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キャリアコンサルタントに期待すること

「キャリアコンサルティング関連情報集2024年度版」(以下「情報集」という。)の企画・監修と制作を担当させていただきました。

全体の構成を見直し、領域Ⅱには基礎的な内容、領域Ⅰには先進的な内容という分類をより明確にし、対象者別の情報は一か所にまとめ、必要な情報がより見つけやすくなるように工夫したつもりです。

関わらせていただくのは2年目なのですが、とても骨の折れる仕事です。
一つ一つが、いくらでも突き詰めて調べ考えられる重厚なテーマですので、読む側も大変だよなぁと思います。
作る側としては、最新の情報になっているか、正確でない記述がないか、読み手がよりよく理解できる内容となっているか、といった視点から一つ一つ調べ確認し考えるので、根気のいる地道な作業です。
それでも、2024年度版で目指した、よりよい情報集としてのリニューアルは達成できたのではないかと思います。

今回構成を大幅に見直させていただきましたが、それができたのは、ひとえにこれまでの積み重ねがあったからです。
材料が豊富にそろっていたからこそ、新たな道筋を見つけやすかったと感じています。
今回で7冊目、これまでの6冊を試行錯誤しながら作り上げてきてくださったからこその7冊目であり、ここがまた新たなスタート地点として、次の大きなリニューアルに向けて積み重ねていけたらいいのではないかと思います。


前置きが長くなりましたが、制作しながら考えていたことを少し言葉にしてみようと思います。



〇それぞれの働き方の良さと大変さを実感をもって伝えられること

頑張って書いたのは、領域Ⅰです。
制度などには精通している方だと思っていましたが、それでも知らないことがものすごくたくさんあり、芋づる式にいろいろな情報が発掘されていって、整理するのは本当に大変でした。
私が知らないということは、世の中の大半の人が知らないということでしょう。
むしろどうしたらそれを知る機会が得られるのか疑問なくらいです。
それほど、政府の情報というのはよっぽどアンテナを立てていないと収集するのが難しいと感じます。

知られていないけれど、いい情報だなと思うものが結構いろいろありました。
特に感心したのが、「選択する未来2.0」の報告書です。
「「ソーシャルブリッジ」型の能力開発・就業政策のイメージ」という図があったのですが(情報集P.9に掲載)、本当にいろいろな選択肢があっていいのだということが容易にイメージできる図で、とてもいいなと思いました。

同時に、それぞれの良さと大変さを説明できる力を身に着けることがキャリアコンサルタントに求められるとも思いました。
転職も独立(フリーランス)も起業も、どの選択肢もあっていいし、自由に選んでいいとは思うのですが、雇用され続けることとは別次元の大変さがあります。
特に、独立や起業は誰も助けてくれない、自分で何かを形にしなければならないプレッシャーに耐える精神力や、形にしていく専門性、仕事を得ていく交渉力や発信力などが求められます。
会社で雇われる窮屈さからは解放されますが、稼ぐことを自分で背負わなければなりません。
それはきっと雇われている時に想像できないほどの重さでしょう。

そうしたことをキャリアコンサルタントが実感をもって説明できること、そして、相談者はそれができる見込みのある人なのか、それともそれを実現するにはかなり大変な道を通ることになりそうなのか、ということを見極める力が必要だと思います。
どちらがいいとか押し付けるのではなく、相談者が納得して自分にはこっちの道が良さそうだ、ということを選ぶために必要な情報や視点を様々提供してあげる力です。
そのためには、相談者のことをよく見て、よく聞いて、よく話して、一緒によく考え、よく想像することが必要です。

もし相談者にとって大変な道になることが予想される場合は、たとえば、
「フリーランスで働くということは金額の交渉も自分でしなくてはいけなくて、相手からもっと安くしてほしいと言われたときに断ったりしなければいけない、そうしないと自分の生活が苦しくなってしまうかもしれない、その判断もその対応もその責任もすべて自分が背負わなければならないんだけど、それをしてでもフリーランスで仕事をしたいと思える?イメージ湧く?」
みたいな感じで尋ねてみたりします。
その上で本人がやってみたいというならそれでもいいと思います。
私たちにできるのは、可能性のある未来をできるだけ具体的に伝えて、本人の予見可能性を高め、選択するための材料を補強してあげることくらいです。

本人の人生ですから、最後は本人が納得して決められることが大事だと思います。
ただ、その判断をするために役立つ適切な情報や支店を提供するのか、それとも無責任に今の本人の希望を後押ししてその先の苦労を背負わせてしまうのか、それは私たち専門職が向き合うべき責任だと思います。


〇知らないことがまだまだたくさんあるという自覚をもっていること

もう1つ考えていたことが、「無知の知」です。

おそらく、情報集をまじめに見てくださった方なら、こんなたくさんの情報を覚えられるわけない、と思ってくださっていると思います。
その感覚がとても大事だと私は思います。

キャリアコンサルタントの資格をとれたから専門職だ、と思われる方がたまにいらっしゃるのですが、情報集を見て、そんなことはない、まだまだ入口だ、と考えを新たにしていただけたらいいなと思います。
「国家資格キャリアコンサルタント必携」と銘打っていますから、必携のうち自分はどれくらい知っていると言えるのか、相談者に自信をもって説明できるのか、を考えていただいたら、まだまだであると実感できますよね。

ちなみに私は自分で領域Ⅰを書きましたが、出版されたものを眺めてみたら半分も頭に入っていないなと思いました。
でもそれでいいのだと思います。
タイトルと、ざっくりとした内容、こういう領域に政府は力を入れているのか、くらい知っていたら、あとはその内容が役に立ちそうな状況に出会ったら調べればいいのです。
調べたら情報があるだろう、という感覚を持っていることが大事で、知っている、と思うことは誤信につながるので、言葉しか知らないな、あやふやなインプットしか持ってないな、と気づいておくことが大事だと思います。

私は、この情報集全体が目次だと思っています。
どの情報をもっと調べたらいいのかということに気づきやすくしてくれるもの、というイメージです。
数か月に1回など、定期的にパラパラとめくってタイトルと図だけ見る(読まなくていい)と、その時々で目に留まる項目があるのではないかと思います。
その項目は、今の自分にとって気になっていたことだったり、頭の片隅に引っかかっていたことだったりすると思うので、そのあたりをもう少し調べて正しい知識を入れ直したりする、そういうことの積み重ねで、自分のレベルを少しずつ上げていけるのではないかと私は思います。

何かをインプットすることは、簡単ではありません。
関心がないものは覚えない、それは私たちのエネルギーをより最適に使えるようにと脳が自動的に取捨選択してくれている結果なのだろうと思います。
なので、関心を持てるものから入れていく、関心の移り変わりとともに新たな情報を入れていく、そうしていつのまにかいろんなことを知っている、その下支えがこの情報集でも少しできるのではないかと思います。


この情報集が少しでもお役に立ったなら幸いです。


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