福の島・福島にあそぶ② 大内宿で江戸時代からの暮らしに思いを馳せる
はじめに
江戸時代からの町並みが残る大内宿。ここは、会津から今市(栃木県日光市)を結ぶ会津西街道(下野街道ともいう)の宿場町のひとつで、およそ400年の歴史があります。国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されています。
前回は、大内宿への道中で会津田島に寄り、800年以上も続く祇園祭の太々御神楽を見学した思い出でした。
いよいよ今回は、旅のお目当てだった大内宿への訪問記です。
※前回の記事はこちらです↓
山間にポツンと現れる大内宿の集落。ここでも私と友人は、会津田島に引き続いて歴史の継承を目の当たりにしたのでした。
▶茅葺屋根の並ぶ町並み
会津田島の町をさらに北上し、山道に入ります。くねくねとカーブを描く道路の脇には、清流が流れていました。木々が茂る山道を抜けた先に、大内宿の駐車場が見えてきます。
ちなみにこの山道には、「大内宿まで○km」という看板が1kmごとに立っていて、「本当に大内宿に着くのかな?」と不安になる人でもいるのだろうかなんて思っていました。
駐車料金は500円前払い制です。車を降りて集落の方を見遣ると、茅葺屋根が見えてきます。
歩いて5分もしないうちに、茅葺屋根の日本家屋が立ち並ぶエリアにたどり着きました。
集落の家は基本的に何かしらのお店を営んでいますが、常に全店が営業しているわけではないようです。定休日のお店も多々あったので、お出かけの際は営業日をチェックしておくとよさそうです。
openしているお店の店先を覗きつつ、展望台を目指して歩きます。
展望台は階段を上った先にあります。幅が小さく、やや傾斜のある石段で、しかも雨が降って水に濡れているのをゆっくり上っていきます。転ばないようにするのに必死だったので、横できれいに咲いているアジサイを観賞する余裕はなかなか持てず……
階段を上りきって少し歩けばビューポイントです!
会津方面から日光へ向かう山路の途中で、木の間からこの集落の景色が見えたとき、さぞ嬉しい気持ちになっただろうなぁと、昔の旅人に思いをはせました。
▶阿部家を見学させてもらう
展望台のふもとにある1件のお家、阿部家 美濃屋さん。
家の前にあった案内看板によると、江戸時代に名主として栄え、参勤交代時の大名の休憩宿でもあったそうです。明治時代には運送業、旅館業、郵便局などを営んでいましたが、人の往来が減ってからは林業・農業などにシフトしたお家とのことです。
大人は1人200円で見学ができます。
中に入れてもらうと、説明にあったとおり天井が高いせいか、思った以上の開放感がありました。
珍しい矢の欄間があるお部屋から入って、歴代の立看板などが立てかけられているお部屋、過去に使用されていた道具が並ぶお部屋と続いていきます。
また、障子の装飾があちこちに施され、大きな屏風も置かれている様子から、名家だったことが伺えます。
店番をしていた奥様は、お話しのしやすい方でした。
「実際に人が暮らしていたままのお部屋を見ることができて面白かったです。」
と私が伝えると、
「私たちが普段住居として使っていますからね。」
と。あぁ、暮らしていたままではなくて、暮らしているお部屋なんだな。だからお仏壇もお手入れがされている形跡があったのかと納得しました。
よくある資料館や博物館(ちなみに大内宿の資料館は工事休館中でした)のように、レプリカや生活味のない無機質な模型、あるいはいろんな人達から寄せ集めたであろう道具が並んでいるなんてことはなく、「代々その家の人が生きてきた・生きている住居」として、お家の中を見させてもらえたことが良かったです。
ちなみに奥様に教えてもらった話として、なぜずっと昔ながらの形のまま集落が存続できているのかというと、大内宿には、
「売らない・貸さない・壊さない」
の原則があるからなんだそうです。
この3原則があるため、もともとこの集落出身などの縁がない限り、新しく集落に入って生活していくのは難しそうに感じました。でも、それくらい厳しくないとこの景色は守れないのかもしれないなとも思いました。
▶お土産を買う
さて、本当は大内宿名物の「ねぎそば」(添えられた一本のネギを箸代わりにして食べるお蕎麦)を食べたかったのですが、二人ともお腹いっぱいで何も入らず……。
