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異性の子と混浴いつまで?電車の「死体」禁止なぜ?読者の疑問調べます

こんにちは、ぶらっくまです。神戸新聞には、読者の投稿や情報提供を基に、記者が取材を進める双方向型報道「スクープラボ」という企画があります。取り組み自体は2019年に始めたのですが、最近、受け付け方法を拡充し、「神戸新聞NEXT」内のサイトもリニューアルしました。

日々、LINEやサイト上のフォームで、日常の疑問から不正の告発まで、さまざまな声が寄せられています。兵庫県内の話題が中心ですが、全国各地に通じる内容も少なくありません。今回は、そうした読者投稿を基にした記事をいくつかご紹介します。皆さんの身の回りに共通する課題や困り事もあるかもしれません。

娘の男湯 息子の女湯 何歳まで?/制限年齢引き下げ 全国で加速/子どもの発達早期化背景 神戸市など「7歳以上NG」に

混浴制限年齢の変更を知らせるポスター。神戸市では4月から引き下げられた=神戸市東灘区

 銭湯や日帰り温泉施設などの公衆浴場を子連れで利用する際、小学生になった異性の子どもとの混浴をいつまで続けるかは、親たちにとって悩ましい問題だ。近年、子どもの体の発達が早くなっていることなどを背景に、全国の自治体で混浴の制限年齢を引き下げる動きが加速しているという。兵庫の現状を調べた。

 3月末、神戸市東灘区の銭湯を訪れると、会社員の女性(47)が6歳の息子と利用していた。市の条例改正で、4月から子どもの混浴の制限年齢がこれまでの「10歳以上」から「7歳以上」に変わることを知り、改正前に入っておくことにしたという。
 新ルールについて、女性は「今の子は体格も大きい。『10歳』という基準は古すぎる」と理解を示す。ただ女性はシングルマザーのため、息子を1人で男湯に入れるのは不安とも。「1人で入る練習をさせないと。もう少し大きくなるまで、銭湯は我慢かな」
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 混浴の制限年齢は自治体の多くが条例で定めており、政令市と中核市はそれぞれの市が、他の市町は都道府県が決めている。このため全国的に地域や施設で差があるが、兵庫県内では国が示す目安に従い、従来は「10歳以上」が主流だった。
 流れを変えたのは、2020年12月に厚生労働省が出した通知だ。公衆浴場での混浴年齢に関する研究報告を踏まえ、目安を「おおむね10歳以上」から「おおむね7歳以上」に変更した。
 この研究の調査では、成人が「混浴を禁止すべき」と考える年齢は「6歳から」が最多で、「7歳から」が続いた。子どもが混浴を「恥ずかしい」と思い始める年齢も、6、7歳の割合が高かった。
 厚労省の通知を受け、全国で混浴の制限年齢を引き下げる条例改正が相次いだ。兵庫県内では尼崎市が21年4月に「7歳以上」に変更。今年4月には神戸市のほか、県と明石市も同様に変えた。西宮市も条例改正案が市議会で可決されており、周知期間を設けた上で7月に改める。
 現時点で「10歳以上」を維持する姫路市も、「見直しの検討は必要と考えている」(担当者)とする。
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 ルールを見直した自治体では違反した場合の罰則などは定めていないが、担当者は「目立った反対の声はなく、公衆浴場の事業者も好意的に受け止めている」と話す。
 実際、銭湯などでは主に女性客から異性の子どもの利用について苦情が寄せられていたという。県公衆浴場業生活衛生同業組合(神戸市中央区)の丸岡伸年事務局長(63)は「体の大きい子がいるとやはり気になる。最近はサウナブームで若い人の利用が増えており、配慮が必要だ」とする。
 神戸市内の事業者らでつくる同市浴場組合連合会の立花隆会長(63)=同市東灘区=も「以前から自主的に混浴年齢を下げていた事業者もいた。お客さんに安心して入浴してもらうためにも、基準が統一されてよかった」と歓迎する。
 一方、冒頭の女性のように、子育て中の親からはケースによって複雑な声も聞かれる。
 銭湯をよく利用するという同市東灘区の女性(45)には、長女(12)と長男(7)がいる。「娘の立場になれば、年齢の近い男の子との混浴なんて考えられないが、夫が同行できないときに息子1人で男湯に行かせるのはまだ心配。正直、悩ましい」
 立花会長は「銭湯には常連客が比較的多い」とし、「1人で入浴している子がいたら、周囲の大人たちには見守ってもらいたい」と協力を呼びかける。

