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Theme 1: マスク(全7話 その1と2)

新連載スタートです!
《ぼくたちコロナ世代》避密ライフのこころの秘密

作者: 岡田暁宜(おかだ・あきよし)さんは
医師/精神分析家で(慶應義塾大学環境情報学部)
「人と人が密に接した」状況ならではの“こころ”を探究して来られました
さて いよいよ“密”を避ける時代の幕開けとなった今
わたしたちの“こころ”にはどんな秘密が宿って来るのでしょう?
エッセイで綴ります!

最初のテーマは
毎日欠かさず身に着けることとなった「マスク」です

(全7話)

1/7 マスクへの抵抗

 今から思えば、私がマスクを日常的に装着し始めたのは、2020年3月にWHOがコロナのパンデミックを宣言して、しばらく経ってからでした。
 精神科医がマスクをつけると、患者との情緒的な交流が難しくなるので、私はこれまでの精神科臨床において、マスクをつけたことがほとんどありませんでした。そのためマスクをつけることにはかなり抵抗感がありました。今でもなるべくマスクはしたくないのですが、コロナライフへの適応でしょうか、コロナライフが1年半にも及ぶと、精神科臨床でマスクをつけることにすっかり慣れた自分もいるよう身体科医のマスクに思うのです。

2/7 身体科医のマスク

 よく考えてみると、身体科の医者は、コロナ以前から、臨床現場で白衣を着るかのようにマスクをつけることは珍しくないように思います。白衣を着てマスクをつけた姿は、ある意味で「医者らしい姿」といえるかもしれません。身体科医にとって、マスクは、患者から感染症をうつされないため、あるいは、患者に感染症をうつさないための日常的な感染防止アイテムといえるでしょう。
 さらに、患者の身体や病気を診察するときには、患部や身体を観察し評価することが最も重要ですので、マスクをつけないface to faceの情緒的な交流は、それほど重要ではないのかもしれません。

 とは言っても、マスクをめぐる身体科医と患者の交流は確実に起きているように思います。
 医師に対人的な交流を期待する患者にとっては、医師がマスクをしていると表情がわからないので、不安に感じたり、医師の態度が「冷たい」と感じることがあるかもしれません。
 反対に、自分の身体を診られる際に、医師がマスクをしていたほうが「恥ずかしくない」と思う患者もいるかもしれません。産婦人科の検診台に備えつけられたカーテンなどは、身体的診察の際に生じる患者の「羞恥心」への配慮の代表といえるでしょう。診察される様子を自分が見ていないという状況での心理の背景には、患者の身体医への信頼に基づく依存があるように思います。

 いずれにしても、身体科医がマスクで顔を隠して、患者に「患部や身体を見られている」ということを感じさせないようにする治療文化の背景には、“恥”の文化があるように思うのです。

(Theme 1: マスク つづく)


コロナ感染対策によりマスクを着用するようになった当初、
抵抗を感じた方は少なくないと思います。
かく言う私もその一人です。
しかし人間の慣れというのはすごいものですね!
一年以上ものあいだ、
着用が”義務”というに近い形でマスクを着け続けていると
本当に”ユニフォーム”のようにも思える慣れ方を感じます。
しかし、二度目の夏を越えるこれからの時期には
「やっぱり慣れないぞ!」と
抵抗する気持ちが戻ってきそうではあります。
“恥”の文化があると言われる日本では、
マスクで顔を隠すことがメリットと捉えられる側面も
あるのでしょうか…
さて。。。




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