タンタンの神戸ライフ―。愛らしい写真で21年を振り返りました
中国から来日して21年。神戸市立王子動物園の人気者、ジャイアントパンダのタンタン(旦旦)です。中国への返還期限を迎えてますが、今も愛らしいしぐさで来園者をなごませてくれています。播州人3号がタンタンの神戸ライフを振り返ります。
到着したのは21年前の7月16日でした。
一緒に来日したコウコウ(興興)とともに市民を挙げて歓迎しました。
パンダ 熱烈歓迎
王子動物園
到着したコウコウ(左)とタンタン(2000年7月16日夜、代表撮影)
ようこそ、神戸へ―。中国との共同飼育繁殖研究のため、神戸市灘区の市立王子動物園が10年間の予定で借り受けたカップルのジャイアントパンダ、雄の「コウコウ(興興)」(3歳)と雌の「タンタン(旦旦)」(4歳)が16日、来園した。
パンダが神戸に来るのは「ポートピア’81」以来19年ぶり。新設のパンダ館に移された2頭は約3200キロの長旅に少し疲れた様子だったが、さっそく神戸産のササを平らげた。同園は環境の変化に慣れるのを待ち、早ければ今月下旬にも一般公開する。国内には現在、東京の上野動物園と和歌山のアドベンチャーワールドに計3頭がいる。
2頭は13日に中国・四川省の臥龍保護パンダ研究センターを出発。飛行機で成都から上海を経て関西空港に到着し、トラックで王子動物園に運ばれた。
笹山幸俊市長ら関係者と市民ら約200人が出迎える中、同園には午後8時すぎに到着。輸送用の箱からパンダ館に移され、税関の通関手続きを受けた後、同園の獣医と飼育担当職員が健康状態を確認した。
大久保建雄園長は「無事に到着してほっとしている。2、3日かけて体調に変化がないか、慎重に見守っていきたい」と話した。
一般公開までにはさらに10日から2週間が必要といい、当面は室温を25・26度に保ったパンダ館の寝室で飼育する。
愛称の「興興」と「旦旦」は公募で決まり、それぞれ「震災復興」と「新世紀の幕開け」への願いが込められている。
(2000年7月17日付朝刊より)
夜の到着にもかかわらず、市長らが出迎える「VIP」待遇です。
新しい住まいとなる「パンダ館」も2頭の来日に合わせて新築されました。
室温は25・26度。かなり細かい温度設定は、中国側と何度も協議を重ねた結果なのでしょう。
神戸新聞も2頭の到着をニュースとして1面で扱いました。
見出しに「タンタン」ではなく、「パンダ」ととるところにまだまだ距離があるように感じますね。
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2頭が神戸にやってきたのは阪神・淡路大震災から5年がすぎたころでした。
復興に歩む人々の願いが、公募で決まった2頭の名前にも込められています。
パンダフィーバーに沸いたこの年(2000年度)の王子動物園の来園者は199万人。前の年に比べて倍増し、その後も破られていません。
当初は「10年の約束」でしたが、実際にはその倍を超える滞在になるとは、当のタンタンも予想していなかったでしょうね。
来日時、タンタンは4歳、コウコウは3歳。そのことがちょっとしたすれ違いを生みます。
2頭の暮らしぶりを紹介する連載記事からです。
コウコウ タンタン<神戸的日常>
2つの名前 日本名と中国名
いま、パンダの飼育担当者に困った問題が起きている。
「おーい、コウコウ」「タンタンおいで」と呼びかけても、振り向いてくれないのだ。
「神戸市民に親しまれる名前を付けて」との中国側の好意で、神戸市立王子動物園は2頭の愛称を一般公募した。全国から約4600件が寄せられ、震災復興や21世紀のスタートへの願いを込めて「興興」「旦旦」が選ばれた。
でも、2頭にはもともとの名前がある。雄は「錦竹(チンズー)」、雌は「爽爽(スウァンスウァン)」だ。
3カ月間の予定で同園に派遣されている中国のスタッフがこの名で呼ぶと、振り返ったり、肩を揺らして近づいてくる。でも、「コウコウ」「タンタン」にはまるで無反応。どこ吹く風だ。
「仕方ないけれど、少し寂しいですね」と同園。2つの名前を呼んで混乱させることを避け、中国のスタッフが滞在している間は旧名で統一することにした。
とはいえ、せっかくの愛称。「コウコウ」「タンタン」でデビューする一般公開も28日に迫っている。
「いずれ、覚えてくれたらいいです」と大久保建雄園長。名実ともに“神戸パンダ”になる日を気長に待つ構えだ。
(2000年7月25日付朝刊より)
今では神戸のだれもが知るなじみの愛称ですが、別に「本名」があったんですね。ただ「スウァンスウァン」はかなり言いにくい。
来日の目的は「中国との共同飼育繁殖研究」です。