2024年5月6日付 神戸新聞朝刊記事より

生理中のプール授業「旧態依然」/男性教員の追及「ストレス」/放課後に補習「罰に感じる」/学校間で差「認識の更新必要」神戸市教委

 「生理中に水泳授業があるときの学校の対応が、私の子どもの頃と変わっていない」。中学生と高校生の娘がいる女性(51)=神戸市北区=から、疑問の声が神戸新聞社の双方向型報道「スクープラボ」に寄せられた。娘が見学する際、男性教員に理由を追及されたり、補習があったりすることで、ストレスを感じているという。どうすれば解消できるのか。今年のプール開きを前に、神戸市教育委員会に見解を聞いてみた。

 投稿した女性が疑問を抱いたのは、市立中学校に通う娘の生理が水泳授業と重なったときのこと。娘によると、保健体育の担当教員が男性で理由を伝えづらかったため、「体調不良」と申告。すると「体調不良って何や」と詰め寄られ、答えざるを得なくなった。
 見学中は、「なぜ休んでいるのかが暗黙の了解で分かる」ため、同級生の視線が気になった。放課後や夏休みに行われる補習の参加者はほとんどが女子生徒で、娘は「女の子が悪いわけではないのにペナルティーに感じる」という。
 記者(28)も中学生の頃、他の生徒がいるプールサイドで生理中であることを説明しなければ見学できなかった。周期が不安定で、短期間で2回休んだ時には先生から「ほんまか?」と疑われ、つらい思いをした。学校や先生によっては、今も同じような対応が続いているようだ。
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 こうした学校側の対応について、市教委はどう受け止めるのか。学校教育部の担当者に取材した。
 まず、女性の娘が見学理由を追及されたことに対しては「言い方は悪いが、『サボり』との線引きのため事細かく聞いていたケースがあるかもしれない」と釈明。「女子生徒が体調不良と言えば、理由は推察できるので、基本的には深く聞かなくてよい。教員には時代感覚に合わせた認識のアップデートが必要だ」との姿勢だった。
 さらに、「男性教員に言いにくければ、女性教員や養護教諭ら、自分が言いやすい先生に申し出て」とも。信頼できる教員が身近にいればよいが、授業に関係のない先生に伝言してもらうのは、むしろハードルが高いように感じる。
 プールサイドでの見学については「見学者も学習者の一人。入水しなくても授業の注意点などを聞いて学習カードに記入することで、成績評価の材料にしている」と担当者。補習についても「生理以外でもさまざまな理由で授業を受けられなかった子どもに学習機会を与えることは必要」とした。ただ、近年は補習を実施する学校は減っているという。
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 そもそも、水泳の授業を巡っては、男女混合での授業や体のラインが出る水着に抵抗感のある生徒も少なくない。投稿者の女性は「子どもが傷つかないためにも、生理に対する先生の知識や理解促進を徹底してほしい」と求めた。
 生理中の見学に関して、学校の先生と話し合ってみては―。女性に提案すると「先生はいつも忙しそうで、相談しにくい。それは子どもも同じでは」と声を落とした。学校では出欠などを連絡するアプリが導入されている。便利な半面、直接話す機会が減っているそうで、教員と保護者の距離感も気になった。
 スクープラボには、同じ神戸市内の保護者から「柔軟に対応する学校もある」との声も。女子生徒の体育は女性教員が担当するほか、教員とのやりとりは生徒手帳を使うため、「生理を伝えることに違和感はない」という。
 大人の社会でも、生理について話題にすることをタブー視する風潮はまだまだ根強い。子どもの目線に立って、周りの大人ができることを考えていきたい。

2024年5月29日付 神戸新聞夕刊記事より

クラス替え 悩める春/始業式後の変更、兵庫県内でも/配慮求める保護者増加/識者「心の発達促す機会」

 この春、新学期のクラス替えを巡って滋賀県内の中学校で起きたトラブルが物議を醸した。いったん発表した後に全クラスの編成をやり直したためだが、神戸新聞社の双方向型報道「スクープラボ」にも、兵庫県内の学校で「発表後に別のクラスに替わった生徒がいる」と投稿があった。県内の教育関係者らに取材すると、対人トラブルなどで配慮を求める保護者の声が増え、悩みつつも対応を模索する学校現場の姿が見えてきた。

