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雨の中届いた荷物

 西日本が次々と平年より早く梅雨入りしたらしい。ここも数日前からずっと雨や曇りが続いていて頭痛薬が手放せない。

 雨の中、ネットで注文していた荷物が届いた。
 指定していた時間にチャイムが鳴り、印鑑を持ってドアを開ける。伝票にサインをする間に配達員のお兄さんに言われた。

「いつもありがとうございます!」

 唐突に、予想していなかった感謝の言葉。去年から特にたくさんネットで買い物するようになって、セール中は週に何度も荷物を届けてもらっていたけれど、今までどの配達員さんにも言われたことはなかった。それが普通というか、形式的なやりとりをするだけで成り立つ関係だと思っていたし。
 それが急に、「配達先の住人」を越えたその奥にいる「個人」に向けて発せられたような感謝の言葉。いやいやいや……雨の中、休まず遅れず荷物を届けて下さった配達員さんよ、こんなぐうたらを極めた人間のために、こちらこそありがとうございますなんだよ……。
 なんか急にめちゃくちゃ恥ずかしい。すごく申し訳ない気持ちにもなって、「いや…こちらこそ…です…………」ごにょごにょと相手に全く伝わらない返事をしてしまった。

 荷物を受け取ったら、お兄さんは会釈ではなく深々とお辞儀して軽快に去っていった。申し訳ない申し訳ない申し訳ない。申し訳ないが心の中でぐるぐるして、恥ずかしくて、体がありんこぐらい小さく縮こまった気がした。

 無職になって、家から出たくなかったり出られなかったりする生活を支えてくれているのは、こんなご時世でも変わらず働いてくださっている配達員のみなさんです。感謝しかないよ。こちらこそなんだよ。
 次から荷物が届いたら、もっとはっきりとありがとうございますって言おう。

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