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深夜に小さく鳴く

疲れていた私は夜早く寝て深夜に目が覚めてから家事の残りをやり始めた。

今日から新学期だから息子の制服やエプロンに丁寧にアイロンをかけていた。学校行ってくれるかなー、と心配になりながら心を込めてシワを伸ばし、シャツを美しく仕上げた。ちょっと自己満足に浸りながらコーヒーを飲んでいたら、後ろから
「みぃー」
と小さくこっちゃんの声が聞こえた。

「みぃー」
猫ではなく犬だけど、こう聞こえる。
こうやって小さく鳴かれた時は、「ツライ」とこっちゃんが訴えている。
この意味が前までは長く理解できてなかった。たいてい深夜が多く、水もごはんもペットシーツも完璧だからいつも首をかしげながら話しかけていたものだった。

でもこっちゃんが年末にリンパ種とわかってから、小さく鳴く意味がわかって、私は切なくなった。身体中のリンパ節が腫れてしこりができてきて、痛かったり息苦しかったりするのだ。横になって息が荒くなっているこっちゃんにしてあげれることは、マッサージのように撫でてやることだけだった。

「みぃー」と小さく鳴き始めたのは最近ではなく半年は経っていると思う。まだ誰も気付かないでいたリンパ種はその頃からこっちゃんをいじめていたのかと思うと腹だたしく、悲しく、そして飼い主としての呑気さに呆れる。撫でてやると気持ち良さそうにこっちゃんの息づかいが変わった。腫れているところをマッサージしていくと、もうちいさく「みぃー」と鳴かなくなった。この柔らかい毛、ぽっちゃりしたお肉をモミモミできるのはあとどれくらいなんだろうか。それをネガティブに考えてしまう私もダメな奴だ。

神様、痛みを取ってやってはもらえないだろうか。一般的な寿命より短いのならば、痛みや苦しみが限りなく少ない余生にしてあげてほしい。私はまだまだ弱い、覚悟が足りない。深夜にこっちゃんに起こされて撫でる毎日が続いたら、笑顔でがんばると約束したのに、私が潰れてしまう。本当はこっちゃんとの思い出がとても素晴らしくかけがえのないもので私と息子の宝物なのに。誰よりも私達は幸せ者なのに。もう残りが見えているのならば、こっちゃんから痛みを取ってもらいたい。毎日私達は笑顔でいたいから。最期だって笑顔でいたいから。

#コーギー #病気#悪性リンパ種#笑顔#愛してる

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