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福の島・福島にあそぶ① 伝統が息づく町、会津田島


はじめに


福島県の南部に、江戸時代からの町並みが残る集落・大内宿おおうちじゅくがあります。ここは、会津から今市(栃木県日光市)を結ぶ会津西街道の宿場町のひとつでした。
江戸時代がマイブームな私にとって、一度は訪れてみたい場所。地元の友人と日帰り旅行をしてきました。


今回は、私の地元・栃木県から大内宿への道中にある、会津田島での思い出です。

日本三大祇園祭のひとつである、会津田島の祇園祭。

見学したのは最終日のほんの一幕でしたが、令和になっても脈々と受け継がれる伝統に心打たれる、良い経験をさせてもらいました。


▶旅を面白くするのは、いつだって良い‘偶然’から


宇都宮での待ち合わせから、北へ車を走らせることおよそ2時間。鬼怒川・川治かわじ温泉郷のさらに奥へ奥へと進んでいくと、会津田島の町に出ます。

私たちの旅の目当ては大内宿でしたが、実は会津田島にもちょっとした用がありました。──それは、「ポケふた」。南会津ふるさと物産館の裏手に、ポケモンが描かれたマンホールがあるのです。

私の家族が大のポケモン好きでして、お土産に写真を撮れたらと思っていたのです。

物産館への寄り道を友人は快諾してくれました。しかも、物産館の近くでお祭が催されているらしく、友人はそれを覗いてみたかったそうで、偶然お互いの希望が一致したのでした。

物産館の裏手の芝生を探すと、埋もれるようにしてマンホールが設置されていました。写真を撮っているお姉さんがいなかったら、見つけられなかったかもしれません。

ラッキーはふくしま応援ポケモンなんだそう。


目的のひとつが果たせたところで、お隣の神社・田出宇賀たでうが神社に参拝してみることにしました。拝殿の前でお参りをしていると、続々と装束をまとった神職さんたちが拝殿のなかへと入っていきます。お祭りの行事の準備が進められている気配。

友人が御朱印をいただきに行くと、神職さんが祇園祭の案内ペーパーをくださいました。神職さんによると、13時から神楽殿にて太々御神楽だいだいおかぐらが奉納されるとのこと。巫女さんの舞や、お餅・矢などがまかれるんだそうです。


このとき時刻は12時半。このタイミングでここに来たのも何かの縁だろうということで、私たちは一旦腹ごしらえをして、13時を待つことにしました。

お祭りのポスター。祇園祭のメイン行事は前日・前々日だったようです。
お神輿や花嫁行列を見てみたかったな。


▶過去イチ楽しかったキッチンカー


物産館の脇には、一台のキッチンカーが。「パスタ屋さんのおつまみセット」という軽食にはもってこいのメニューがあったので、このセットとソーダドリンクを注文しました。

見た目も涼やかなソーダ。
この日は蒸し暑く、身体に染み渡りました。


キッチンカーの店主さんは、気さくなアラフォーくらいの男性でした。私たちが宇都宮方面から来たのだと伝えると、店主さんも昔宇都宮に住んでいたといい、宇都宮談義に花が咲く咲く。

店主さんは宇都宮だけでなく、市貝いちかい町という栃木県南東部の町で、今も昔も田んぼの広がる田舎町に住んでいたこともあったそうです。でも、会社の方針で1年間車を所有できなかったとか。あの環境で車ナシは本当に可哀想、どうやって暮らすの?!と友人とキャーキャー言いました。

そうやってワイワイ会話をしているうちに料理が出来上がり、「楽しい話をいっぱいさせてもらったから」と、代金をまけてくれた店主さん。それはこちらこそだと思いながら、礼を言ってお会計を済ませました。

おつまみとは名ばかりの、一食分の大満足ボリューム。
ハーブソーセージとベーコンの塩味が絶妙でした。


太々御神楽だいだいおかぐらの見学


13時を少し過ぎてしまいましたが、再び神楽殿へと向かいます。ちょうど地元の小学生らしき男子3人組が、装束を着て神楽を舞っているところでした。舞台の脇に座る大人たちの雅楽に合わせてぐるぐると立ち位置を変えながら、真面目な顔つきで奉納される少年たちの舞。心の中で「頑張れ!」と応援したくなります。

観客は見たところ親御さんや親戚、近所の人などが多そうでした。中にはちびっこちゃんもいて、あの子たちもいつかあの場で演舞するのだろうかなんて考えてしまいます。

その次は成人男性による猿舞で、顔に猿のお面をつけ、手に農具をもって力強く舞っていました。子ども神楽とはまた違う趣があります。

そんな神楽殿の隣に「田島郷土文化保存伝習館」という小さな建物がありまして、何やら人が出入りしているので少し覗いてみることにしました。中では小学校高学年~中学生くらいの女の子5人が、巫女さん用の装束を着て舞の練習をしているところでした。
扇や鈴を器用に持ち替え、5人そろってシャン!と鈴を振るいい音が響いてなんとも心地良かったです。(友人は「手首の返しが上手い!」と絶賛していました。)

※神事に部外者がカメラを向けるのはよくないと思い、写真撮影は控えました。気になった方は、ぜひ現地に・・・


▶地域の歴史ある伝統を受け継ぐ姿を見て思うこと

この祇園祭、実は800年以上の歴史があるといいます。

令和の現在いまも伝統を連綿と受け継いでいる子どもたちがいること──私はサラリーマン家庭で育ったし、両親も県外出身なので、地域の神社の行事やお祭りの担い手としての縁は全然ありませんでした。周囲もそんな子たちが多かったので、今回のお祭り見学は私の目に非常に新鮮に映りました。地域の伝統を継承している子どもたちは、大人たちの背中を見ながら、また次の世代へと繋いでいくのでしょう。それが自発的かどうかは分かりません。でも、彼ら・彼女らは地域の未来を背負った大切な存在なのだろうと思いました。

もしかすると、地域行事・伝統の継承は、ある面で人をその土地に縛り付けるもののように思う人もいるかもしれません。

私の高校時代の同級生のうち、半数かそれ以上が地元に戻っていなさそうなところを見ると、地方の人間が都会に出たい・地元を離れたいと思うことを、おかしいことだとは思えません。(就職先の有無や結婚等でやむを得ず戻れない人もいるのでしょうけれども。)

しかし一方で、果たして自由の身であることは幸せと言い切れるのだろうか?とも私は思います。地縁を持たずに生活する‘自由’につきまとう、ある種の孤独。地域の伝統の中に生きている人たちには‘役割’が与えられていて、誰かに求められている存在だけれど、根無草の自由人はそうではありません。祇園祭に集う地元の方たちを眺めていると、私自身が出身地を離れていることもあって、そんなことを考えていました。

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長きにわたる地域の歴史の中に身を置く健気な子どもたちの姿に、心を打たれつつもちょっとばかり寂しい気持ちにもなったところで、私たちは今回の旅の目的地である大内宿へと向かいました。

(次回へ続きます)


◆まちの駅 南会津ふるさと物産館
◇地図

◇営業時間
8:30~17:00  ※冬期(1~2月):9:00~16:30

◇定休日
不定休 ※年末年始休業


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