほどの験力を発揮できるクラスはないはずだ。キミが御仏の名の下に邪悪をたたきのめしたいというなら、退魔僧より優れたクラスはないだろう。

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 もちろんそれだけではない。退魔僧はみずからを厳しく縛り付け、私有財産への煩悩を捨て去ることで強くなることもできる。その結果として世俗の富を得ることはできなくなるが……まあ、英雄譚に登場する坊主はたいてい貧乏なものではないかね?

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●次回予告

 気の早い松虫が鳴き出している、信州の裏街道である。
 嶮岨な峠道の左右は切り立った崖で、塒へ帰る鴉を除けば通うべき獣もなく、歩むべき道もない。
 その峠道に立つ男がふたり。
 いずれも質素な紺脚絆に縞の引廻し合羽、三度笠といった旅人姿。股引をからげた様子はいかにも旅慣れたもので、腰の道中差は飾りとは思えなかった。
 ――無宿、ブ職の者であろう。
「あんたも物好きだね、弥太郎さんとやら」
 背の高いほうの男が、すこうし笑って、道中差を抜いた。
 向こうに、土煙が見える。
 ここらの代官と手を結んだやくざ者、薦辺(こもべ)の弥八とその股分である。ざっと――五十人はいようか。中には、鎖帷子を纏ったものや、猟銃を手にした者もある。
 代官とつるんで阿漕にこのあたりの百姓たちから絞り上げた金で、そうした武装をしているのであろう。八州周りも手を出せぬとは、本当であるようだった。
「命のやりとりは慣れっこでござんす。この峠を通さぬことが、本日のあっしの食い扶持にござんす」
 弥太郎、と呼ばれた男の左目には、凄い刀傷があった。口だけではなく、数多の荒事をくぐり抜けてきたであろう、と想像させるものであった。
「それより――番場のお方こそ、生き別れになった御袋さんを探して旅人をなすっていると小耳に挟んだことがござんす。お節介とは承知でござんすが、ここで死ぬるが、望みでござんすか」
「そのことなら――もういいのさ、関のお方」

 背の高い男は、首を振った。
「今の俺には母もなければ親もねえ――たったひとりの旅人暮らしよ。だが、この後ろにいる村の親子を守るてえ仕事はな、これは、やってのけるつもりだ」
「お心の内、看取りましてござんす。そういうことなら、手前も心おきなく埒を開けられようというものでござんす」

 関の弥太郎、またの名を関の弥太っぺと呼ばれた刀傷の男は、すらりと道中差を抜いた。数打の刀と思えぬほどに使い込まれ、丹念に手入れされたその刀が吸った人のいのちは、十や二十では効かぬであろう。
「それでこそだ」
 土煙が迫ってくる。
 欲と得とに狂った五十と、義侠のために峠道に立ちはだかるふたり――。
 松虫の声が、途絶えた。
次回『天下繚乱運用指南・説三 渡世人』

※今回の予告については、青空文庫に掲載されているものを底本に、故・長谷川伸先生の戯曲をイメージしたことをお断りしておきます。

 縁もゆかりもありませんが、小林まこと先生のコミカライズが傑作なので是非。

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