 投稿者によると、子どものクラス替えは始業式に合わせて4月上旬に行われたが、その後クラスが変わった生徒がいた。学校側は保護者らに「事務的なミス」という趣旨の説明をしたという。
 「事情はあれど、一度決まったことが変わることにモヤモヤします」と投稿者。「気の合う友人もいれば難しい人もいる。子どもには(学校は)『社会』を学ぶ場と言い聞かせてきたのに、学校がそれを覆した」と思いを記す。
 クラスは通常、どのように編成されるのか。兵庫県教育委員会や神戸市教委などによると、クラス替えは各学校に裁量があり、県内の多くの小中学校は1年ごとに実施する。
 新年度が始まる1カ月ほど前から、担任教諭の意見や過去の担当からの引き継ぎ書などを参考に協議。特に人間関係や過去のトラブルには配慮しているといい、ある教委の担当者は「多感な時期の子どもたちは、ささいなことでも衝突してしまう危うさがある。普段の様子などから、別々のクラスにした方が良い生徒は分けるようにしている」とする。
 阪神間の小学校で勤務する女性教諭(44)は、ここ10年ほどの傾向として、特定の生徒を挙げて「クラスを離してほしい」と要望する保護者が増えたと感じる。「全てを聞き入れるのは無理があり、毎年頭を悩ませている。同じクラスになった場合は席を遠ざけたりグループを分けたりして、トラブルの芽を摘むようにしている」と打ち明ける。
 神戸市立小で38年間教職を勤めた神戸親和大の小坂明教授(初等教育学・教職論)は、クラス替えを「学びの向上と同時に、集団の中で心の発達を促す機会」と位置付ける。
 「新年度の直後はぎくしゃくしていても、対話や交流を通じて良好な関係を築いたり、適切な態度を学んだりすることが期待される」と小坂教授。トラブルが起きそうな生徒同士は学校が把握し、最大限配慮しているとし、クラス発表後の変更については「チェックに不備があったのかもしれないが、今後の影響を考慮した決断だったのでは」と推察する。

2024年4月24日付 神戸新聞朝刊記事より

<注意>「死体の持ち込みできません」/電車の謎規定 戦時にルーツ/軍事輸送優先、昭和17年に明文化/古里に土葬、旅客列車で運ぶ?

JR三ノ宮駅に掲示された持ち込み品の規定。赤い文字の「持ち込めない荷物」に「死体」とある=神戸市中央区

 神戸市灘区の会社員の女性(40)から神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」に疑問が寄せられた。鉄道駅の券売機付近に掲示されている「持ち込めない荷物」の規定に、危険物や動物などに交じり「死体」と書いてある。「死体」とは動物の「死骸」ではなく、人の「遺体」のようだが、なぜ? 調べると、予想しなかった背景が浮かび上がった。

 駅に掲示していた阪急電鉄とJR西日本に尋ねると、この規定は国の鉄道運輸規程をそのまま転記したものという。ただ両社の担当者とも「なぜこんな規定が」と首をかしげる。阪神電気鉄道は1998年に規則を改定した際に「時代に合わない」と削除したというが、多くの鉄道会社の営業規則などには同じ規定が盛り込まれていた。
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 そもそも国はなぜこんな規定を作ったのか。1900(明治33)年に制定された鉄道運輸規程には当初、「死体」の文字はなかった。「座席をふさがず、不潔や臭気などのために他の乗客に迷惑を及ぼさないものは持ち込みできる」という内容の定めがあるだけだ。
 42(昭和17)年の規程改定の際、旅客列車に持ち込んではいけないものとして「死体」が追加された。国土交通省鉄道局は「時代に合わせ、条文を具体的にしたのでは」とする。ただ当時も今も、鉄道で遺体を運ぶ場合は貨物を使うと定められている。なぜわざわざ旅客列車に禁止項目として盛り込む必要があったのか。
 昭和17年といえば、太平洋戦争の開戦翌年。戦争が背景にあるのだろうか―。
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 この推論について、鉄道史学会(東京)に見解を聞いたところ「大変興味深い論点」と関心を寄せたが、明確な回答は得られなかった。そんな中、東京交通短期大学の濱雄亮准教授(社会史)が「あくまで推測」とした上で答えてくれた。
 「あえて禁止項目に明記したということは、貨物ではなく、旅客列車で死体を運ぶ人が現実にいたのでしょう」。濱准教授は時代背景として、43年に「決戦ダイヤ」と呼ばれる大規模なダイヤ改正があったことに注目する。  石炭など軍事物資の輸送を優先するため旅客列車が減らされ、貨物列車が大幅に増便された。貨物取扱量は36年から43年までに約43倍に増加。大半が軍事輸送で、民間利用は最小限に抑えられた。人々は減便された旅客列車に何とか乗ろうと、客車の屋根にまで飛び乗る風景が日常となった。  もう一つのポイントが、当時の遺体の処理方法だ。厚生労働省の記録では40年の火葬率は55・7%。土葬も多かった。濱准教授は「亡くなった人の遺体は、できるだけ古里に帰してあげたいというのが日本人の霊魂感。ただ遺体を運べる貨物列車は軍事物資であふれている。そんな中、必死の思いで旅客に家族の遺体を乗せた人がいたのでは」。
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 実は遺体の持ち込み禁止の規定は、航空会社にもある。こちらも国の指導を基に作られたという。国交省航空局の担当者は淡々としていた。「鉄道規則を下敷きにしたのでしょう。〝化石〟みたいなものですね」
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 明確な理由は分からなかったが、疑問を寄せた女性に報告すると「もやもやが晴れた。それにしても、あのインパクトのある文字をこれまでスルーしていたなんて」。聞けば、新型コロナウイルスの感染防止で間隔を空けて券売機に並んでいた際にふと、「死体」の文字が目に留まったとか。これもコロナ禍がもたらした「気付き」の一つかもしれない。