このことがタンタンにとって険しい道となりました。
まず、一緒に来日したコウコウが2年後、帰国します。
「生殖器の発育不全」とされたためですが、その後、タンタンと同じメスだったことが分かります。コウコウが中国で出産して判明しました。
2002年には、2代目コウコウが来日し、再び2頭での暮らしがスタートしました。
2代目コウコウ(2002年12月撮影)
カップルの人工授精は2度成功しました。けれど、最初は死産。2度目の2008年には待望の赤ちゃんが生まれましたが、3日後に死にました。
8年連れ添った2代目コウコウとも悲しい別れが待ち受けていました。
2010年9月、人工授精のため麻酔中のトラブルでコウコウが急死してしまうのです。
その後、神戸市も中国に繰り返し働きかけ、新たに雄を借り受けることで中国側と合意しましたが、現在に至るまでタンタン1頭の状態が続いています。
1頭でもタンタンは王子動物園のアイドルです。愛らしい表情を振りまき、子どもも大人もなごませてくれています。
市民らもこんなふうにしてタンタンの節目を祝ってきました。
タンタン誕生日祝い379通
「まぁるい背中、やさしいお顔、全てが元気をくれています」
全国から手紙やイラスト
神戸・王子動物園
神戸市立王子動物園(同市灘区王子町3)のジャイアントパンダ「旦旦(タンタン)」(雌)が16日で24歳を迎えるのを前に、同園が祝福メッセージを募集したところ、全国から379通が寄せられた。来年7月で中国からの貸与契約が切れる予定だが、同園は「予想以上の反響。契約延長に向け、神戸でこれだけ愛されていることを中国側にも伝えたい」としている。
パンダは30歳までに寿命を迎えるケースが多く、24歳は老年期に差し掛かったころという。タンタンは体長約1・1メートル、体重80キロ台。ほかのパンダに比べ小柄で、脚が短いのが特徴だ。
誕生日のメッセージは8月に募集。「まぁるい背中、短い手脚、やさしいお顔、全てが私に元気をくれています」「初めて会った時、絵本の中から出てきたように見えました」など〝タンタン愛〟にあふれる文やイラストが続々と寄せられた。数年前病に倒れ、13時間の手術を受けたという人はリハビリで同園を訪れ、「タンタンの姿を見た時、これまで流した涙や汗が報われた気がしました。タンタンに出合えたことは人生最高のご褒美です」とつづった。
(2019年9月15日付朝刊より)
ハロウィーンには、お化けの顔にくり抜いたカボチャも贈られました。
2019年10月撮影
特別な日だけでなく、毎日の食べ物も健康維持には重要です。
こちらも神戸市民が協力しています。
グルメなタンタンのためにとっておきの竹が用意されます。
<旦旦的廿年(タンタンの20ねん)>No.9
淡河の竹
「グルメ」を満足させる味
食事の時間は1日に6回。目の前に主食の竹を置かれると、本当においしそうによく食べる。
でも、竹なら何でも食べるわけではない。
様子を見ていると、つかんだ竹を鼻の前に運び、一度香りを確かめる。ほとんどはそのまま食べるが、気に入らないのは、ぽいっと捨ててしまう。
飼育員の梅元良次さん(38)によると、タンタンが捨てた竹をパートナーのコウコウが食べることもよくあったとか。
これが、「グルメ」と呼ばれる理由だ。
そんなタンタンの胃袋を満たし続けてきたのが、神戸市北区淡河町で収穫される竹。農家らでつくる「淡河町自治協議会笹部会」の3人が週に3度、交代で鮮度のいい竹を届けてきた。
3人の中で唯一、来園当初から運び続ける岩野憲夫さん(73)。「前に届けた竹が枝だけになっていた時はうれしかったなぁ」と目元にしわを浮かべた。
「若い竹より、数年育った竹がいい」。20年間で好みは把握した。
それでもタンタンのグルメっぷりが上回ることは多かった。好みは体調や季節によっても変わる。常にいい竹を探し続けるうち、旅行先でも竹を見つけると葉や幹の状態を見定めるのが癖になった。
来園時4歳だったタンタンは間もなく25歳。
「いつまでたっても子どものような存在。帰ってしまっても、竹を見上げるのはやめられそうにない」
岩野さんはそう言った。
(2020年9月4日付朝刊より)
何度も書いてきましたが、タンタンは期限付きの中国からのレンタルです。
神戸に永住ではなく、一時滞在です。
中国への返還について、だれもが理解しているつもりでしたが、いざ正式に決まるとショックが広がりました。
王子動物園唯一のパンダ
「タンタン」中国返還へ
来日20年、7月期限延長できず