代わりにお土産として生そばを買ってみました。
また、松美屋さんというお店に並んでいた、焼き物の一輪差しに私は惹かれました。店頭のいくつかの商品にはお花が活けてあって、それが独特の魅力があって目を引いたのです。
我が家のバラさんを活けるのにちょうどいいかもと思って見ていると、
「今日はお暑いですね。」
と可愛らしい声が。声の方向を見てみると、よしずの奥からこれまた可愛らしいおばあさまのお顔がのぞいていたのでした。おばあさまは、
「この一輪差しは皆この辺りの人の手作りな一点モノなの。何を挿してもいいの。私はドクダミのお花を挿すこともあるのよ。」
とおっしゃいます。言葉遣いが優しくて丁寧で、なんだかほんわかした気持ちになります。そしておっしゃる通り、活けられたお花は特別珍しいものではなかったのですが、どれも可愛らしいのです。
迷うこと数分の後、私はかまくら型のものをチョイスしました。
お会計を済ませると、包装してもらった花瓶と一緒に、絵入りのカードを2枚手渡されました。
「これもどうぞ。冬の間にすることがないから、お友達と一緒に描いたの。ここは雪がたくさん降るでしょう。それを見に来てくれる人も日に何人かはいるけれど、わざわざ来てもらって悪いなぁってね。何かできることはないかと思って描いたの。1枚はお友達に渡してね。」
とても優しく語る、笑顔のおばあさま。カードに描かれたおじぞうさまも、可愛らしいお顔をしています。私は墨絵が好きだからこそ、これだけ可愛らしくて味のある絵はなかなか描けないことを知っています。だから余計に感動でした。そんな思いを込めてお礼を言いました。
「こういう絵、私とっても好きなんです。ありがとうございます。」
こんな年の取り方をしたい大賞、堂々の大賞だと思いました。
▶やっぱり夏の旅の〆はコレ
大内宿散策に満足した私たちは、会津田島の気さくなキッチンカーの店主さんにオススメされたラムネを飲んで〆ることにしました。2人で昔ながらのビンに入ったラムネを飲みます。
私があまりに勢いよくゴクゴク飲むものだから、ビー玉が詰まって上手く飲めず、「どんな勢いw」と友人に笑われました。(その様子を友人が写真に撮ってくれたのを見たら、そこには‘オッサン’が写っていたという……。その写真は自粛)
さて、ラムネの空きビンをお店の方が回収してくれるとのことだったので持っていったところ、
「ビー玉、持って帰ります?」
と思いがけない質問をされて固まるアラサー2人組。友人が「大丈夫です。」と答えたので、私も「はい、大丈夫です。」と続けます。ただそこに、
「でも、3秒くらい考えちゃいました。アハハ!」
と付け加えたら、お店の奥様からも笑い声が。その温かい反応に私の心も温かくなったのでした。
▶涼しいけれど‘温かい’場所
この日は私たちの出発地、栃木県は最高気温が35度を超えていましたが、福島に入る頃には若干気温が下がり、大内宿に至っては20度台前半だったと思います。非常に快適に過ごせる、まさに避暑地でした。
今回の旅を通して感じたことは、福島の人は温かいんだなということ。観光客を、柔らかくホワンと受け入れてくれる感じがしました。
以前、震災から1年ほど経った頃でしょうか。実家のお隣さんが福島に行ったときに、お店の人にどこから来たか尋ねられて、栃木だと答えると、「それは大変だったでしょう。」と心から心配してくれたそうなのです。原発事故もあって、福島の方が断然被害が大きかったはずだろうに、被害者ぶるのではなく、相手を優しく思い遣ってくれる温かさ……。
私はその話を聞いた時、目頭が熱くなってしまいました。みんながみんなそうではないかもしれませんが、私も今回の旅で福島の方達の温かさをたくさん感じて帰ってました。
涼を求めて北へ向かって出会ったのは、涼しい気候の中で優しく接してくれる地元の人たち。そしてその温もりだったのだなと思います。
(次回にちょっとだけ続く)
◆大内宿
◇地図
◇大内宿有料駐車場 営業時間
8:00~17:00
※大内宿の各店舗の営業時間は以下のHP参照
◇大内宿観光協会HP
事前に観光協会のHPにあるパンフレットに目を通しておくと、観光計画が立てやすいと思います。
◇ライブカメラ