神戸新聞に「句読点」というコラムがあります。月1、2回、日曜の紙面に掲載され、各部のデスクが新聞製作に関する話題を取り上げます。レイアウトなどを担当する整理部(現・紙面編集部)デスクの書いた記事には、社内でもあまり知られていない、「へー」な内容もあり、そんなトリビア(雑学)を播州人3号が集めました。
まずは上の写真にある三つの◇です。
気づかなかったり、見たとしても気に留めることはないでしょうか。
印刷ミスでも、紙面の飾りでもありません。
けれど作り手にとっては重要な意味を持ちます。
正体はこちらです。
<句読点>三原色の◇◇◇
もう1組の仕掛けはこんなふうに掲載されています。
紙面を通じて季節を伝えるため、花の開花や風景の写真を1面に置くことがあります。
そんな写真も印刷のバランスが崩れると、伝わる印象が変わります。
それだけに三つの◇の役割は重大です。
次は編集フロアで交わされる独特の表現です。
ほぼ毎日出てくるのが「ヘソ」です。
例えば、こんな具合に―
「ヘソをもうちょっと目立たせて」
「窮屈なんで、ヘソまでしか無理やわ」
「アタマ」と「カタ」を加えれば、少し分かりやすくなるでしょうか。
<句読点>地域版のメモ
トップは「アタマ」ともいいます。漢字で表すと「頭」です。
紙面の記事の位置を、人の体の頭、肩、へそに見立てた表現ですが、アタマとカタが並んでいるとは、ずいぶん肩をいからせた人のようですね。それとも頭を垂れた状態でしょうか。
各地域の出稿デスクが紙面の設計図となるメニューを紙面編集部に渡す際、トップやカタに何を置こうとしているかも知らせます。その設計図を基に整理マンがレイアウトを考え、見出しを付けます。
メニューに記されたパーツが予定通りに埋まらないと、大変なことになります。
整理部(現・紙面編集部)デスクが苦肉の策としてとるのは―
<句読点>「空けて待つ」
ドキドキするのは原稿を出す側も同じです。
とはいえ、遅い時間に起きた事故や、複雑な構図の事件などはどうしても締め切り間際まで取材や裏取り(確認)が必要になります。
そんなときは出稿部側のデスクが原稿の概要を紙面編集部に説明し、「35行、決め打ちでいくわ」などと伝えます。「35行きっかりで出稿する」という意味です。
それを受け、当該記事に仮の見出しだけが入った大刷り(ゲラ)が届きます。
整理部からすれば「空けて待つ」ですが、出稿部のデスクは「空けて待たれている」状態です。
「あと何分かかる?」
「○時○分にはいったん(原稿を)くれるか」
経験上、あまり言ってはいけないと分かっていながら、つい筆者に連絡してしまいます。
駆け出しのころ、そんなデスクの催促にあたふたしていると、先輩にこう言われました。
「大丈夫。白い新聞見たことないやろ」
最後は先輩やデスクが面倒を見るから今は落ち着いて原稿に集中せよ、という励ましだったと理解してますが、原稿をチェックする側、紙面編集部とやりとりする立場になると、そんな鷹揚には構えてられません。
締め切り間際は、紙面編集部のスペースも慌ただしくなっています。
印刷に回すまでの限られた時間に見出しやレイアウトを整えなければなりません。
そっちのデスクの指示もはっきりと、そして大きくなります。
「1行追い込め(詰めろ)」「写真切れ(小さくしろ)」などの声が聞こえてきます。
最近はほぼ聞かなくなりましたが、そんな会話の中に「みみ」や「しずく」が登場していました。
2015年の「句読点」です。
<句読点>!と?
見出しに記号を使うことは少なくありませんが、それを「クエスチョンマーク」や「エクスクラメーションマーク」と呼んでいては時間がかかります。「みみ」や「しずく」の方が伝わりやすそうですね。
<播州人3号>
1997年入社。原稿のチェックに「読み合わせ」という作業があります。2人一組になり、片方が名簿などの漢字を一字ずつ読み上げ、もう片方が原稿をチェックします。読み上げ方に特別のルールはありませんが、「さがりふじ」(藤)や「さんずいにつ(告)げる」(浩)など、紛らわしい漢字は相手に伝わるよう工夫します。これが意外に難しく、コンビの息が合わないと、作業が何度も中断してしまいます。
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