2021年2月9日付 神戸新聞夕刊記事より

消える介助放送「私は不安」/列車乗降時、障害者サポートのはずが―/視覚障害の女性「駅員いるのか…」/福祉団体「痴漢やストーカーを誘発」/鉄道事業者「丁寧な声掛け、徹底する」

車いすの利用客の乗降介助を練習する神戸市営地下鉄の職員=神戸市営地下鉄三宮駅

 車いす利用者らの電車への乗降を伝える駅員のアナウンスを悪用した痴漢やつきまとい事件を受け、アナウンスを取りやめる鉄道事業者が相次ぐ中、視覚障害がある40代の女性から、神戸新聞社の双方向型報道「スクープラボ」にこんな投稿が寄せられた。「私も車いすを使いますが、アナウンスがなくなって不安です。他の方はどう思っているのでしょうか」

 このアナウンスは、駅員の介助を受けて乗降する車いす利用者や視覚障害者の存在を車掌に伝え、ドアに挟まれないようにするなどの目的がある。号車番号や降車駅を伝える場合もある。だが、放送によって障害者の存在が知られ、車内で痴漢やストーカーなどの迷惑行為が相次いでいることが障害者団体の調査で明らかになり、国土交通省が7月、全国の鉄道事業者に見直しを求めた。
 投稿を寄せた女性が利用する神戸市営地下鉄は、国交省の要請を受けてアナウンスを取りやめた。女性は「視覚障害者には(降車駅のホームに)駅員が来てくれているかどうかが見えない。今までは(乗車時の)アナウンスで確認していたのに」と不安を募らせる。
 この投稿について、車いす利用者に意見を聞いた。神戸市兵庫区の女性(53)は「アナウンスはプライバシーの侵害。私たちが十数年前から『やめてほしい』と訴えていたことが、ようやく実現した」とアナウンスの弊害を強調する。
 別の女性は「障害の種類や人によって、サポートしてもらいたいところが異なる。今回のケースでも、視覚障害者が乗降車時に不安にならないよう駅員が声かけをすればいいのではないか」と話した。
 神戸市交通局は「これまでは、アナウンスに頼っていた面があったかもしれない。係員による丁寧な声掛けを徹底していきたい」としている。
 一方で、車いす利用者からは「そもそも介助なしで、単独で乗り降りできるように駅を整備すべきだ」との指摘もある。神戸市営地下鉄では、2023年度までの西神・山手線、北神線全駅のホームドア設置工事に伴い、段差や隙間を極力減らす工事を順次実施していく方針という。
 ただ、鉄道事業者によってはバリアフリー整備とともに無人化を図る動きもあり、神戸市視覚障害者福祉協会の福井照久会長(67)は「いくらバリアフリーが進んでも、サポートが必要な人はいる。駅員がいる窓口を明確にし、ソフト面のサポートも両立してもらいたい」と話している。
 兵庫県内を運行する鉄道事業者では、阪神電鉄や阪急電鉄は以前からアナウンスをせずに対応。JR西日本は、神戸線など列車の編成が長いエリアに限り、乗車車両や降車駅名を出さず、安全確認のアナウンスを続けている。

2021年12月20日付 神戸新聞夕刊記事より

いかがだったでしょうか。ご紹介したのはほんの一部ですが、時代の変化や制度の変更に伴う疑問、悩みなどが目立つ印象です。興味を抱いた方は、スクープラボのサイトにあるほかの記事もぜひご覧ください(一部、会員用記事があります。無料会員制度もあります)。もちろん、調べてほしい疑問などがあればどなたもご投稿ください。

〈ぶらっくま〉
1999年入社、神戸出身。スクープラボと同様の双方向型報道には、全国各地の地方紙・ブロック紙が取り組んでいます。「オンデマンド調査報道(ジャーナリズム・オン・デマンド=JOD)」などと呼んだりもします。神戸新聞NEXTのスクープラボのサイトでは、そうした他のパートナー紙の記事も掲載しています。