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〈そばめし〉第10回 母の味から、丸五の味へ

夕方になると編んだ買い物かごを下げたお客さんが訪れていた昭和の時代(昭和51年7月14日)から、菅商店をご夫婦で経営されている菅共代さんにお話をお伺いしました。丸五市場の一角にある、ウナギやお惣菜を扱うお店です。取材の合間にも、常連さんがいつもの味を求めて訪れます。「どれにする?○○さんが好きなのまだあるよー」。お店を訪ねると気さくに声をかけてくれる、昔ながらの市場の雰囲気が残るお店です。

菅さんにとっての『そばめし』をお聞きすると、「まずは、母の作ってくれたおすしかな。」とのこと。「昔の人はお料理上手やってん。母も祖母も出汁からきっちりとってるから何でも美味しかったの」「実家が淡路でね。今やったら食材を買う店も選べるけど、当時は材料もほとんど自給自足。近くにお肉も売ってないからね、食材なんかしれてたの。牛乳もあれへんのよ」。基本のことは絶対に怠らずに作る母の味が一番のごちそうかな、と語ってくださいました。「私が中学校の時なんか、お昼ご飯を食べに家に帰るとじゃがいもと玉ねぎを炊いてくれてたのがあってね。どんなに美味しかったか。素朴な味でね」。
菅さんは外に食べに行くのが好きなため、思い出のお母さんの味を基準にしながら、自分だったらどんな材料にしようかなということを考えて、日々お店に出す商品の味も研究しているそうです。

商品が並ぶお店の奥では、ボーリングにより出てきた湧き水を使った井戸でうなぎを飼っています。「川魚専門だから昔は鯉も飼ってたよ。阪神淡路大震災の時はそこから水を汲んで、困っている人に使ってもらってたこともあったのよ」。取材の最後に、そんな歴史ある井戸とウナギを見せてくれました。