結ぶ

5月1日。5月の最初の日であり、例年なぜか芸人の単独ライブが多い日(私調べ)。今年も複数の単独ライブが開催されていたが、私が行ったのはレッドブルつばさ第6回単独ライブ「泡沫を結ぶ」だ。

私がレッドブルつばささんの単独ライブを見るのは今回で3回目。ようこそ群青、18秒後の世界(https://note.com/kobeans/n/nd279d54555ca)、そして今回の泡沫を結ぶ。私の中で、れっつばさんの単独ライブには深い青色のイメージがある。だからこの日はお気に入りの青い服を着ていった。ザーザー降りの雨が降っていて、単独ライブの度にあまり天候には恵まれないところもどこかれっつばさんらしいような気もする。

ここから感想のターン。あらすじには触れないですが、今後配信があるそうなのでネタバレ0で見たい方は閲覧注意です(追記:最後まで書いたら初見だったら絶対見ない方がいい内容の濃さになってしまいました!すみません。配信見てから来てください!)。全てのネタにタイトルが付いていたけど正確に覚えてないものもあるので※印付けときます。







1.「枕営業」
袋小路にハマってどうしようもなくなり焦って騒ぎ回る様が‪Theれっつばさん!という感じで、1本目としてとても笑いやすく面白かったです。オチ台詞が(私の読解力問題もあると思いますが)ん……?どっちだ…!?と余韻のあるものだったのもこの先へのワクワクに繋がりました。個人的に今回の単独のネタはオチ台詞が印象的なものが多く、次のネタへそのまま繋がっていく構成(後述します)も相まって「全体で1つの作品」であるれっつばさんの単独の世界をスムーズに移動していくことができたと思います。

2.「先生と生徒」
一言で言ってしまえば"関係性"のネタ。言葉も感情も相手と自分の立場や関係性によっていくらでも解釈のしようがあるというか、人と人の関係性がどのように変わっていくのが「普通」で何が「キモイ」のかって難しいなと思います。「鍵って開くから」、そりゃそうだけどさぁ〜!と言ってしまいそうでめっちゃ笑った。

3.「糧」
ここら辺で気づきましたが、今回の単独は原則として着替え中に会話しているキャラが「(よろしく)お願いします」と言うことによって次のネタに入っていく形になっていました。私が初めて行った単独かられっつばさんは、転換中の繋ぎを幕間Vなどではなくキャラとして舞台に立ち続けて喋りながら着替えを行うことで自分のコントの世界観を守る演出をしていました。しかし、今回は初めて"レッドブルつばさ"も彼らと一緒に「お願いします」と言っているように感じられ、れっつばさんのコントやお客さんに対する真摯な姿勢がさらに明確な形として現れていたように感じました。誰よりも深いお辞儀をするれっつばさんが、好きだ。
このネタは着替えが大変そうな衣装でしたが、各転換の中でも最もスムーズに前のネタのキャラと次のネタのキャラのバトンパスがなされていたと思います。私よりも年下である男子高校生のネタだったけど彼は今の私にドンピシャな未来を見据えていて、大声で笑うと共に心にぶっ刺さりました。「品評会」の台詞が特に(主に)。君は自分の意志を貫いて行動できているから大丈夫だ。

4.「男オタク」※
noteか何かでご本人も仰っていたような気がしますが、今回のネタは世の中での出来事と変にバッティングしてしまってここから発想を得たのかな?と勘ぐってしまうテーマのネタが何本かありました。これも擦る程度だけどざっくり"VTuber"であの炎上が脳裏に浮かびました。(なお、完全に蛇足なのでネタには関係ないですすみません)
コントとしての気づきを得られる瞬間が面白く、これは寄席形式のライブでふいに出会ったら食らっちゃうやつだ〜!!!とまず思ったのですが、「女オタク」のネタと対になっているのでそこと比較して見ることができたのは単独ならではの楽しみ方だったと思います。推しへの向き合い方はジャンルや性別やその他諸々の違いによって様々だし、オタクって他の人には理解されないような"好き"の軸を持っていたりするのが面白い。だから私はオタクが好き。途中の絵面で徐々にウケが大きくなっていく感じ、あれ気持ちいいだろうな〜〜〜!って思いました。めっちゃ笑いました。

5.「夏の思い出」※
客席に与えた一撃の強さ、衝撃度では堂々1位のネタだったのではないでしょうか。ワードの強さはその後のネタの着替え中にもずっと尾を引くほど。前回も同じタイプのネタがありましたが、れっつばさんの"魅せ方"の引き出しの多さを感じます。映像を想像させる小説的な楽しませ方はピン芸人ならでは。めっちゃ笑った好きな台詞があったのですが、ネタバレすぎるので配信で見てくれ。

