京都 細見美術館の名品 ─琳派、若冲、ときめきの日本美術─:3 /日本橋高島屋
(承前)
昨秋の「つながる琳派スピリット 神坂雪佳」展にも出品されていた、酒井抱一《鹿楓図団扇》。
団扇の表裏に、鹿と楓が描かれている。パナソニック汐留美術館では、鹿の面のみが見える状態での展示であった。
今回は、両面が拝見できた。
見返りの鹿の面をくるりと回せば、紅葉した楓の古木が現れる。幹は太く、たくましい。葉も大きい。華奢な鹿、風に揺られる萩の片面とは好対照だ。
秋に団扇なんて使うかしら……という雑念はさておき、軸装や額装に改められず、団扇の体裁を保って