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『雇用・利子および貨幣の一般理論』~失業の発生~

 ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』から非自発的失業発生のメカニズムについて書いていく。(間違っていれば教えてください)

 そもそもケインズ経済学の始まりはアダム・スミス以来の古典派経済学の問題を解決するためにスタートした。その問題点の一つに「失業」に関するものがあった。古典派経済学の「失業」の定義とは、「自発的失業」と「摩擦的失業」に分けられる。簡単に言うと、働きたくないから働かない人とスキルを身につけるために勉強中の人に分けられる。つまり、働きたいけど働けない人=「非自発的失業」について全く考慮されていない

 古典派経済学の主張に、「『価値』を生み出せば生み出すほど経済は成長を続ける」という「セイの法則」がある。つまり供給重視である。これに対してケインズは、「有効需要の原理」を提唱した。これは、社会全体の需要が上がれば物価が上がり雇用量も増え、供給を刺激するという考え方である。

 有効需要の担い手となるのが消費者であるとすると、企業もまた設備を購入したり材料を仕入れたりする消費者(=民間投資)であり、さらに政府も国内のものを買う(=政府支出)ので消費者である。これらすべての消費を合わせたものがGDPとなる。結局、有効需要の増加=GDPの増加となる

 需要が増大し物がたくさん買われるようになると、景気が良くなり、物価が上昇する。すると、企業は雇用を増やし、失業が減少することを再度念頭に置く。

そのうえで、失業を増加させるのは利子率の上昇であるとした。利子率rと投資による資本の限界効率(設備投資によって増える企業の稼ぎ)mを比較するとm>rの時は投資が加速するのに対し, m<rの時は投資が滞る。利子率が資本の限界効率を超える場合は損でしかないのでわざわざ銀行から金を借りて投資に回したりはしないだろう

まとめると、利子率の増加→(企業が高い利子率で投資資金を借りても、それを利益で埋め合わせることは出来ないので)投資の減少→(投資は需要の主要な要因であるので)需要の減少→(需要が減ると企業は価格を下げてまでモノを売ろうとするので)物価下落→(企業の利益が減るとコストカットが行われるので)失業の増加につながる

これが失業発生の流れである事が分かるだろう。

個人の消費や企業の行動などといった個人の視点から経済を見るのがミクロ経済学で、GDPや失業、消費・貯蓄、投資といった社会の視点から経済を見るのがマクロ経済学だとすると、ケインズはマクロ経済学の礎を築いたと言っていい。

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