大雅と蕪村―文人画の大成者:2 /名古屋市博物館
(承前)
《十便十宜図》の制作背景に一手一手迫っていく本章には、推理小説を読むようなスリリングさがあった。
下郷家が《十便十宜図》の所蔵者だったことは、画帖の題字にある、下郷家の当主・学海への為書きから判明する。制作から16年後、題字が揮毫された時点で《十便十宜図》は下郷家にあった。
ここで目指すのは、《十便十宜図》の注文主=下郷家であることの立証だ。
確たる証拠がない現時点では、下郷家をめぐる各種資料を手掛かりに状況証拠を積み重ねていくことが求められる。
考察