神戸市立王子動物園(同市灘区)は19日、中国から借り受けているジャイアントパンダの雌「旦旦(タンタン)」の契約終了が決まり、中国に返還すると発表した。タンタンは中国との共同飼育繁殖研究で2000年に来日。2度の契約延長を経て、貸与期限が今年7月に迫っていた。同園唯一のパンダで、市は中国側に契約延長を要望していたが、24歳という高齢を理由に返還を求められたという。
タンタンは00年7月16日、雄の初代「興興(コウコウ)」と来園した。2代目コウコウとの人工授精に2度成功したが、最初は死産。08年に生まれた赤ちゃんは3日後に死んだ。10年にコウコウが急死してからは1頭に。タンタンの契約は10年と15年にそれぞれ5年間延長された。
神戸市によると3月末、中国野生動物保護協会から協定に基づく返還を求める連絡が口頭であり、4月上旬に文書が届いた。同協会は「野生パンダの生息地で気候などの面で体への負担が少なく、多くの仲間がいる古里で過ごさせたい」と説明。四川省の「中国ジャイアントパンダ保護研究センター都江堰(とこうえん)基地」に移送する。市が求めてきた新たなつがいの貸与について言及はなかったという。
新型コロナウイルスの影響で日本から最寄りの四川省の空港までの直行便は運航しておらず、移送時期は未定。神戸市の久元喜造市長は「タンタンは阪神・淡路大震災後の神戸を元気づけるため、中国からやってきてくれた。多くの市民、子どもたちを励ましてくれて、本当に感謝の気持ちでいっぱい」とコメントした。
(2020年5月20日付朝刊より)
新型コロナの感染拡大の影響で、返還に向けた具体的な協議は進んでいません。
その一方で、パンダでは高齢のタンタンを病魔が襲います。
25歳タンタン 心臓疾患の恐れ
人間なら70代に相当
投薬治療開始、観覧制限へ
神戸市は19日、市立王子動物園(同市灘区)で飼育しているジャイアントパンダの雌「タンタン(旦旦)」に心臓疾患の疑いがあり、投薬による治療を始めたと発表した。ジャイアントパンダは一般的に21歳で高齢とされ、25歳のタンタンは人間では70代に相当する。命の危険が差し迫る状態ではないが、体調次第で急きょ観覧を中止したり、屋内のみに制限したりする可能性があるという。
中国・四川生まれのタンタンは2000年7月、繁殖研究や阪神・淡路大震災の被災者を励ます目的で来園。中国側との貸与契約を2度延長し、20年7月に返還期限を迎えたが、新型コロナウイルス禍で中国との直行便が運休し、帰国できない状態が続いている。
会見で同園の担当者は「現在、中国側と帰国時期の協議はしていないが、回復しなければ、飛行機に乗せるのは難しいのではないか」との見方を示した。
1月下旬の定期健診で、脈が速くなる不整脈が判明。一時落ち着いたが、3月23日から再び症状が続くようになった。運動量が落ちて寝ている時間が増え、餌も平時の半分ほどしか食べないという。連携する大阪府立大学や中国側施設から助言を受け、血液の循環を良くする薬を投与している。
(2021年4月20日付朝刊より)
治療が進み、現在は時間を短縮するなどして公開されていますが、体調が心配されます。
神戸新聞では紙面だけでなく、王子動物園と協力し、オンラインイベントなどでもタンタンを紹介してきました。
おそらく神戸で迎える最後の誕生日(9月16日)に向け、オンライン特別番組「おめでとうタンタン」を配信します。
タンタンのこれまでを振り返るほか、大物画家が手がけたサプライズ作品も披露されます。
16日午後8時からライブ配信し、その後は、いつでも視聴できます。ぜひご覧になってください。
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タンタンの神戸での歩みを、表情豊かな写真でも振り返ってみましょう。
古い写真から並べています。愛らしいポーズにも注目ください。
2001年7月撮影
2003年3月撮影
2008年8月撮影
2018年4月撮影
2020年7月撮影
2020年7月撮影
2020年9月撮影
2021年2月撮影
皆さんがタンタンと出会ったのはいつ、どんな場面でしたか。
学校の遠足でしょうか、家族でのお出かけでしたか。友達との神戸旅行や、カップルでの来園だったかもしれません。懐かしいタンタンとの再会に、王子動物園を訪れてみては。
<播州人3号>
1997年入社。報道部の新人記者らは、神戸市を西と東に分けて担当します。主に警察署による割り振りですが、「東回り」の取材先の一つが王子動物園で、西回りは須磨海浜水族園を担当しました。デスクから原稿を求められると、真っ先に両施設を訪ねました。そのせいか、「サツ回り」時代の思い出話には、動物園の人気者や海の生き物たちとのエピソードがしばしば登場します。
#タンタン #コウコウ #王子動物園 #パンダ