6.「パン屋の夢」 
Twitterを見る限り1番お客さんの反響が大きかったネタ。主人公が今まで私が見た事のある範囲ではあんまりれっつばさんのネタにいなかったタイプのおじさんで新鮮でした。銀兵衛のネタにもパン屋に対する考えが出ているものがありますが、朝4時に起きてパンを作る職業をまともにやってる人ってすごすぎるんですよね。このネタではパン屋さん(れっつばさん)の"考え"が吐露された瞬間からの思想の畳み掛けがえげつなく、確かにそうかもと共感してしまいそうになるほど引き込まれました。一貫して、思想の強さと行動のくだらなさ(実際"くだらない"で済ますことではありませんが)のバランスがすごく良かったです。

7.「田舎」
田舎という舞台設定、私は中途半端な田舎に住んでいるしそもそも地元という概念が自分の中では希薄ということもあって共感しきれない部分があります。でも、思い出への向き合い方としてのあるあるや主軸の部分には思い当たる部分もあって、同じレイヤーに存在する彼らを見守る目線で見ることができました。姉弟の距離感と「やめて」の部分、めっちゃ分かる。

8.「ネクタイ」
好きです。2周目での気づきが多そうなネタだ…!ここで笑うあたりれっつばさんのお客さんよね〜〜〜!と思うボケ(ネタ)が毎単独ありますが、私はこれを信頼と捉えています。俗っぽい・オタク的な・エッチな知識の部分とコントとしての美しさの落とし所がれっつばさんにしかできない地点に着地していたのが素晴らしかった。もしこれからもやるとしたらどのように磨かれていくのか、色んな可能性があるように思います。

9.「社長」※
挑戦的な部分があるネタでワクワクしました。2回目以降はアドリブかな〜と勘ぐってみたり。これもタイムリーな出来事がバッティングしてしまったネタだと思うのですが、そのような状況を踏まえるとあくまでもお笑いの枠内に収める面白さと危うさが紙一重なご時世を感じたりもしました。

9.「女オタク」※
EDで「これからも"あなたの話"をコントにしていきます」という旨のお話があったのですが、これは確実に「私(たち)のネタ」でした。これは持論ですが、男オタクを描く場合よりも女オタクを描く場合の方がよりその対象への"解像度"が重要になると思います。解像度が高く明瞭である方が面白い。そういった意味では、れっつばさんの解像度の高さは他の追随を許しません。友達にいるもんな、こういう子。界隈の文化と同じ推しへの愛を基盤としながらも存在する3人のスタンスの違い、台詞に滲むのはオタクとして心根に持つポリシー。男オタクと比較しても、推しという他人に振り回されながらも自分の矜恃を貫く姿勢が見えて良かったです。あと「とにかく面白い発言をしたい」みたいな信念はお笑い以外のオタクにも通ずるものがあると思います。友達にウケるのが1番嬉しい。最後の叫び、マジそれな〜〜〜!それしかないよな〜〜〜!!!って気持ち。



以上のネタ9本を終えてEDで出てきたれっつばさんはもちろん疲れた様子ではありましたが、達成感や安堵感を感じさせる表情で気づけば120分も喋り通していたことを語っていました。こちらもそんなに長い時間やっていたことに驚くと共に、素晴らしいものを見せてもらったことへの感謝で胸がいっぱいになり自然と大きく長い拍手を続けました。生で見れて良かった。生で、この空間で見るべき単独だった。当たり前なんだけど、コントに出てくる人達の全てを理解したり共感したりすることはできなくて、でもそんな中にも自分に通じる考え方や発言がある。その場にいるみなさんも含めた個々人の"泡沫"が"結ばれ"て、笑いという形で弾けるその一瞬を共有しているような感覚がありました。
また、最後のネタでアラッ!と思った小道具へのこだわりが聞けたのも嬉しかったです。アフタートークでもっとたくさんそのような話を聞けるのかと思うとさらに楽しみ。次回の単独開催も発表され、まだまだこんなに楽しみがあるなんて。最高ですありがとうございます。

れっつばさんへ。とっても素敵な単独ライブを今回もありがとうございました…!!!末筆ではございますが、益々のご発展とご活躍をお祈り申し上げます。ネタバレしすぎだろやめろと感じたらご一報ください。



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