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ナデシコ、ハギ、オミナエシ…。全部言えますか、「秋の七草」

ようやく朝夕の涼しさを感じられるようになりました。ひときわ暑かった今年の夏は、日陰を選ぶように歩きましたが、9月に入り、道ばたに咲く花や、青くて高い空をゆったりとした気分で眺められる日も増えました。今回のテーマは「秋の七草」です。七つすべての名前を挙げることができますか。歴史ある草花を、播州人3号が紹介します。

「春の七草」と比べて、紙面に登場する機会が少ないように感じます。
「かゆ」として食べないためでしょうか。起源も春と秋とで異なります。

春の七草を食する習慣は古代中国から伝わり、食べると、その年は無病で過ごせると言われてきました。
一方、秋の七草は、教科書にも登場するあの歌人の詠んだ歌に由来するそうです。

「萩の花 尾花葛花 撫子の花 女郎花また藤袴 朝顔の花」

万葉歌人の山上憶良やまのうえのおくらです。
歌に詠まれた順番で、記事と写真を紙面に探してみました。

①萩の花

秋風に揺られ 神戸・明光寺

 神戸市須磨区妙法寺の明光寺で、ハギの花が見頃を迎えている。秋の七草の一つで、白やピンクの小さな花が秋風に揺れている。
 同寺には古くからヤマハギが生息しており、先々代の住職が各地からさまざまな種類のハギを集めたことから「萩の寺」と呼ばれ、親しまれるようになった。現在は100株ほどが植えられている。
 「小さくてかわいらしい花が魅力。癒やされます」と笑顔を見せる住職(59)。花は9月いっぱいは楽しめるという。

(2021年9月15日夕刊より)

②尾花

困ったことになりました。憶良の歌に出てくる2種目の「尾花」が紙面に登場していません。
花の写真では「オオバナミズキンバイ」「オオバナカリッサ」しかヒットせず、ひやりとしましたが、尾花とは「ススキ」のことでした。

神河・砥峰高原 日差し浴び輝く穂波
90ヘクタールの草原、ススキ見頃

 長く続いた残暑から一転、播磨も一気に秋めいてきた。神河町の砥峰(とのみね)高原では、白く輝くススキの穂が秋風になびく季節に。なだらかな東向き斜面に広がる約90ヘクタールの草原は、午後の日差しを浴びると一層美しさを増し、荘厳な雰囲気を漂わせる。
 同高原は西日本有数のススキの自生地で、作家村上春樹さん原作の映画「ノルウェイの森」などのロケ地としても知られる。
 新型コロナウイルスの影響で屋外レジャーの人気は高く、砥峰でも今年9月の来訪者数は約1万3千人とコロナ前から倍増。昨シーズンもピーク時には数キロに及ぶ渋滞ができたという。

(2021年10月21日付朝刊より)

③葛花

クズ 紅紫色の花 鮮やかに

 太く大きい根にはデンプンが多く含まれ、根を砕いて作るくず粉は食用や薬用に使われる。三木山森林公園(三木市福井)では、奥池の周辺で紅紫色の花を咲かせている。
 言わずと知れた秋の七草の一つ。夏に花を咲かせ、開花が終わると枝豆のような実を付けて次世代に命をつなぐ。
 つる植物のため手入れを怠れば、たちまち周囲の草木に絡んでやぶを作ってしまう。その勢いは巨木を覆い尽くすほどだが、樹木医の男性(67)は「森林公園のクズは奥ゆかしい」と話す。
 なるほど、奥池周辺を見渡すと、鮮やかな花がちらほら。決して侵略的ではない。ただ、美しい花を咲かせる一方で、周囲の樹木に絡みつく姿に生への執念を見た気がした。

(2020年9月17日付朝刊より)

ブドウに似た甘くて上品な香りがする、と別の記事にありました。

三木山森林公園は1993年、甲子園球場の約20倍、約80万平方メートルの広大な敷地に造られました。当初は人工的な公園が築かれましたが、昭和30年代の里山環境を復元しようと職員らが立ち上がり、「原風景」とともに多様な生き物たちも見られるようになっています。

次も同じ三木山森林公園からです。

④撫子の花

カワラナデシコ 薄紫色のかれんな姿

 薄紫色の花弁の先が糸のように繊細に分かれ、かれんな姿が目を引くカワラナデシコ。別名「大和撫子なでしこ」とも言い、日本女性の美を象徴する言葉となった。
 近くの山に咲いていたことから、三木山森林公園にススキやチガヤ中心の草原を復元させる際に、約40種の草花から採取した種子の一つ。オミナエシ、ススキ、キキョウ、フジバカマ、クズ、ハギと同じ秋の七草で、夏真っ盛りの7月ごろに咲き始める。
 「大和撫子と言うと清楚せいそな印象ですが、とにかく元気に咲きますね」と話すのは、樹木医の男性(66)。見渡せば、草原や池の周辺で咲き誇る。強く美しいこの花を含む七草は、失われた里山復活の象徴ともなっている。

(2019年8月16日付朝刊より)

七草の名付け親とも言える山上憶良ですが、数年前、にわかに注目された時期がありました。
万葉集に収められた憶良の歌が、「平成」に代わる新元号の有力候補になったためです。
候補名は「|天翔《てんしょう》」。次の歌の一節から取られたようです。

天翔あまがけりあり通ひつつ見らめども人こそ知らね松は知るらむ」

採用されていれば「『天翔』の由来となった歌を詠んだ山上憶良が」と「秋の七草」の記事にも加えられていたでしょう。

⑤女郎花

秋風ふわり オミナエシ 三木山森林公園

 8日は二十四節気の「白露」。暦の上では、夏の暑さが和らぎ草花に露が降りるころとされる。兵庫県立三木山森林公園(三木市福井)では、秋の七草の一つオミナエシが、黄色い花をそよ風に揺らして季節の移ろいを告げている。
 高さ1メートルほどの多年草。同公園では、2009年から里山の再生を目指してススキなどとともに植えられ、定着している。見頃は9月いっぱいという。
 友人とトレッキングに訪れた女性(55)=神戸市須磨区=は「風に揺られる様子がきれい。秋の訪れを感じますね」と話していた。

(2022年9月8日夕刊より)

⑥藤袴

こちらの花は花単体ではなく、美しいチョウとともに紹介されることが多いようです。

渡りのチョウ しばし休息 神戸・摩耶山

 越冬のため、沖縄・南西諸島や台湾へと、長距離の移動をする渡りのチョウ「アサギマダラ」が、今年も神戸市灘区の摩耶山(標高702メートル)周辺で数多く確認できるようになった。
 10年ほど前から、境内各所にアサギマダラの好物、フジバカマを多く植栽する摩耶山天上寺。9月上旬に数匹の飛来を確認し、同下旬には数十匹、10月に入ると、天気の良い日は数百匹が乱舞するようになった。
 広げた羽は10センチ程度、光の加減によって淡い青緑色のあさぎ色に見えることが名前の由来。参拝客らはカメラを手に、フジバカマの花の蜜を吸うアサギマダラの姿を懸命に追っていた。
 同寺の副貫主(68)は「大きな役割を持って飛ぶ小さな命に、思いをはせてもらえたら」と話す。今月下旬には、多くが飛び去るとみられる。

(2021年10月9日夕刊より)

⑦朝顔の花

夏休みの課題で育てたアサガオではありません。
アサガオは憶良の時代、中国から渡来しておらず、歌に詠まれた「朝顔」を「桔梗」とする説が有力のようです。

香美 青紫色の花 楚々と
遍照寺でキキョウ満開

 桔梗ききょう寺」として知られる香美町香住区小原の遍照寺で、境内を彩る約千株のキキョウが満開となった。見頃は7月下旬ごろまで。
 約20年前から住職(73)が、コケの緑に映える花として境内の小道や池の周りに植え始め、2008年から公開。京阪神や鳥取県からも参拝客が訪れるようになった。寺紋じもん(寺の紋章)もキキョウで、最近は交流サイト(SNS)などで「日本三大ききょう寺」の一つに数えられる。
 今年は5、6月の日照り続きで開花が遅れたが、雨上がりの朝方は青紫色の楚々そそとした花がより引き立つ。住職は「ぜひ客殿から庭園全体を眺めてほしい。コロナ禍で胸にモヤモヤを抱える人にとっても、心安らぐ時間になれば」と話している。

(2022年7月16日付朝刊より)

花の写真と名前は一致していましたか。
秋の七草の覚え方があるようです。
草花の1字をとって「オスキナフクハ」だそうです。

<播州人3号>
1997年入社。植物に詳しくありませんが、ときどき気になる花と出合うことがあります。以前は図鑑にでも当たるしかありませんでしたが、最近はスマートフォンの助けで簡単に種類が推測できます。スマホにはシダレウメ、ジューンベリー、ナツツバキ、オオキンケイギクなどが保存されていました。出勤途中に見かける花ばかりで、自分の行動範囲の狭さが分かるようです。

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